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【連載】保険業界が取り組むべき重要事項第3回~デジタル技術を活用した効果的な取り組み②

日本生産性本部が10月上旬に実施した新型コロナウイルスに関する働く人の意識調査結果によると、テレワーク実施率は18.9%であった。5月調査の31.5%からは大きく低下しているが、前回の7月調査の20.2%から大きな変化は見られない。また、テレワーカーがテレワークの課題として指摘した「職場に行かないと閲覧できない資料・データのネット上での共有化」は30.8%であった。5月調査の48.8%、前回7月調査の35.6%から減少しており、企業がテレワークの課題を解決した結果がうかがえる。保険業界に目を向けてみると、生保全社(42社)合計の2020年4月~8月の新規契約(累計)は、件数で前年比44.9%減少している。8月単月の減少率は14.3%であり、回復傾向にあるが、この新規契約件数の減少はコロナウイルスに伴う対面営業の自粛が起因している。前回の掲載では顧客満足度の向上や業務プロセスの効率化の実現を図るために弊社が「AI」を活用して業務課題を解決した事例を紹介した。今回は「RPA」を活用した在宅勤務における業務オペレーションの見直しと、「画面共有」を活用した非対面における顧客エクスペリエンスの向上についての導入事例やソリューションを紹介する。

【連載】保険業界が取り組むべき重要事項第3回~デジタル技術を活用した効果的な取り組み②
  1. 紙文書をデジタル化することにより業務効率化を図る
  2. オンラインでサポートしてCX向上を図る
※本稿は保険毎日新聞に掲載された内容を、保険毎日新聞社の許可を得て、転載・編集しています。

紙文書をデジタル化することにより業務効率化を図る

冒頭の日本生産性本部の調査結果にあるとおり、コロナウイルスのパンデミックに伴って、テレワークを中心とした働き方改革の見直しが定着してきている。保険会社でも職員やコールセンターのオペレーター等の在宅勤務におけるオペレーションを確立してきている。

チューリッヒ保険のようにコールセンター部門も含めて95%の在宅勤務を実現している会社も出てきた。一方、契約関係や支払関係書類を業務処理するために事務センターや会社オフィスへ職員を出社させなければいけないといった声も聞く。保険会社は職員の安全を確保する上でより一層のペーパーレス化、あるいは将来的には完全ペーパーレス化を目指して業務効率化を図っていくという課題がある。

多くの保険会社がタブレットPCを活用した対面営業でのペーパーレス化を実現してきている。また、インターネット経由で契約変更手続きを顧客自らが対応できる仕組みを提供している。しかし、全ての商品・業務を非対面で完全ペーパーレス化を実現することは、多様な顧客ニーズや業務処理、法規制面等への対応の観点から、すぐ実現することは困難である。そこで、各保険会社はスキャナーとAI-OCRを使用してデータ抽出を自動化し、デジタルコンテンツに変換し、トランザクションを処理するためにRPAを活用するスマートな取り込みソリューションを実現している。

また、在宅勤務でオペレーションを実現するために、各保険会社は工夫をして紙削減に取り組んでいる。たとえば、外部委託業者に依頼して業務に必要な書類をデジタル化してもらう、あるいは従来印刷してハンコを押しながら回した業務フローを見直し、印刷せずにPDFにする。そうすることにより、在宅でRPAを活用して業務を自動化することを実現している。

弊社は保険会社がROIを迅速に実現できるよう、RPAソリューションを支援している。*1参考までに、弊社のRPA導入事例について紹介したい。ある米国の大手損害保険会社は、すべてのビジネスラインを網羅する28のプロセスを自動化し、61のボットを作成した。その結果、年間200万ドルの実行率の削減、コールセンターの平均処理時間の50%短縮や132人の従業員の生産性向上などの成果が得られた。また、ある保険会社では、18人の従業員で対応していた業務プロセスをボットで作成し変革した。ボットはこのプロセスに必要な従業員を半減させ、精度を向上させた。

オンラインでサポートしてCX向上を図る

多くの保険会社はより一層の顧客満足度向上を経営方針に掲げている。新規顧客を獲得することはもちろんだが、既存のお客様のロイヤリティーを高め、そこから販路を拡大していくことが重要であると考えている。

