1. HOME
  2. 事業戦略
  3. P2Pプラットフォーム構築で特定領域に特化した商品開発

P2Pプラットフォーム構築で特定領域に特化した商品開発

相互扶助の仕組みでリスクに備えるP2P保険に注目が集まっている。本稿では、Frich(フリッチ)代表取締役の富永源太郎氏にP2P保険のポイントやその開発の取組みについて話を聞いた。

P2Pプラットフォーム構築で特定領域に特化した商品開発
  1. 東京都金融賞第1位を獲得
  2. 相互扶助で運営コスト減
  3. 有事には直接的な支援が必需

東京都金融賞第1位を獲得

Frich(フリッチ)は、日本で数少ないInsurTech(インシュアテック)スタートアップとして2018年1月に創業。当社開発のプラットフォーム「Frich」は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の友人同士で相互扶助のグループをつくり、特定のリスクに備えるという仕組みで、一般的にP2P(Peer to Peer)保険と言われている。

なお、海外では、Lemonad(レモネード)、Friendsurance(フレンドシュアランス)といったP2P保険スタートアップの成功事例が次々と報告されているが、いずれも保険会社や保険ブローカーの形態をとっており、当社のようにプラットフォーマーに徹するタイプのビジネスモデルは世界的に見ても極めて珍しい。

そのため、当社は2019年9月には世界有数のベンチャーキャピタル兼アクセラレーターであるPlug and Play Japanから日本初の資金調達に成功し、2020年1月には、当社プラットフォームを活用して特定犬種に特化したP2P型のペット保険をつくる事業企画などで東京都金融賞第1位を獲得した。直近では、2020年4月9日から、規制のサンドボックス制度下において日本初となる特例措置つきでの実証実験を実施している。

相互扶助で運営コスト減

当社が目指しているのは、従来、保険数理の関係上保険が成立しにくい分野(たとえば特定犬種に特化したペット保険など)において、「助け合い」の仕組みを成立させることである。保険には「大数の法則」(※)という大原則があり、特定の事柄にフォーカスすると、その母集団を正しく反映したとは言えず、保険料の算出をすることが出来ない。しかし一方で、テクノロジーが高度に発達した今日においては、その技術を活用することである特定のエリアにフォーカスしても助け合いが成立するのではないかと当社は考えており、それを実現するのが当社のプラットフォームということになる。

脚注 ※
※ 大数の法則:数件のサンプルではなく、より多くのサンプルを収集・分析することによって見えてくる一定の発生確率や法則のこと

この事業のポイントは、いわゆるピアプレッシャーと呼ばれるグループ員間での相互牽制である。SNSの友人同士でつくったグループで事故予防に努めた結果、そのグループに無事故の月が発生した場合、グループに所属するメンバーの翌月の掛金は割引になるため、わざわざ保険金を請求するまでも無いような事故などや虚偽の申請は請求されにくくなる。

無事故を促すことはすなわち保険会社の保険金支払いリスクを低下させることに繋がるのに加えて、「Frich」上では各種運営コストを低減できる。そのため、保険会社は従来よりも保険引受のリスクをとりやすくなると考えられる。

その結果、従来はつくりにくいような保険商品であっても、開発できるチャンスが出てくると当社は考えている。

有事には直接的な支援が必需

2020年5月1日現在、新型コロナウィルスが猛威を振るっており、世界は一変してしまった。保険は「万が一に備えるもの」であるが、もはやその「万が一」の事態が現出したと言って良いだろう。

こうした非常事態のために保険で備えてきたという方は多いと思うが、事態は世界規模でパンデミック化しているだけでなく、同時にその感染対策としての各種自粛が経済的にも大きな負の影響を与えている。人類史に刻まれるような事態に対しては、やはり「万一の事態に備える」だけではダメで、何らかの直接的な支援が必要だと当社は考えている。

「Frich」は、相互扶助の友だちグループがベースとなっているため、そのグループを活用して、いわばP2P型の相互支援の仕組みができないかと考えて開始するのが、Frich for Braves(ブレイブス)というクラウドファンディングサービスだ(2020年5月開始予定)。

今後は、社会情勢などに合わせて「有事への備え」と「直接的支援」の両輪を回せるようなプラットフォーム開発を進めていきたいと考えている。

寄稿
Frich
代表取締役
富永 源太郎 氏
東京都出身。横浜市の観光協会に勤めた後、ANA及び全日空商事にて
マイルビジネス、保険を含む非航空領域の新規事業開発に10年間従事。
事業戦略カテゴリのオススメの記事
地域金融機関の次世代基幹システムの潮流~人とデジタル技術、双方の利点を生かす~

地域金融機関を取り巻く環境は大きく変化している。営業エリア人口の減少や人口減少に伴う預金流出など、ここ10年で来店客が約40%減少した。デジタル化の進展によるライフスタイルの変化は目を見張るスピードで進んでおり、地域金融機関も従来にはない目線で構造変化を進めていく必要がある。連載第3回目の今回は、伊予銀行の取り組み事例について話を聞いた。

サステナブル・ファイナンスを経営の軸に成長産業クラスターとのシナジーを生み出す(三井住友銀行)

三井住友銀行には、環境型融資に10年以上前から取り組んできたサステナブルビジネスの歴史がある。連載第3回目の今回は、ホールセール統括部 サステナブルビジネス推進室の2人にその取り組みについて聞いた。

COVID-19のインパクトと「ニューノーマル」のかたち

新型コロナウィルス感染症(COVID―19)は、想像もしなかった形や規模で世界に深刻な影響をもたらしている。COVID-19はこれまで人類が直面してきたパンデミックの危機とどのような違いがあり、世界の経済そして金融業界にどのような影響をもたらしているのだろうか。本連載では、今後の危機対応で重要となるポイント、銀行・証券・保険業界による対応・変革のキーワード、そして金融業界が『ニューノーマル』のもたらす機会を活用し、さらなる成長を実現するためのアプローチについて全3回で解説していく。

地域金融機関の次世代基幹システムの潮流~日本初のチャレンジャーバンクを目指す~

デジタル革命の波は銀行業界にも押し寄せ、パラダイムシフトがすぐそこまで迫っている。変化に対応するため、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)は「みんなの銀行」プロジェクトを打ち立てた。今回は、みんなの銀行設立準備会社 代表取締役 横田浩二氏にその取り組みについて聞いた。

【 寄稿 】
Frich
代表取締役

富永 源太郎 氏

The Finance をフォローする