1. HOME
  2. 事業戦略
  3. 外部プラットフォームと連携 利用機会・範囲の拡大へ(JR東日本)

外部プラットフォームと連携 利用機会・範囲の拡大へ(JR東日本)

2001年にIC乗車券としてサービスを開始した東日本旅客鉄道(JR東日本)の交通系ICカード「Suica」。2020年3月末時点の発行数は8,200万枚にのぼる。同社IT・Suica事業本部の小澤達氏に今後のサービス戦略を聞いた。

外部プラットフォームと連携 利用機会・範囲の拡大へ(JR東日本)
  1. Suicaの利便性向上と今後の展望

Suicaの利便性向上と今後の展望

─多数のユーザーから支持を集める理由は。

小澤 SuicaはIC乗車券として生まれたが、交通機関以外にも幅広くサービスを拡大し、利便性を追求し続けていることが大きな理由と考える。

2001年のサービス開始後からIC乗車券として利用可能なエリアを広げ、他社サービスとの提携を進めた。2013年にはSuicaを含む10の交通系ICカードとの相互利用を開始。Suica一枚で多くの交通機関が利用できるようになった。

2004年からは、決済手段としてのサービスをスタートした。当初は駅構内店舗での利用が中心だったが、市中のコンビニエンスストアやドラッグストアなど、鉄道以外の領域も拡大した。現在ではチェーン店に加えて、中小の様々な店舗など多様な業種・業態での支払いにSuicaを使うことができる。決済サービスでもSuicaを含む9の交通系電子マネー(ポストペイのPiTaPaを除く)と相互利用し、全国94万店舗でSuicaが利用できる環境を整えた。

さらに、2006年から従来のカードタイプに加えて携帯電話で使用できるモバイルSuicaがスタートし、2016年にはApple Pay、2018年にはGoogle PayでのSuica利用が実現した。

─今後のSuicaの展望について。

小澤 一言でいえば「Suicaの共通基盤化」を実現するのが目標だ。Suicaを通じてユーザーがJR東日本のネットワークに繋がり、多様なサービスの利用機会を創造する。

共通基盤化の実現に向けて、当社は「Suicaの基礎価値向上」「当社グループでの連携」「外部プラットフォームとの連携」の3つの方針を掲げている(図表)。インフラの一つとしてSuicaを使ってもらうには、ユーザーに寄り添った形でさらに利用できる範囲を拡大していく必要があるだろう。そこで重要となる方針の一つが「外部プラットフォームとの連携」だ。

2020年5月、楽天と提携し、QRコード決済の「楽天ペイ」のアプリでもSuicaの機能が使えるようになった。提供するサービスは、楽天ペイアプリでのSuicaの発行や残高・利用履歴の確認、楽天カードからのチャージを行った場合の楽天ポイントの付与などだ。モバイルSuicaにはもともとチャージが簡単という特徴がある。楽天のポイントが付与されるメリットが加われば、より多くの人がSuicaでの決済サービスを利用するようになるだろう。会員数の多い楽天ユーザーにもモバイルSuicaの利便性を実感してもらうことで、メインの決済手段にSuicaを利用する人を増やす効果も期待できる。

─キャッシュレス事業の展望は。

小澤 2019年10月に実施された消費税増税に伴い、政府は「キャッシュレス・消費者還元事業」を打ち出した。当社もキャッシュレス化の進展に貢献するため、本事業に参画している。

Suicaの普及が進めば日本のキャッシュレス化に貢献できると考える。今後もSuicaの魅力となる利便性の向上を推進していく方針だ。

事業戦略カテゴリのオススメの記事
金融所得課税一体化の今日的意義

7月7日に、金融庁の「金融所得課税一体化に関する研究会」において、「論点整理」が公表された。本研究会においては、デリバティブ取引への損益通算範囲拡大に関する議論が行なわれている。ヘッジ手段としてのデリバティブ取引と対象となる資産を一体課税の対象とすることで、ヘッジ効果を税務上も享受せんとするものである。一方、トマ・ピケティ以降の世界的な議論の趨勢如何では、貧富の差の顕著な拡大を受け、金融所得一体課税のバックボーンとなっている二元的所得税の考え方が、変化を余儀なくされる可能性も否定できない情勢だ。本稿では、金融所得課税一体化について、金融庁研究会の議論をふりかえりつつ、今後の方向性を検討したい。

東証新上場区分が株主優待に与える示唆

2021年2月、東証プライム市場の上場基準が発表された。旧東証1部と大きく異なる部分として、株主数基準が挙げられる。本稿では、東証プライム市場上場基準の注目点から株主優待制度に焦点をあて解説する。

『脱・銀行化』に向けたビジネスモデルの構築 ~「つながる」時代に向けた変革の論点~

今から10年後には、60代までの大多数と、70代の多くがスマートフォンを使いこなす時代が到来する。その社会における個人や企業・組織の活動は、入口がデジタルであり、商品・サービスの提供は、「デジタルが主、リアルが従」でデザインされることになるだろう。データを介して「つながる」社会におけるバンキングはどのような姿になっているだろうか。

サステナブル・ファイナンスはメインストリームになるか

持続可能な社会の実現を金融面でサポートする手法として、「サステナブル・ファイナンス」が注目されている。欧州や米国における地球温暖化防止や気候変動への取り組み拡大、日本では菅首相の2050年の「カーボン・ニュートラル宣言」(排出する二酸化炭素を吸収する二酸化炭素の量以内とし、二酸化炭素の増加を抑制するとの宣言)などを背景に、サステナブル・ファイナンスの市場は拡大しており、2020年の組成額は全世界で前年比倍増の5,443億米ドルに到達した。2021年は、既存事業の脱炭素化に要する資金を調達する「トランジション・ファイナンス」といった新たな切り口も登場し、今後一段と広がりを見せそうだ。本稿では、サスティナブル・ファイナンスがメインストリームになるか考察する。

【 インタビュー 】
東日本旅客鉄道
IT・Suica事業本部 決済事業部門
FinTech・クレジットG 主席

小澤 達 氏