RPAを更に活用するための次なる一手とプロセス構築

RPAを更に活用するための次なる一手とプロセス構築

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RPAが注目されてからの3年間の総括を基に更にRPAを活用するためのポイントについて大きく3つに分け解説した。より大きな改革効果を得るために、RPA取組みの延長線上や、RPAに拘らない発想でどのような一手を打つべきか、RPAの先を見据えた取り組みが必要となる。本稿では、今後進むべく2つの方向性を示し、ZBP(ゼロベースプロセス)を行う上での留意すべき3つのポイントについて解説する。

  1. はじめに
  2. RPAを軸としてもう一歩踏み込む
  3. RPAにこだわらない取組み “Digital Enterprise”とZBP(ゼロベースプロセス)アプローチ)アプローチ
  4. プロセス再構築とZBP(ゼロベースプロセス)の重要な設計思想における3つの留意ポイント
※本稿は株式会社アクセンチュアの許可を得て、転載・編集しています。

はじめに

前稿(RPAを最大限活用するための3つのポイントと副次的作用)では、RPA自体に焦点を絞り、効果的な導入と活用領域の拡大に向けた重要ポイントについて解説したが、今後の展開を考える上で留意すべきことが1つある。

それは、RPA活用が全社に広がり、高い効果を実現できたとしても現実的な削減効果は10〜20%程度であるという点である。

より抜本的に生産性を向上させるためには、RPAを軸としながらプラスアルファを追求する、あるいはRPAへ拘らずにさらなる削減効果の実現を目指す、いわばRPAの先を見据えた取組み“Beyond RPA”が必要となる。

RPAを軸としてもう一歩踏み込む

このアプローチには大きく分けて2つの方向性が考えられるが、その1つはRPAを軸とした取組みの延長線上で、もう一歩踏み込んだ取組みを行うことである。

例えば、他のテクノロジーと組み合わせて効果の適用範囲を広げるのは、非常に有効な手法である。AI技術と併用するインテリジェント・オートメーションはその一例だ。

企業の業務にはRPAでは自動化が困難な領域が少なからず存在しますが、文字認識・音声認識・画像認識・思考などのAI要素と組み合わせることで自動化対象となる業務の範囲を拡大することができる。

現時点ではまだ精度に課題があり、学習させて精度をさらに向上させるためには時間が必要だが、今のレベルでも適用領域は確実に存在するため、積極的に活用を進めるべきだ。またコミュニケーション・ツールと組み合わせて、オペレーションのユーザーインターフェースを抜本的に改革する、あるいはプロセスマイニングツールと組み合わせることで電子上の業務プロセスを可視化し、製造業のようなスタイルで金融機関の現場における“改善”の取組みを加速させるというのも効果的な手法である。

また発想の転換という形でRPAプラスアルファを実現するのも有効な選択肢である。現在、多くの企業は自動化ツールという文脈でRPAを活用しており、低コストでスケールの効く労働力という側面がともすれば見落とされがちだ。

ロボットであるがゆえに、人のような柔軟な対応は難しく、こなせる作業も予め設定された定型的なものに限られるという制約がある。

しかしある程度の割り切りを持ち、求められる量の労働力を必要なタイミングで確保できるというメリットを活かせば、業務の担い手として重要な役割を果たすことも可能である。人手不足と業務負担の増大が深刻化する日本では、こうしたアプローチが特に大きな効果を発揮するはずだ。

RPAにこだわらない取組み “Digital Enterprise”とZBP(ゼロベースプロセス)アプローチ)アプローチ

もう1つのアプローチはRPAという枠組みを超え、より抜本的な生産性向上の取組みを進めることである。20%超の削減効果を目指すRPAプラスアルファという考え方から、さらに高い目標を見据える場合は、特に有効な手法となる。

その鍵を握るのが、デジタルエンタープライズの活用を念頭に置いた業務プロセスの再構築、そして既存のプロセスに固執せずにゼロベースで最適なプロセスを検討・再構築するZBP(Zero-Based Process)である。

これまでのデジタル活用アプローチでは、既存の業務プロセスそのものに着目し、RPAなどで自動化できる領域を識別するというのが常であった。しかし、この方法では従来の業務フローに大きく左右されるため、単なるアナログ業務の自動化で終わってしまうことが多く、さらに高いレベルの生産性向上という目的を達成する事はできない。

端的に言えば、ビジネスの世界にある業務のほとんどは、インプット・アウトプット、そして関連法令などの制約事項が組み合わさることで成立している。これら3つの要素を遵守しながら、プロセス自体はデジタルエンタープライズの活用を前提としてゼロベースで作り直すことで、50%以上という非常に大きな削減効果を期待することができる(下図参照)。

こうしたアプローチを採用し、先進的なデジタル活用を成功させる金融機関もすでに出始めており、Beyond RPAの追求に向けて実現可能な選択肢の1つとして大いに検討すべき内容である。

プロセス再構築とZBP(ゼロベースプロセス)の重要な設計思想における3つの留意ポイント

ZBPを通じた高いレベルの生産性を実現するためには、設計思想という側面で3つのポイントに留意する必要がある。

留意ポイント1 リクワイアメントの再定義

ポイントの1つ目はリクワイアメントの再定義である。前述したプロセスの構成要素(インプット・アウトプット・制約事項)の1つである制約事項の中でも、法令上の要件を再定義できるかどうかで業務の最終的な姿は大きく変わる。

制約条件の大元である法令に立ち戻って再度解釈をし、それを社内の法令リクワイアメントに反映させた上でプロセスを構築することは極めて重要である。法令順守と顧客の安全確保を実現しながら業務プロセスを機能させることが強く求められる金融機関は、特にこのポイントを押さえることが不可欠となる。

留意ポイント2 業務の“幹”へのこだわり

2つ目は業務の“幹”へのこだわりだ。業務プロセスは、“幹”(主要な流れ)と“枝葉”(異例なケース)の処理によって成り立ってるが、幹の領域に人が対応するプロセスが残る一方、枝葉部分ではしっかりとシステム対応されているというケースが少なからず見える。

デジタルエンタープライズを推進するためには、前者は徹底的にデジタル化し、後者は人による対応でも良いという考え方でプロセスを構築することが重要となる。

留意ポイント3 顧客志向のプロセス定義

そして3つ目は、顧客志向のプロセス定義である。これまで業務プロセスの改革を考える際には、自社目線での効率化やコスト削減が優先され、ともすればアウトプットの質・スピードが犠牲になってきたが、顧客志向の重要性が急速に高まる今、こうした従来型の発想でゼロベースの業務設計を進めても求められる効果は望めない。

最新テクノロジーを活用し、品質・スピード・コストというあらゆる面でトレードオフを発生させずに顧客志向のプロセスを実現させることが極めて重要である。

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