- 国内金融機関は、デジタルトランスフォーメーションの潮流をどのように捉え・挑んでいくべきか
- デジタルトランスフォーメーションを推進する組織カルチャー変革と人材開発
- デジタルトランスフォーメーションのトレンド及び実践事例
国内金融機関は、デジタルトランスフォーメーションの潮流をどのように捉え・挑んでいくべきか
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【講演者】
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デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
金融インダストリー 執行役員新堀 幸生 氏
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【講演者】
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デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
金融インダストリー シニア・マネジャー丸山 由太 氏
DXには大きく2つの意味合いがあると見ています。1つはIT(情報通信)を活用して従来業務の効率性を上げること。もう1つが技術トレンドを捉えて新しい価値やサービスを創り出す取り組みです。本日のフォーラムでは主に後者に力点を置いてご説明します。
新しいデジタル技術のビジネス展開の潮流が急速かつグローバルに展開する中で、既存の金融機関は成長機会をどう見つけるか。まず「CX」、つまり顧客の購買特性を把握している企業が勝つ時代が訪れていることを認識することがスタート地点です。続いてのキーワードが「プラットフォーム・ライジング」。どのプラットフォーマーと、どう付き合っていくかを経営陣も含めて事業戦略レベルで詰めていく作業はもはや必須と言えるでしょう。最後が「データ・マネタイゼーション」で、提携先のプラットフォーマーを通過するデータを、AI(人工知能)などを駆使しながら分析して、新しい価値を創造します。
中国の平安保険グループは、同国の医療サービスの地域不均衡に目をつけ、「保険」ではなく「健康に暮らす」ためのアプリケーションを多数提供。「このアプリがなければ生きていけない」ユーザーが数億人に達した時点で保険を売り始めました。充実した顧客基盤からのデータに基づく最適仕様の商品を売り出すストーリーを実践して急成長を遂げています。
シンガポールのDBS銀行は、自行サービスで中古車販売を手がけています。ユーザーにとっては、必要資金の計算から車選び、購入までこれ1つで行えるので快適に中古車を手に入れられます。結果、DBS銀行は、顧客との接点を増やし囲い込むこともできるのです。
一方、日本の金融業界のDXは、例えば、データ活用の文脈では、一部の金融機関様がセンター・オブ・エクセレンス(部門横断の専門組織)の下、「データ活用は有効」と訴求し始めたところです。DXを進めるためには、外部専門家の力も使いながら、必要な人材による小さな組織を立ち上げ、顧客との接点を強化するサービスやプロダクトを提供していくことが重要と考えます。
デジタルトランスフォーメーションを推進する組織カルチャー変革と人材開発
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【講演者】
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米国レッドハット
FSIエコシステム&パートナーアライアンスグローバルディレクターケリー・スウィット 氏
私はレッドハットに来る前、17年間金融機関に在籍、直近ではシティバンクでシニアバイスプレジデントとしてDXを推進し、2018年に“Womenin IT Transformation Leaderofthe Year”を受賞しました。2016年当時のシティバンクの経費率は59%と米国では高いレベル。また、対話の手法でデジタルチャネルを活用しているお客様は45%どまりでした。私はDXによる業務改善に取り組みました。
まず、デジタル戦略の変更に着手しました。対象のクレジットカード事業でCXを提供すために必要な機能を精査したところ、モジュール型サービスをテクノロジー部門と連携して構築できるシステムが必要と判明しました。私たちは自分の賢さを示そうと複雑な仕組みを構築したがりますが、DXの成果を迅速に業務に反映する簡素なスキームがベストです。一連の作業を通じて、我々のビジネスモデルが再構築されただけではなく、個々のお客様に対してそれぞれにふさわしいデータへのアクセスをリアルタイムで提供できるようになりました。さらに、AIの機械学習をベースにした新しいサービスの開発も動き出したのです。
DXの推進には社内の人材再編が重要です。会社全体のデジタル戦略の変更には、テクノロジー、オペレーション、コンプライアンス、マーケティングなど多様な部門のスタッフが参加します。そこで、コア業務ごとにプロダクトオーナーを指名して、彼らを「支援型リーダー」と位置づけました。プロダクトオーナーは経営的な責任を負わず、ひたすらリーダーシップの発揮に努めました。これは単なるプロジェクトではなくジャーニー(旅路)であり、メンバーが各々の旅路を全うするには、新しいスキルの取得をサポートしたり、課題や学びをチームへ還元するプロセスが欠かせないからです。
結果、2019年末の経費率は55%まで下がりました。グローバル組織で4%ダウンはかなりの数字です。特に私たちがDXを取り入れたビジネスでは、さらに24%も削減できました。お客様とのデジタルエンゲージメント率も56%と11ポイントも改善。多くの方が、私たちのモバイルやウェブチャネルを使ってくださるようになったのです。
デジタルトランスフォーメーションのトレンド及び実践事例
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【講演者】
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レッドハット株式会社
テクニカルセールス本部
エンタープライズソリューションアーキテクト部
シニアソリューションアーキテクト知久 裕之 氏
DXの先進企業として知られるシンガポールのDBS銀行や米国のPayPalは、当社のコンテナプラットフォームをご活用いただいています。オーストラリア最大の投資銀行で、世界28カ国において営業展開しているマッコーリー銀行も同サービスのユーザーです。
当社のコンテナは、開発からテスト、最終的には本番環境へ移行するまで可搬性と一貫性を維持します。アプリケーションを内包するコンテナには、必要なライブラリ、依存関係、ファイルが含まれていますので煩わしい副作用なしにコンテナを本稼働へと進められます。
マッコーリー銀行では、「OpenShift」と呼ばれるコンテナ基盤をコアとしたデジタルプラットフォームを開発。お客様に快適なサービスを提供しつつ、そのフィードバックを開発者が迅速に反映し、より良いサービスに変えてリリースする取り組みを推進しています。
このような新サービスの開発ではデリバリースピードが重要です。開発者が例えばコードを1行変更して実際のサービスにどの程度のスピードで反映されるか、さらに開発者がいかにスムーズに対応できるかが問われます。最近、多くの海外の金融機関では、開発者が業務を進めやすいインフラシステム環境の整備に注力しています。当社が提供しているコンテナは、どのようなマルチクラウドであれ、オンプレミス環境であれ、ユーザー体験を開発者にフィードバックし、同じ運用、同じリリース手順で業務に取り組むことが可能です。
日本の金融機関の中には、古い運用システムをお使いのところもあるかと思います。コンテナなら、これまでの運用システムをその中に搭載すれば、IPなどのかぶりを気にせず複製できます。いったんコンテナ化すれば、UI(ユーザーインターフェース)とロジックを切り離し、簡素化されたシンプルなモジュールに切り替えていくようなやり方も考えられます。当社では、パートナー企業と力を合わせて、金融機関とその先のエンドユーザーがより使いたいサービス、使いたい機能を順次リリースしていく仕組みづくりを支援してまいります。
講演資料のダウンロードはこちら https://red.ht/20200204