業務生産性の向上を抜本的に導くBPS(ビジネスプロセスサービス)

業務生産性の向上を抜本的に導くBPS(ビジネスプロセスサービス)

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金融業界を含めた日本企業の多くが業務生産性の向上を求められている。コスト改革やDX推進は徐々に進展してはいるものの、改革に向けた取り組みがまだ不十分である現状も多い。BPOの活用によるコストメリットも縮小する中、人材やデジタルを最大限に活用しながら、総合的に解決するサービスの可能性について解説する。

  1. 業務生産性向上を取り巻く環境とアウトソーシングのかたち
  2. BPOの進化型“ビジネスプロセスサービス”(BPS)
※本稿は株式会社アクセンチュアの許可を得て、転載・編集しています。

業務生産性向上を取り巻く環境とアウトソーシングのかたち

日本企業は今、抜本的な業務生産性の向上が求められている。アクセンチュアが、従業員3000人以上の企業を対象に売上成長率と従業員増加率を比較したところ、人員増加の割合が売上の成長を大きく上回る企業が全体の約4割に達した。この結果から浮き彫りになるのは、日本の多くの企業において従業員一人あたりの生産性が低下傾向にあるにも関わらず、従業員を抱え続けているという事実である。

こうした現状は金融業界でも変わらない。国内主要銀行グループにおける業務純益・従業員数の3年間の推移を比較すると、業務純益が2015年から2018年にかけて20%以上減少する一方、従業員数は10%を上回る勢いで増加している。つまり金融機関の多くは、トップラインの向上が困難な状況の中で人件費増加という課題に直面しており、コスト構造改革・オペレーション改革のさらなる加速を迫られている。

国内金融機関の多くはこうした課題を認識し、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた取り組みを積極的に進めているだろう。しかし今置かれている経営環境の厳しさに対し、取り組みのスピード感・規模・効果のいずれも十分なものとは言えないのが現状である。更なるDXを進める際にノウハウや人材面から次にあげられるような悩みに直面されている方も多いと思われる。

実行面

  • AI・RPAなどのデジタルツールの活用方法がわからない・業務への適応方法がわからない
  • 部門間を跨いだ業務変革を進めようとしても部門間の調整が進まない
  • 発生頻度の低い業務が多く(少量多品種)、ROIが成り立たない
  • 品質の安定と業務の変革の両立が難しい(変化に保守的)
  • 継続的な規制対応など、恒常的な業務変更に耐えられない

人事面

  • 業務DXを進める中核人材がいない
  • 業務を遂行している現場の根強い抵抗に苦戦している
  • DXにより生まれた人材余力の活用方法が見えていない(出口戦略・キャリアステップ)
  • 余力人材の再配置に必要なスキルシフトがうまくいかない
  • デジタル化が進み、業務量が減る中で、残った業務の担い手のモチベーションが維持できない従来型BPOの現状と課題

こうした課題を克服しながら生産性向上を目指すソリューションの1つが、コスト削減に軸を置きながら、一部業務を外部委託するビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)である。国内では多くの企業が活用を進めており、今後も年間1~2%程度の成長が続くと予測されている(※)。また近年には、活用対象となる業務領域も大きく広がってきている。これまでは、企業が業種を問わず必要とする財務・経理・人事といった分野で業務の集約とコスト削減を実現する“業界横断型”のサービス形態が主であった。しかし今では金融・通信・医療など、各業界特有の事業領域に深く踏み込んだアウトソーシングが普及しつつある。このような現状を考えても、従来型サービスにはまだまだ活用の余地があるといえるだろう。

出所:(株)矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場に関する調査(2019年)」2019年12月24日発表

ただし、こうした既存スキームに限界が見えつつあるのも事実である。これまで多くのアウトソーシング・サービスは、人件費が比較的安価な海外拠点を活用し、専門的なオペレーションセンターを構築することで、コストの最小化とパフォーマンスの最大化、業務の高度化を実現してきた。しかし今、“リフトアンドシフト”と呼ばれるこうしたモデルの有効性が、市場環境の変化によって低下しつつある。

その大きな要因となっているのは、海外の物価上昇である。例えば主要ロケーションの1つである中国では、過去9年で人件費が2倍以上に高騰しており、従来型BPOの強みとなっていた単価差によるコストメリットが実現しにくくなっている。またフィリピンをはじめとする他の国でも同様の傾向が見られ、オペレーションを国内で行う方が大きなコスト削減を見込めるといった逆転現象も生じている。これまでのアプローチを前提とすると、自前でのDXの推進、外部の活用のいずれも期待される効果を出すためには十分な選択肢とは言えない。

BPOの進化型“ビジネスプロセスサービス”(BPS)

こうした現状を踏まえ、アクセンチュアが展開しているのは、従来型BPOの進化形態とも言えるBPS(ビジネスプロセスサービス)である。従来型のコスト削減を主たる目的とした一部業務のアウトソーシング(いわゆるBPO)という考え方から、デジタルを活用した業務の抜本改革やその後の人材再活用といった悩みを総合的に解決するために進化したサービスがBPSである。いわば、「業務のアウトソーシングを通じてトランスフォーメーションそのものをアウトソーシングするという考え方である。BPSは従来型BPOと異なる特徴を持っている。スキルを有する複雑な業務オペレーションやマーケティングやアナリティクスなど広範囲な業務において、弊社によるトランスフォーメーションを通じて、コスト削減のみならず、世の中の急速な変化への業務柔軟性を獲得したり、トップラインに貢献するプロフィットセンターへシフトすることができる。また、業務の変革のみならず、そこで業務を担っていた人材のトランスフォーメーション(リスキリング)も同時に実現し、戦略的な人材の再配置を可能とする。BPOのように業務委託・受託という関係ではなく、変革のパートナーとして改革実行を進める協業モデルがBPSである。

すでにグローバル規模で数々の実績を持ち、国内でも多くの業界のクライアント企業80社以上から業務を受託しているBPSであるが、具体的にはどのようなメリットがあるのだろうか?次回は、BPSが持つ4つの強みと活用事例について解説していく。

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