1. HOME
  2. 事業戦略
  3. クロスメディア戦略とは?スマホ時代の新・広告戦略<入門>

クロスメディア戦略とは?スマホ時代の新・広告戦略<入門>

近年、広告や宣伝の世界で「クロスメディア戦略」が注目を集めている。スマホが普及し、メディアの利用状況が激変する中、金融機関が複雑な商品の特徴をお客様に伝え、信頼感を獲得するためには、クロスメディア戦略は最適な方法だと言える。本稿ではクロスメディア戦略の全体像を把握し、新時代の広告宣伝戦略を学ぶ。

クロスメディア戦略とは?スマホ時代の新・広告戦略<入門>
  1. クロスメディア戦略とは?
  2. 金融機関の広告宣伝戦略の現状
  3. クロスメディア戦略が求められる背景
  4. 2つのクロスメディア戦略とその特徴
  5. クロスメディア戦略を金融機関が活用するメリット
  6. まとめ

クロスメディア戦略とは?

クロスメディア戦略とは

クロスメディア戦略とは、テレビCMや新聞、雑誌、交通広告、web広告など、様々な媒体に対し、見せ方や表現を変えつつメディア展開をし、総合的に販売を促進させる戦略である。

近年大成功したクロスメディア戦略の例として、妖怪ウォッチがあげられる。妖怪ウォッチは、ゲームやマンガ、アニメ、グッズ販売などを組み合わせ、それぞれ異なる切り口で作品の世界観を広げることで、高いシナジー効果を作り出し、爆発的なヒットを生み出した。

クロスメディア戦略とメディアミックスの違い

クロスメディアは、複数のメディアをクロスさせることを前提にしており、メディアごとに最適な表現を用い、シナジー効果を得るという点において、メディアミックスと異なる。

メディアミックスは広告情報の到達を最大化するため、統一されたイメージを用い、個々の広告で完結した情報を提供することが多い。

クロスメディアでは、例えば「テレビCMはユーザーとの接点を作り出すことに特化させ、雑誌やwebサイトで詳細な情報を伝える」といったように、最初から複数のメディアと接点を持ってもらうことを前提とした戦略を組み立てる。

金融機関の広告宣伝戦略の現状

金融機関の広告宣伝戦略の実情

一般の消費財やサービスを提供する企業と比較すると、金融機関のマーケティング戦略は遅れていると言わざるをえない。横並びの意識が強く、他社と「差別化」するよりも、他社と「同じこと」を重視する企業が多いからだと考えられる。

近年は、個別の商品やサービス内容で差別化が難しくなってきており、そのために、顧客が金融機関を選ぶ際の視点として「コーポレートブランド」(その企業らしさ)が重要になってきている。コーポレートブランドを浸透させるためには広告宣伝が重要な役割を果たす。

また、一般生活者のメディア利用の状況は、スマートフォンなどの普及により、以前と比べて大きく変わってきた。

メディアが多様化する時代において、コーポレートブランドを浸透させるために有効な広告宣伝戦略のひとつとして、クロスメディア戦略があげられる。

クロスメディア戦略が求められる背景

クロスメディア戦略が求められる背景

消費者のメディアの利用状況は大きく変化している。テレビの視聴時間は全体的に減少しており、特に20代における減少幅が大きくなっている。NRIの調査結果では、1日あたりテレビを見ている時間が5分以下の人は、20代で20%を超えている。20代にとって、もはやテレビは「家にあって当たり前」というものではなくなってきている。新聞や雑誌の発行部数は減少傾向にあり、接触者は減少し続けている。

一方で、これらの接触が減少するメディアに対して、接触が大きく増えているのがインターネット広告だ。

ここ5年の変化を見ても、twitterやfacebookなどのSNSは急拡大し、生活者の接点として拡大している。スマートフォンの普及は、この傾向に、さらに拍車をかけている。生活者のメディア接点は、テレビ中心だったものから、インターネット中心へと変化してきている。企業が生活者にコミュニケーションをとる手段としては、「テレビCM」から「Web広告」へ変わってきたとも言える。

従来は、新しい商品・サービスの発表は、テレビCMさえ利用していれば、ほとんどの人に告知することができたが、今後はテレビCMでは接触できない人も多くなってくると考えられる。消費者との接点を確保するために、テレビCMだけを活用する広告ではなく、インターネットなどを活用した複数のメディアの活用へシフトすることが必要になってくる。

2つのクロスメディア戦略とその特徴

2つのクロスメディア戦略とその特徴

消費者のメディア接点が多様化する中で、「クロスメディア」による広告が、広告の効果を高めるためには重要となる。クロスメディアを有効に活用するためには2つの考え方がある。メディアを「重ねる」ことで効果を高める考えと、あえてメディアを「重ねない」ことで、全体のメディアの接触者数を拡大させる考え方だ。

「重ねる」クロスメディア戦略

「重ねる」クロスメディアの考え方は、複数のメディアに接触させることで、相乗効果を高めようとする考え方だ。

例えば、テレビCMでは名称やイメージだけを伝え、雑誌やWeb広告で、具体的な特徴を伝えることで、企業やサービスの名称の認知率だけではなく、具体的な特徴についての認知率も高めようとする考え方である。接触が複数回になることで、より記憶の中に、刷り込まれやすくなり、相乗効果が生まれる。

