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Innovation in Insurance Award2019とイノベーションの最新動向

保険業界ではテクノロジー活用を通じた変革と顧客本位の業務実現、エコシステムを通じた連携の加速がますます求められるようになっている。その大きな鍵を握るのは、オープンな情報交換と、既存の枠組みに囚われない柔軟な発想を通じたイノベーションの推進である。アクセンチュアとEfmaが共催するInnovation in Insurance Awardは、まさにこうした取り組みを保険業界全体で共有・促進するために創設されたプログラムである。本稿では、今年開催したInnovation in Insurance Awardで各分野における注目事例について紹介する。

Innovation in Insurance Award2019とイノベーションの最新動向
  1. はじめに
  2. アワード受賞① プロダクト
  3. アワード受賞② デリバリー
  4. アワード受賞③ 課題解決
  5. アワード受賞④ 予測分析
  6. アワード受賞⑤ 働き方改革
  7. その他注目分野 エコシステム
※本稿は株式会社アクセンチュアの許可を得て、転載・編集しています。

はじめに

Efmaは金融イノベーションの推進を目的として1971年に設立された非営利団体で、パリを拠点に130カ国3300以上の金融サービス機関が加入し、2016年から毎年開催されている。

同プログラムでは、これまで業界の常識を打ち破るような革新的で優れたアイデアの表彰を行ってきたが、第4回目となる今年も世界54か国から約400件の応募があり、世界中から選ばれた30人の審査員の投票+会員のオンライン投票+非会員のオンライン投票を通じて受賞企業が決定した。

今回受賞した案件を大きく分類すると、プロダクト・デリバリー・課題解決・予測分析・働き方改革・エコシステムという5つの領域に分けることができ、以下では各領域の事例を紹介する。

アワード受賞① プロダクト

世の中の変化に伴い、現代社会では様々なニーズが新たに発生しており、保険の世界でもこうしたニーズに応える新たなイノベーションが進んでいる。

この領域で特に目を引いたのは、Aviva Franceが2018年4月から展開している新モビリティ特化型の保険 OnMyWayである。現在ヨーロッパの各都市では、電動スクーターや電動アシスト自転車、ホバーボード、セグウェイなどエコフレンドリーな新型モビリティの普及が進んでいる。

同社はこうしたモビリティの乗車時だけではなく、地下鉄など他の交通手段を利用した場合も最終目的地までのリスクをカバーする保険を展開している。同商品はプロダクト&サービス・イノベーション部門で3位を獲得した。

アワード受賞② デリバリー

商品・サービス提供の仕組みに関する分野で注目を浴びた取り組みは、コネクテッドインシュランス&エコシステム部門で1位を獲得したAXA GermanyのLight Guard Connectだ。

同社は昨年に自動事故通報装置(e-Call)を内蔵した自転車ライトを開発し、事故発生時にはGPSの位置情報をもとにスマホアプリが自動的に救助サービス派遣を依頼するという仕組みを提供している。

EUでは2018年から新車へのe-Callの設置が義務付けられているが、自動車よりはるかに台数の多い自転車にはなぜないのか?という問題意識がこの保険商品の実現につながった。

IoTデバイスを活用した保険サービスという新たな分野を切り拓く革新的な試みと言えるだろう。

アワード受賞③ 課題解決

世界の保険会社は、社会問題の解決につながる領域でも積極的にイノベーションを進めている。

今回のアワードでも、がん・健康増進・SDGsといった分野に関連する数多くの取り組みが受賞した。中でも特に興味深いのは、皮膚がんの早期発見と皮膚ケアに特化したGenerali-WelionのスマホアプリサービスSkinVisionで、カスタマーエクスペリエンス部門で2位を獲得している。

同サービスはスマートフォンでユーザーが撮影した皮膚を人工知能で分析し、皮膚がんリスクを判定する。初回チェックは無料で、1回のチェックは4.99ユーロ(約600円)、年間無制限の検査は29.99ユーロ(約3500円)と手軽に利用でき、定期的に皮膚チェックのリマインダーも出されるなどユーザーの生活に溶け込む形でサービスを提供している。

アワード受賞④ 予測分析

EFMA Innovation Awardの応募・受賞案件では、アナリティクスやビッグデータなどの先進デジタルツールを駆使した商品・サービスも増加傾向にある。

コア・インシュランス・トランスフォーメーション部門で3位を獲得した南アフリカのFNB Lifeは、顧客の属性データ、銀行取引データ、自治体の死亡データから、医療費、アルコール・ファーストフードの支出まで約2500項目にわたるデータを利用して死亡リスクを予測し、生命保険のアンダーライティングに役立てるという業界初の取り組みを行っている。

これまで保険契約者は、医師の診察・検査など入念なチェックを受ける必要があったが、同社の生命保険引き受けではシステムがこうしたデータをバックグラウンドで分析して顧客のリスクを計算する。この仕組みにより告知や医療検査無しで最大150万ラント(約107万円)までの保険に加入できるようになる。

アワード受賞⑤ 働き方改革

ポーランドのPZUはRPAを活用した働き方改革の取り組みで、ワークフォース・トランスフォーメーション部門の1位を受賞した。

同社はRPAをまずクレーム関連6業務に導入し、その後個人・中小企業・大企業向けアフターセールスサービスと保険料請求10業務に活用範囲を拡大。現在は2300名の従業員がPRAに関与し、5業務分野の16プロセスで50台のロボットが1ヶ月あたり257,000件の業務をこなしている。

この事例は、上に紹介したような取り組みに比べればやや地味な印象を与えるかもしれない。しかしEfmaが受賞案件の審査をする際には、取り組みの新規性だけでなく汎用性・効果という2つの基準も非常に重視している。この2つの側面で非常に高く評価されたことが1位獲得につながったのだと考えられる。

その他注目分野 エコシステム

アワード受賞案件ではないが、「保険ではなく、エコシステムを売る」というAllianzの革新的な取り組みは非常に興味深いものだった。

例えば同社が中心企業の1つとなり、モロッコのマラケシュ市で進めている電動スクーター導入プロジェクトでは、スクーター本体や充電インフラなどの専用保険を開発・提供するだけでなく、エコシステムの設計全般にも関わっている。

今まで、このような取組みの中で保険会社は非常に目立たない存在だったが、同プロジェクトでは、全ての電動スクーターに“Allianz Inside”というロゴが貼られていることが象徴するように、同社は保険の提供者として既存エコシステムに参画するのではなく、自らの強みを生かす形で積極的にエコシステム創出の担い手となっている。

プロジェクトの設計段階から関わるという同社の先進的なアプローチは、保険会社が単品で保険を売る時代が終わりつつあることを象徴する事例である。

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