1. HOME
  2. 事業戦略
  3. 顧客情報の「保護」と「活用」の両立 ~データから価値を引き出す

顧客情報の「保護」と「活用」の両立 ~データから価値を引き出す

メットライフ生命保険は、「データガバナンス=顧客情報などのデータ品質の測定・管理、メンテナンス計画の策定・遂行」を、社内の専門組織が中心となって推進している。執行役員 チーフデータオフィサーの中山雄大氏に話を聞いた。

顧客情報の「保護」と「活用」の両立 ~データから価値を引き出す
  1. メットライフの「データガバナンス」とは
  2. 導入のメリット
  3. データガバナンスには、顧客情報の「保護」と「活用」の両面がある
  4. 日本ではどう進めているか
  5. データガバナンス態勢の構築では、日常業務にデータ整理の作業が加わるため、社内の理解が進まないことに悩む企業が少なくない
  6. データガバナンスのゴールのイメージ

メットライフの「データガバナンス」とは

ビッグデータを扱う環境や機械学習が進化して、高確度の予測と従来なら対象外だった物事のリスクの定量化が可能になり、ビジネスの機会が広がった。

メットライフでは、「availability(可用性)・usability(使用性)・integrity(整合性)」をキーワードとしたグローバル基準のもと、各国・地域の法制度などに準拠しながら、データの収集や整理、活用を実践している。

導入のメリット

例えば、お客様から医療保険の保険金請求があったとする。契約者情報や特約を含む商品概要、ご請求内容、金額、連絡手段がインターネットか電話かといった一連のデータを会社が定めたフォーマットで整理・保管することで、営業部門や商品開発部門など社内の様々な部署が活用でき、次のサービス展開やお客様の満足度向上に生かせる。この観点から言えば、データガバナンスは、部署や業務ラインが多い業種・業態の企業ほど効果の増幅が期待できる。

データガバナンスには、顧客情報の「保護」と「活用」の両面がある

顧客データがどの部門でどう管理・活用されているか把握しないままセキュリティ体制を強化しても“抜け”が発生してしまう。個人データ規制強化の流れは変わらず、万一漏えいすれば経営の根幹を揺るがしかねない。顧客データの「活用」は、「保護」体制の構築が大前提と考える。

日本ではどう進めているか

経営陣を先頭にもともと取り組みを進めていたが、その動きを加速するため、2018年にデータガバナンスチームを立ち上げた。社外から招いたデータの専門家と、生命保険事業に精通した社内人材をミックスしたダイバーシティな組織だ。

まず、営業や保険金業務など社内の約20の部門長で構成する組織「JDC(ジャパン・データ・カウンシル)」を創設し、「データは各部門ではなく会社全体の資産である」ことを再確認した。次に、どの部門でも使いやすいように文字型や生成時期といった基本フォーマットを示したうえで、「データはどこにあるか」「どのように集めたのか」「最新の内容か」「利用方法は正しいか」などの観点から全保有データの整理を行った。

データガバナンス態勢の構築では、日常業務にデータ整理の作業が加わるため、社内の理解が進まないことに悩む企業が少なくない

我々はある一部門をパイロットとして指定し、半年以上かけて保有している顧客情報のデータ品質の測定やメンテナンスなどを行った。進ちょく状況や結果は四半期ごとに開催されるJDCに報告。参加メンバーからは、実際にデータガバナンスを行うことでその効果を実感し、「他の部門でもデータガバナンスを進めるべきだ」とのコメントをもらった。

データガバナンスのゴールのイメージ

社内のデータについて、保管場所、収集意図、クオリティ担保の必要作業、利用可能性などが各部門で共有され、お客様や当社にとって大きな価値を生み出すツールと位置づけられる状態を目指している。

事業戦略カテゴリのオススメの記事
金融所得課税一体化の今日的意義

7月7日に、金融庁の「金融所得課税一体化に関する研究会」において、「論点整理」が公表された。本研究会においては、デリバティブ取引への損益通算範囲拡大に関する議論が行なわれている。ヘッジ手段としてのデリバティブ取引と対象となる資産を一体課税の対象とすることで、ヘッジ効果を税務上も享受せんとするものである。一方、トマ・ピケティ以降の世界的な議論の趨勢如何では、貧富の差の顕著な拡大を受け、金融所得一体課税のバックボーンとなっている二元的所得税の考え方が、変化を余儀なくされる可能性も否定できない情勢だ。本稿では、金融所得課税一体化について、金融庁研究会の議論をふりかえりつつ、今後の方向性を検討したい。

東証新上場区分が株主優待に与える示唆

2021年2月、東証プライム市場の上場基準が発表された。旧東証1部と大きく異なる部分として、株主数基準が挙げられる。本稿では、東証プライム市場上場基準の注目点から株主優待制度に焦点をあて解説する。

『脱・銀行化』に向けたビジネスモデルの構築 ~「つながる」時代に向けた変革の論点~

今から10年後には、60代までの大多数と、70代の多くがスマートフォンを使いこなす時代が到来する。その社会における個人や企業・組織の活動は、入口がデジタルであり、商品・サービスの提供は、「デジタルが主、リアルが従」でデザインされることになるだろう。データを介して「つながる」社会におけるバンキングはどのような姿になっているだろうか。

サステナブル・ファイナンスはメインストリームになるか

持続可能な社会の実現を金融面でサポートする手法として、「サステナブル・ファイナンス」が注目されている。欧州や米国における地球温暖化防止や気候変動への取り組み拡大、日本では菅首相の2050年の「カーボン・ニュートラル宣言」(排出する二酸化炭素を吸収する二酸化炭素の量以内とし、二酸化炭素の増加を抑制するとの宣言)などを背景に、サステナブル・ファイナンスの市場は拡大しており、2020年の組成額は全世界で前年比倍増の5,443億米ドルに到達した。2021年は、既存事業の脱炭素化に要する資金を調達する「トランジション・ファイナンス」といった新たな切り口も登場し、今後一段と広がりを見せそうだ。本稿では、サスティナブル・ファイナンスがメインストリームになるか考察する。

【 インタビュー 】
メットライフ生命保険
執行役員
チーフデータオフィサー(CDO)

中山 雄大 氏