メディアを「重ねる」ことの効果であり、クロスメディア・プレミアムと呼ばれている。今後はクロスメディア・プレミアムを高めるメディアの組合せが重要になってくる。

「重ねない」クロスメディア戦略

一方で「重ねない」クロスメディアは、顧客に対するメディアの接点を最大化しようとする考え方だ。

テレビCMだけの出稿では、どうしても接触できない層も増えてきており、これらの層に対して、Web広告などを使うことで接触を獲得しようとする戦略である。特に、テレビの視聴時間が減少していることは大きな課題であり、テレビを視聴しない層に対して接触できるメディアを見つけることが重要になる。

Web関連の広告だけではなく、交通広告などもテレビを見ない層に対して接触できるメディアとして有効だ。

クロスメディア戦略を金融機関が活用するメリット

クロスメディア戦略のメリット

クロスメディア戦略は複雑な商品の特徴を伝えることに長ける

金融機関の場合は、商品・サービスが複雑なことが多く、よりクロスメディアにおける情報の伝達が重要となる。

テレビCMの限られた時間の中では、商品・サービスの特徴を伝えることができない。雑誌やWebサイトなどの文字媒体を使って、より具体的な情報を、わかりやすく顧客に伝えることが重要となる。「豊富な情報」を伝えることができるメディアの活用が重要となる。

野村総合研究所の調査結果では、テレビCMに接触した場合に、製品・サービスの特徴を認知する人の割合は、全業種平均では20%であるのに対し、金融機関の場合は14%という結果が出ている。この結果からも、金融機関のテレビCMでは、製品・サービスの特徴までは伝えにくいことがわかる。

また、製品・サービスの特徴が伝わると、金融機関の利用意向が高まりやすいという調査結果もある。製品・サービスの特徴を知ることで、全業種平均では利用や購入意向の高まり幅は+1.9%であるのに対し、金融機関の場合は+4.9%となっている。

このように金融機関の広告宣伝の場合は、製品・サービスの特徴は伝えにくいのですが、伝わることで、非常に高い効果が得られる。

テレビCMを使ったクロスメディア戦略は信頼感の醸成に有効

一方、金融機関の場合は、業界の特性上、製品・サービスの特徴を伝えるだけではなく、金融機関として「信頼できる」というイメージを伝えることも重要だ。

安心・信頼できるという企業イメージを伝えるためには、テレビCMなどのマス広告が重要になる。テレビCMで見たり、聞いたりしたことがあることが「信頼感」を醸成する。消費者全体に「信頼感」を醸成するためには、ターゲットが限定されているWeb広告や雑誌広告だけではなく、広く一般の人に接触可能なテレビCMへの出稿も重要となる。

このように、金融機関の広告宣伝では、「豊富な情報」と「信頼感」の両方が必要であり、そのためには、テレビCMなどの単一のメディアだけではなく、複数のメディアを活用した「クロスメディア戦略」が他の業界よりも重要だ。

まとめ

より効率的・効果的なクロスメディアの選定を考えるためには、限られた予算の範囲内で、最適なメディアの選択が重要となる。

冒頭で、金融機関のマーケティングは遅れていると書いたが、言い方を変えると、これからのマーケティング戦略でまだ差別化できる状況にあるとも言える。今後、クロスメディアによるマーケティング戦略の立案が金融機関にとって重要になってくる。

事業戦略カテゴリのオススメの記事
アジアに対するインフラ輸出推進戦略は日本経済の切り札となるか

経済成長に伴うインフラ整備の需要が、アジアを中心に高まってきている。日本政府も成長戦略の一環としてインフラ輸出を推進しており、受注実績も伸びてきている。中国やインドなどの新興国の参入による競争の激化や、民間資金の導入の必要性など、課題も残されている中、いかにインフラ輸出戦略を進めるのか。概要を読み解く。

インバウンド消費が変わる?爆買い終了とインバウンド観光の未来

2015年後半以降、訪日客によるインバウンド消費の減速感が強まっている。訪日客数が底堅く推移する一方、一人当たり支出の減少が顕著だ。この背景には、円安傾向の一服や免税対象品拡大などの政策効果の一巡がある。今後の一人当たり支出の底上げに向けて、買物だけでなくサービス消費の取り込みがカギとなる。

スマート農業とは?IoT×農業が変えるアグリビジネスの未来

スマート農業が日本の農業を救うかもしれない。通信機器と小型センサーで最適な時期を見極め自動で収穫をする収穫ロボットや、様々な地形で活躍する農業用ドローン、農地を自動で走る自動運転農機、温室を一定の環境に保つ環境制御技術など、スマート農業は農業の生産性に革命をもたらす技術となりえるのか。本稿は、その概要と課題に迫る。

企業のためのデジタルマーケティングのすすめ-潮流と全体像を学ぶ

デジタルマーケティングは、ただホームページを構えるだけの時代から、顧客一人ひとりを認識し、その生涯価値を高めるツールへと進化した。オムニチャネルを活用してカスタマーエクスペリエンス・ジャーニーを創出し、ビッグデータを駆使して効率的な施策を実施する。本稿では、その全体像をわかりやすく解説する。

塩崎 潤一 氏 【 寄稿 】
株式会社野村総合研究所
インサイトシグナル事業部
部長

塩崎 潤一 氏

The Finance をフォローする