仕組債のリスク

仕組債には債権全般に共通するリスクである「信用リスク」「価格変動リスク」「為替リスク」「流動性リスク」に加えて、特有のリスクがあるのが特徴です。

(1)クーポン(利子)の減少リスク

仕組債には、あらかじめ定められた参照指数(株価、為替、金利等)の値動きなどによってクーポンが決まるものがあります。たとえばデジタルクーポンの場合、商品に記載された条件を満たせば高い利率が適用され、価格が一定の水準を下回ると低い利率が適用されるなどです。
クーポンにはデジタルクーポンの他に、パワークーポン型があります。パワークーポン型は、商品によってあらかじめ定められた計算式に、参照指数を当てはめて計算がされるものです。計算の結果に出た指数によって高いクーポンが得られますが、一定の指数を下回るとクーポンが減少してしまいます。
商品を購入する際には、事前に参照指数や計算方法について確認をしておく必要があります。

(2)償還金減額のリスク

仕組債には参照指数があらかじめ決められているものもあり、早期に水準に達すると早期償還になってしまい、償還金が減額される恐れがあります。満期を迎えた際に受ける償還は、投資額と同等ですが、早期償還の場合は償還金が減額してしまい、元本割れになる可能性があります。
前述した「ノックイン」などが、このあらかじめ決められた参照指数に該当します。ノックイン判定水準が設定された仕組債を購入する際には、指標などの値動きを逐一確認することが必要です。

(3)債務不履行(デフォルト)のリスク

仕組債の特徴としてデリバティブが組み込まれているため、複数の取引関係者が存在していることが挙げられます。つまり仕組債を発行している発行者以外の取引関係者であるアレンジャーやスワップハウスにデフォルトが発生してしまうと、損失が発生してしまうリスクがあるということです。
この場合、仕組債の運用継続もできなくなってしまうため、仕組債を運用する際には関連するすべての機関が問題なく稼働していることが必要になります。

仕組債を運用する際のリスク管理

(1)償還条件を事前に確認する

利率の大きさなどが魅力の仕組債だが、償還条件等を事前に確認することが何よりのリスク管理になります。リターンの大きさのみに囚われてしまい、償還条件やリスクの大きさを考慮していないと、損失につながってしまう恐れがあります。検討している商品について、不明点がある場合は購入しない判断をするなど、仕様についてしっかりと確認して理解する基本的なことが必要です。

(2)複数の商品に分散投資を行う

投資の大前提ではありますが、複数の商品に分散投資を行うこともリスク管理になります。リターンが大きいからと、余裕資産も仕組債に投資をしてしまうと、損失が出てしまうと取り返しがつかない事態になる可能性もあります。
複数の商品への分散投資を行えば、値下がりなどの資産減少のリスクを分散が可能です。リターンだけに捉われず、分散投資を念頭においてリスク管理することが大切です。

仕組債にはトラブルも多い

リスクの大きい仕組債に対してトラブルが多いのも実情です。2023年6月には、仕組債のリスクについて十分な説明も行わない、顧客の苦情について取り合わないなどの対応を続けながら販売をした金融機関3社に対して、金融庁が行政処分を下しています。
なお、金融庁が仕組債に関する販売実態を確認すると表明したところ、仕組債の取扱を行う地銀が約6割減少しており、仕組債に対するトラブルの多さが顕著になっています。

参考:仕組み債、トラブル絶えず=金融庁指針で取り扱い地銀減

こうしたトラブルに対して、金融庁は業態横断的なモニタリング方針の中で「業界規則等を踏まえた仕組債への対応状況、販売実績や苦情に照らして留意すべき高リスクの金融商品の販売・管理態勢について、重点的にモニタリングを行う。」と対策を打ち出しており、今後の金融機関の取り組みに対して、改善が期待されています。

参考:2023事務年度 金融行政方針

まとめ

仕組債はリターンの大きさなどが魅力ではあるが、トラブルが多いのもまた実情です。クーポン(利子)減少のリスクや償還金減額のリスクなど、あらゆるリスクを頭に入れ、商品についての適切な理解が求められます。
メリットだけに捉われず、構造を理解し、適切なリスク管理を施しながら運用を検討するのが良いでしょう。

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