BPS(ビジネスプロセスサービス)のメリットと活用事例

BPS(ビジネスプロセスサービス)のメリットと活用事例

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前回は、金融機関を含む日本企業が直面する生産性低下・人員増加のジレンマと従来型ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)の現状・課題、そしてその進化形態であるビジネスプロセスサービス(BPS)の特徴について解説してきた。第2回目の今回は、BPSが持つ4つの強みと活用事例について紹介する。

  1. 効率化の実行性
  2. 抜本的な効率化のノウハウ・スキル
  3. 継続的な改善活動
  4. リスキル(再訓練)・余力の活用範囲の拡大
  5. グローバルネットワークを活用した事業継続能力の強化
  6. BPS活用事例:味の素株式会社の業務プロセス最適化支援
※本稿は株式会社アクセンチュアの許可を得て、転載・編集しています。

効率化の実行性

BPSが誇る大きなメリットの1つは効率化の実効性である。自社で業務改革を行う場合には、施策ごとに各部署間の調整が必要となり、稟議・承認プロセスに膨大な時間と手間がかかりがちである。また実際に取り組みを実施する際には、現場の反対や現行業務・ITインフラの制約などにより、当初期待していた効果・スケールを実現できないことが珍しくない。

一方、全社規模のトランスフォーメーションを一気通貫で手がけることのできるBPSの場合は、上流の戦略からシステムのデザイン・実行、オペレーションに至るまで組織を横断してアウトソーシングが可能である。そのため、業務部門・IT部門や現場との関係を広い視野で調整し、スピード・スケールを担保しながら効率化を進められる。

またBPSは長期契約を前提とする特色を活かし、アウトソーシングやシステム導入によって期待できる効率化効果を試算した上でプライシングを行う。そのため、初期・初年度に多くかかりがちな投資費用を契約期間全体で平準化することができ、より大きなコスト削減効果を享受できる契約スキームも提供可能である。

抜本的な効率化のノウハウ・スキル

従来型アプローチでは、現行の業務プロセスが前提となることが多く、自動化が可能な箇所へパッチワークのようにRPAを導入する“継ぎはぎ”の効率化になりがちである。このような方法で見込める改善効果は、多くても10〜20%にとどまることがほとんどだろう。しかし第1回の冒頭でお話したとおり、日本の金融機関が直面する生産性低下と人員増加のジレンマ、そしてさらに厳しさを増す経営環境を考えると、このような改善レベルでは決して十分と言えない。80〜90%といった高いレベルの自動化を追求しなければ、深刻な現状への対応が難しい。

BPSではこうした課題を踏まえて業務・品質の制約事項を根本から見直し、全社的変革を進めるために必要なプロセスをゼロベースで構築する。またAI・アナリティクスなどのデジタル技術を最大限活用し、サービスや継続的業務改善、人間・マシンの生産性などについて定量的管理を行なうため、現行業務の“圧倒的省力化”が可能となる。自社が単体で既存の制約を乗り越え、このような抜本的効率化を行うことは決して容易でない。その意味でも、豊富な知見とスキルを備えた私たちのような外部パートナーは、効果的な改革の推進に不可欠だろう。

継続的な改善活動

私たちはゼロベースの業務改革と同様、現場による継続的な改善の仕組みを重視している。日々のオペレーションの中から自発的に改善項目を見つけ、ITチームとコミュニケションを図りながら取り組みを実践するとともに、その効果を定量的に計測する。つまりPCDAのサイクルが、アクセンチュアのオペレーターにはしっかりと根付いている。また効果が確認できた改善については、単一チームだけでなく、プロジェクト全体、さらにグローバルネットワークの中で共有するため、最新かつ効果的なアプローチを継続的・積極的に取り入れる仕組みが確立されている。

更に、AI・アナリティクスなどのデジタル技術は日進月歩の進化を遂げているが、これらデジタル技術による業務改革は、その性質上、複数年にわたる“Journey”になる。このことが決定的に重要な意味を持つ。

つまり、デジタル業務改革を伴うこれからのオペレーションサービスの実現は、ERP導入のような一度の改革でのBig Bangではなく、日進月歩のデジタル技術を短期サイクルで試行錯誤しつつ展開していくJourneyとなり、それにより継続かつ連続的な業務改革を実現していく必要がある。

リスキル(再訓練)・余力の活用範囲の拡大

第1回でもお話ししたとおり、生まれた人材の余力をいかに活用するか、人材アロケーションのためのスキルシフトをどう実現するかという側面は、改革を進める際に大きな課題となる。

