ウクライナ侵攻で変わる米国のサプライチェーン ~「サプライハーネス」の構築~


ワシントンにおいて、ロシアのウクライナ侵攻は大きな衝撃を与えた。冷戦後の国際秩序の崩壊とまで危惧されているウクライナ情勢は、改めて地政学的リスクの重要性を国際社会にまざまざと見せつけている。それだけではない。グローバル化が深化した世界での国際紛争は、グローバルサプライチェーンの脆弱性も露わにすることとなった。
本稿では、米国におけるサプライチェーンの調査から、サプライチェーンに関するこれまでの施策、および今後の展望について解説していく。

目次

米国サプライチェーンの調査

このサプライチェーンに関する調査で特筆すべきことは2点ある。1点目はこれら調査の取り纏めを担ったのが、サリバン国家安全保障担当大統領補佐官と、ディーズ国家経済会議議長という、安全保障と経済という重要な政策立案を担うトップということである。国家安全保障補佐官が纏め役に据えられているということは、サプライチェーンは安全保障の問題であるという事を内外に印象付ける結果になっている。米国では伝統的に安全保障に関連するセクターは驚異的な進歩を見せることが多い。

2点目は、上記の通り本腰を入れている証左として、報告書が期日通りに提出されていることだ。米国省庁は議会での立法や大統領令により、夥しい数のレポート作成が求められているが、中には期日通りに提出されないレポートも少なくない。その中でサプライチェーンに関する報告は、期限となる大統領令から100日、1年とそれぞれほぼ期限内に報告されている。特に1年の報告書は、ロシアによるウクライナ侵攻が正に始まった日に提出されている。もちろん、報告書公表は事前に予定されていたのであろうが、21年末から緊張が高まっていたウクライナ情勢の分析と同時に、このサプライチェーンの報告書作成作業も進められていたことは注目に値する。

阿部 賢介 氏
寄稿
丸紅米国会社ワシントン事務所
政策経済調査マネージャー
阿部 賢介 氏
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