- メットライフの「データガバナンス」とは
- 導入のメリット
- データガバナンスには、顧客情報の「保護」と「活用」の両面がある
- 日本ではどう進めているか
- データガバナンス態勢の構築では、日常業務にデータ整理の作業が加わるため、社内の理解が進まないことに悩む企業が少なくない
- データガバナンスのゴールのイメージ
メットライフの「データガバナンス」とは
ビッグデータを扱う環境や機械学習が進化して、高確度の予測と従来なら対象外だった物事のリスクの定量化が可能になり、ビジネスの機会が広がった。
メットライフでは、「availability(可用性)・usability(使用性)・integrity(整合性)」をキーワードとしたグローバル基準のもと、各国・地域の法制度などに準拠しながら、データの収集や整理、活用を実践している。
導入のメリット
例えば、お客様から医療保険の保険金請求があったとする。契約者情報や特約を含む商品概要、ご請求内容、金額、連絡手段がインターネットか電話かといった一連のデータを会社が定めたフォーマットで整理・保管することで、営業部門や商品開発部門など社内の様々な部署が活用でき、次のサービス展開やお客様の満足度向上に生かせる。この観点から言えば、データガバナンスは、部署や業務ラインが多い業種・業態の企業ほど効果の増幅が期待できる。
データガバナンスには、顧客情報の「保護」と「活用」の両面がある
顧客データがどの部門でどう管理・活用されているか把握しないままセキュリティ体制を強化しても“抜け”が発生してしまう。個人データ規制強化の流れは変わらず、万一漏えいすれば経営の根幹を揺るがしかねない。顧客データの「活用」は、「保護」体制の構築が大前提と考える。
日本ではどう進めているか
経営陣を先頭にもともと取り組みを進めていたが、その動きを加速するため、2018年にデータガバナンスチームを立ち上げた。社外から招いたデータの専門家と、生命保険事業に精通した社内人材をミックスしたダイバーシティな組織だ。
まず、営業や保険金業務など社内の約20の部門長で構成する組織「JDC(ジャパン・データ・カウンシル)」を創設し、「データは各部門ではなく会社全体の資産である」ことを再確認した。次に、どの部門でも使いやすいように文字型や生成時期といった基本フォーマットを示したうえで、「データはどこにあるか」「どのように集めたのか」「最新の内容か」「利用方法は正しいか」などの観点から全保有データの整理を行った。
データガバナンス態勢の構築では、日常業務にデータ整理の作業が加わるため、社内の理解が進まないことに悩む企業が少なくない
我々はある一部門をパイロットとして指定し、半年以上かけて保有している顧客情報のデータ品質の測定やメンテナンスなどを行った。進ちょく状況や結果は四半期ごとに開催されるJDCに報告。参加メンバーからは、実際にデータガバナンスを行うことでその効果を実感し、「他の部門でもデータガバナンスを進めるべきだ」とのコメントをもらった。
データガバナンスのゴールのイメージ
社内のデータについて、保管場所、収集意図、クオリティ担保の必要作業、利用可能性などが各部門で共有され、お客様や当社にとって大きな価値を生み出すツールと位置づけられる状態を目指している。
- 寄稿
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メットライフ生命保険中山 雄大 氏
執行役員
チーフデータオフィサー(CDO)