また、前述したデジタル技術の活用範囲の拡大の側面からも、連続的な社員の“リスキル(再訓練)”と“再配置”を行っていくことが必要となる。つまり連続的な改革の間には、社員の意欲喚起にも努めなければならない。社員への影響を恐れていては、RPA等のデジタル技術導入が「社員の福利厚生化」し、取組みの効果が生まれない。その完遂には、強力なチェンジマネジメントが必要である。

BPSはこうしたニーズに応え、余力活用の機会やそのための方法論、アセットもサービスの一環として提供している。

機会の提供

アクセンチュアは、アウトソーシングの分野で幅広いサービスを展開しているため、従来の延長線上から新たな挑戦となるオペレーションまで、多様な機会とポジションの提供が可能である。

トレーニング

これまで幅広い現場で培ってきたトレーニングの方法論・アセットだけでなく、OJTトレーニング(武者修行)の現場でスキルを磨く機会も提供している。顧客企業の人材が出向といった形で現場経験を積み、自社に戻った際にリーダー人材としてその知識・ノウハウを活用するといった仕組みも実現可能である。

モチベーションの向上・維持

私たちは、メンバーが高いモチベーションを維持しながら働ける環境・制度の整備を重視している。環境の快適性はもちろんのこと、日々の改善のアイデアが出やすく、アイデアが出た時にコミュニケションを取りやすい空間を実現することは、オペレーションの安定化と高度化に欠かせない要因である。

グローバルネットワークを活用した事業継続能力の強化

今回のコロナ危機では、不測事態の発生に備えた事業継続リスク管理の重要性が改めて浮き彫りとなっている。アクセンチュアは危機発生以前からこうしたリスクへの対応を視野に入れており、業務を他の拠点へ移転できる柔軟な体制を構築している。全世界に60以上あるオペレーションセンターは国も言葉も異なるが、同じメソドロジーと業務遂行体制を共有している。平時はもちろん、いつどこで不測の事態が生じても高度かつ安定したサービスを提供できる能力を備えている。

市場環境がさらに厳しさを増す中、業務のトランスフォーメーションが不可避であることは、経営者のほとんどが認識されていることと思う。しかし金融機関の多くは、チャレンジの大きさに見合った取り組みのスピード感・スケールを必ずしも実現できていない。事業の根幹を担うオペレーションを自前で保有・管理するというのは自然な発想である。しかし自前での業務運営と、絶え間ない変革・人材のスキルシフトを高いレベルで両立させるという考え方が限界を迎えつつあるのも事実である。DXの実効性・確実性を高めながら、人材のキャリア・スキルにまつわる問題へ総合的に対応可能なBPSは、大きな変化に直面するこれからの時代に極めて有効な選択肢となるはずである。

BPS活用事例:味の素株式会社の業務プロセス最適化支援

ここでは、アクセンチュアと共に合弁会社を設立するという形で自社リソースの有効活用と業務コスト削減を実現した、味の素株式会社の事例について紹介する。

同社では経営基盤のさらなる強化に向けた取り組みの一環として、グループ全体での生産性向上に長年取り組んできたが、期待したような抜本的効果がなかなか実現できないという悩みを抱えていた。アクセンチュアがそのソリューションとして提案したのは、合弁会社の共同設立(今年4月に発足)にてアクセンチュアが有する消費財業界におけるデジタル変革の知見、および、BPSの提供実績を活かし、RPA、アナリティクス、AIをはじめとするデジタル技術の活用やBPRによって、業務プロセスの全体最適化を図り、抜本的な業務の高度化・効率化を進め、さらに、こうした取り組みを通じ、オペレーション業務の専門性向上や付加価値創出に向けた人財の育成をより一層強化するという取り組みとなる。合弁会社においては、、同社が子会社として持つ既存シェアード・サービス・センター(SSC)の人員に加え、DXの推進に必要なアクセンチュアのマネジメント・オペレーター人員もプロジェクトに参加し、また弊社の持つオフショアセンターとの連携をとりながら、効率化の推進プラットフォームを構築している。

こうした取り組みを通じ、合弁会社の社員はアクセンチュアがこれまで培ってきたノウハウ・知見を肌で感じ、海外オフショアセンターとの両棲的なコラボレーションも体験することが可能となり、純粋な理論や単なるOJTという枠組みを超えた、知識習得・スキルアップの機会を得ることとなる。BPSは抜本的な生産性向上と業務改革はもちろん、今後の価値創出を担う高いレベルの人材育成にも大きく貢献している。

アクセンチュア金融サービス本部では、より早く最新の動向や弊社のインサイトをご紹介するために、金融業界向けの「金融ウェビナー」を継続的に開催している。ウェブを使ったバーチャルな1時間のライブセッションで、パソコンやモバイルから簡単に参加でき、匿名で質問することも可能。詳しくはこちら

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