冒頭にも述べたがコロナ禍を受けて生命保険会社の新規契約の保険収入は大幅に対前年を下回っており、保険会社は対面ではなく、非対面での顧客支援を行う必要に迫られている。営業職員や代理店による対面販売の営業プロセスを確保しつつ、非対面で顧客との関係強化を図っていくため、営業職員に携帯タブレットやスマートフォンを配布することで、既存顧客に保障内容の説明や変更手続き行っている。Web面談ツールとしてLINE、ZoomやTeams等を使い映像や音声通話を行うことで、従来の対面営業に加えて非対面によるプロセスを確立して、対面と非対面のハイブリッドな営業プロセスの実現している。

一方、コールセンターでは顧客との応対は主に電話対応の受付が主流である。営業職員や代理店の対面業務に制限がある状況の中、コールセンターにおけるオンラインのカスタマージャーニーを効果的に支援する仕組みも求められている。

弊社は顧客に分かりやすく、その価値が感じられるように支援する、非対面でありながらあたかも対面で接しているようなカスタマーエクスペリエンスを実現する「Cognizant Policyholder Connect」を保険会社向けに展開している。*2 その1つのソリューションである画面共有 (CoBrowsing) 、音声、映像やチャットを連動して動作する「Digital Sales and Service (DSS) 」(図1)と呼ばれるオムニチャネルプラットフォームを紹介したい。

CoBrowsingとは顧客とコールセンターのオペレーターがWeb画面を共有し、顧客の問合せ対応を正確・迅速に対処することができる機能である。CoBrowsingの特長はインスタント画面共有とデュアルカーソル共同ブラウジングである。マイクロソフトTeamsに代表されるコミュニケーションツールはPDFやパワーポイント等の資料を容易に画面で共有することができる。しかし、申込手続きや変更手続きといった入力画面を共有するにはコミュニケーションツールとは別途の仕組み(アプリ)を用意しなければならない。一方CoBrowsingでは、特別なアプリケーションを開発する必要がない。Webブラウザだけあればよい。保険会社が提供する既存の新規契約申し込み等のWebコンテンツの入力画面を両社で共有できる。必要な業務手続きの入力作業等を顧客とコールセンターのオペレーターがデュアルカーソルを見ながらリアルタイムに共同でお互いの顔を見ながら実施することができる(図2)。

本DSSソリューションを利用することにより、問合せ件数の抑制、顧客満足度の向上や画面共有することによる顧客理解度を高めることが実現できる。問合せを解決した顧客は、その経験は4.8/5.0と評価され、従来平均の3.2/5.0から顧客満足度が大幅に上昇した。

まとめ

以上、DX技術を活用した業務オペレーションの見直しや非対面における顧客エクスペリエンスの向上についての事例やソリューションを紹介した。特に二つ目に紹介した弊社のDSSは、通常「コールセンター」と呼ばれる電話応対中心の問合せ窓口から顧客とより良いエンゲージメントを図る「コンタクトセンター」としての進化へのデジタルトランスフォーメーションのソリューションといえる。

参照 ※
https://www.cognizant.com/whitepapers/rpa-is-just-the-start-how-insurers-can-develop-a-successful-intelligent-process-automation-strategy-codex3841.pdf
https://www.cognizant.com/cognizant-policyholder-connect

寄稿
コグニザントジャパン株式会社
コンサルティング事業部
小穴 隆三 氏
大手商社にてエンジニアとして自社パッケージソフトの
企画・立案・開発に従事。その後約15年間、大手企業
を対象に、業種ごとの顧客ニーズに対応したIT課題解
決コンサルテーションおよびソリューション提案に従事。
担当領域は保険業、製造業、流通業と多岐にわたる。
一般社団法人「IIBA日本支部」の監事を務め、日本
企業向けにビジネスアナリスト普及活動を行っている。
コグニザントジャパン株式会社コンサルティング事業部
に所属。
コグニザントジャパン株式会社
〒102-0083 東京都千代田区麹町2-1 PMO半蔵門
電話:03-4563-8300
URL:https://www.cognizant.com/ja-jp/
Email:CognizantJapan@cognizant.com
コグニザントジャパン株式会社
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小穴 隆三 氏 【寄稿】
コグニザントジャパン株式会社
コンサルティング事業部

小穴 隆三 氏