注目のサブスク企業:CAMPFIRE「クラウドファンディングでコミュニティをマネタイズ化」

注目のサブスク企業:CAMPFIRE「クラウドファンディングでコミュニティをマネタイズ化」

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サブスクリプションの活用事例としてクラウドファンディング上でコミュニティを経済圏化するためにサブスク形態を活用する事例が増えつつある。本稿では、市場規模が2000億円以上に成長したクラウドファンディングビジネスで業界をリードしているCAMPFIRE社のPR担当者にクラウドファンディングを活用したサブスクの成功事例などについて伺った。

  1. 人物・目的のブランディングで 継続的な支援を確保する

人物・目的のブランディングで 継続的な支援を確保する

近年、クラウドファンディング上で生まれたコミュニティを経済圏化する手段としてサブスク形態が活用される事例が増えている。クラウドファンディングは大きく「購入型」「寄付型」「融資型」に分けられる。一般的に知られるクラウドファンディングは購入型で、プレーヤー数が最も多い。購入型は、あるプロジェクトに出資した支援者が、金銭以外のものやサービスといったリターンを受け取る仕組みだ。寄付型は基本的に出資してもリターンは発生せず、社会貢献性の強いプロジェクトが多い。市場規模という点では融資型が市場の9割以上を占める。

クラウドファンディング事業を手がけるCAMPFIREのマーケティング本部の林田憲志朗氏は、「当社は2016年3月、プロジェクトの掲載手数料を20%から5%まで大幅に引き下げ、審査も必要最低限に留めるなどクリエイターの参加を促す施策を打った」と振り返る。

2015年まで、プラットフォーム各社は事前にプロジェクトを精査していたため、一見支援の集まりにくそうなものは表に出てこなかった。そこで同社は公序良俗に反するものを除き、すべて掲載するスタンスに切り替えた。クラウドファンディングというサービスがスタートしたのは2011年。徐々に利用者が増え始め、市場規模は2016年度の約750億円から2017年度の約1700億円まで急成長を遂げた。2018年度の見込み推計は2000億円だ。

同社は2016年8月、「CAMPFIREコミュニティ」をスタート。単発のプロジェクトに集まった支援者から継続的に支援を募ることができるサービスだ。月額会員制度で、企業と個人の対話する場としても活用。また、オンライン上だけでなく、オフ会などリアルでも交流できる場も提供するという。

同事業部PR/マーケターの遠藤梓氏は、「CAMPFIREコミュニティの累計流通額は2019年6月末時点で約10億3000万円。当社全体の流通額のうち、毎月15~20%がCAMPFIREコミュニティから生み出される。CAMPFIRE全体の累計流通額は133億円、プロジェクトの成立件数は2万4000件超(2019年8月8日時点)。矢野経済研究所の調査では国内トップの成立件数だ」と明かす。

コミュニティ規模は様々で、堀江貴文氏が取締役を務めるインターステラテクノロジズのアマチュアロケット開発集団「なつのロケット団」のコミュニティはおよそ300人。幻冬舎所属の箕輪厚介氏が主宰するサロン「箕輪編集室」の参加者は約1000人に上る。

金融分野では、投資のディスカッションを行うサロンが関心を集めている。参加者1000人超の投資サロンのオーナーは20代後半の個人投資家だ。このほか、IR資料や有価証券報告書を読み解くといった専門性の高いサロンもある。オーナーは国内外の大手金融機関が集まる東京都の大手町勤務の男性で、会員は250人程度。「サロンオーナーの提供する情報やサービスと、会員が求める情報やサービスの濃淡は、コミュニティの大きさや質に影響を及ぼすと考えられる」(林田氏)。

また、同社はサービス利用者の不安を軽減するため、2017年3月に日本初となる「クラウドファンディング保険」を導入している。プロジェクト実行者の横領や拐かい帯たい、会社の倒産によるリターン(返礼品)の不履行といった不測の事態が発生した際に、支援金額の80%を上限とした保険金が支援者に支払われる。

クラウドファンディング市場でサブスクを成功させているコミュニティは、「誰が」「どんな目的で」企画を立てているかが明確だ。マネタイズ化には、マス層には刺ささらないが、一部の人たちの心を的確に捉え続けるものを見つけられるかがカギとなる。「サブスクを前提にプロジェクトを立てるのではなく、すでに形成されたコミュニティをさらにブーストできることがクラウドファンディング市場でのサブスク機能ではないか」(遠藤氏)。

クラウドファンディングのサブスク化成功事例の一つは、宝石職人のコミュニティ「制作過程で欠けた宝石の再利用」だ。プロジェクトの目標金額5万円に対して集まった支援金は約760万円。想定以上の需要に月額制コミュニティを新設し、現在の支援者は1000人を超える。二次利用を目的にした同コミュニティでは、欠けた宝石の活用方法をSNS上で発信するなど、支援者との交流はリターン(欠けた宝石の提供)以外でも見受けられる。

「せっかく人が集まっても会員とのコンタクト頻度が低いコミュニティは徐々に崩壊してしまう。プロジェクトの成立率の高い実行者は熱量の高い人が多い。サブスクの継続には、積極的なコミュニケーションは必須だろう」(林田氏)

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