金融業界の環境変化と、銀行の取り組み実例から考える「顧客に届けるべき新しい体験」


【PR】社会全体のデジタルシフトが急速に進み、金融業界を取り巻く環境も変化しています。目まぐるしい変化の中で、銀行が届けるべき顧客体験はどのように変わっていくのでしょうか。Japan Digital Design株式会社(以下、JDD)代表取締役CEOの河合祐子氏と株式会社三井住友銀行(以下、SMBC)リテールIT戦略部の大内伸幸氏に、事例を交えながら銀行の取り組みをお聞きします。モデレーターはトレジャーデータ株式会社の堀内健后が務めました。

目次

顧客にとって必要な情報を適切に届けるための3つのポイント

堀内:SMBCでの顧客体験向上の取り組みについてお聞かせいただけますか。

大内:お客様の課題はおそらく、今も昔も「情報」です。昔は情報量が求められていましたが、今では量が足りてきたため、情報の「質」が求められているのではないでしょうか。「この情報は信ずるに値するのか?」というのが課題になっているわけです。

金融商品は目に見えるものではないので、自分に合った商品なのかどうか分かりづらい。生活用品のように欲しいものを簡単に想起したり、気軽に購入を決断したりするのは難しいですよね。判断のためにはさまざまな情報を必要とします。

堀内:そこで金融機関側から信頼できる情報を提供していこう、と。

大内:はい。これまで銀行や証券会社は、オフラインでお客様にお会いして直接お話を伺い、それぞれの課題に合ったオーダーメイドの提案を行うことで、分かりづらさやハードルの高さを乗り越えてきました。しかし消費者がデジタルシフトしている今、これまで通りオフラインの接客だけでやっていけるはずはありません。

そこで我々としては、データを用いた「パーソナライズ」がマーケティングにおけるひとつのキーになるのではないかと位置づけ、取り組みを行ってきました。

堀内:顧客が抱える課題も、必要な情報も多様化し、個々人に合った情報を提供するのは簡単なことではないと思います。SMBCではパーソナライズ実現のためにどのような取り組みをしているのでしょうか?

大内:パーソナライズの実現にあたっては、「ニーズが発露したタイミング」「ニーズのレベル感」「提供すべき情報」の3つを正しく把握する必要があると考えています。

まずは1つめの「タイミング」。資産形成をしようと考える瞬間は人それぞれです。ニーズがないタイミングで情報提供をしてもノイズにしかなりません。

堀内:タイミングを読まずにメールを出しすぎてしまうと鬱陶しがられる、というのはよくありますね。

大内:タイミングが合わないのと同様に、レベル感が合わなくても刺さりません。ニーズが発露したタイミングで、レベル感に合わせた情報提供をしていくのが重要です。

その上でどんな情報を提供するのか。もちろん理想は「お客様が求めている情報」ですが、タイミングやレベル感も含め、銀行が従来持っていたデータだけでこれを把握するのは不可能なんです。

やはりどうしても、オンライン上で取得した顧客データを統合・分析して顧客理解を深める必要があります。そのためにTreasure Data CDPを導入してデータ基盤を構築しました。

「売りたいものを売る」から、顧客理解へ

河合:大内さんのお話はよく分かります。私も実体験から、金融機関の顧客理解とターゲティングに課題を感じています。

私を含め、50〜60代は退職金をもらう方がそれなりに出てくる世代です。私も1年半前に前職の退職金を受け取りました。ここには明らかに投資ニーズがありますよね。でも、日本にはこの世代の投資ニーズに応えられる金融サービスはまだ少ないんです。退職金でちょっとした金額を受け取っている層はたくさんいるけれど、彼らを個別にトラックして最適なタイミングでアプローチすることは、今までは十分にできていないと感じます。

堀内:オフラインデータでは、入金履歴を見て「退職金らしきお金が入金された」と分かるくらいですね。

河合:そうです。でもその前の段階でオンライン行動のログを分析すれば、たとえば特定の商品やサービスの購入を検討しているといった推測もできますよね。

そうしたデータからピンポイントにターゲティングをした情報をプッシュすることで、顧客が望む情報を手元に届けることができ、結果として潜在的ニーズが顕在化するかもしれません。

堀内:先ほどの大内さんのお話にもあったように、50〜60代の「タイミング」「レベル感」「発信すべき情報」を把握して情報発信を行う必要がありそうです。

河合:レベル感についてのお話は頷きながら聞いていました。ユーザーとしては、金融機関が自身の売りたいものを売ってくるときって一番嫌だし買う気にならないんですよ。これは、まだまだありがちなアプローチですよね。

大内:その通りですね。弊社を含め、今までの金融機関では商品ベースのアプローチが多かったと思います。これからはお客様の文脈に合わせ、体験ベースで商品やサービスを提供していく必要があります。

堀内:文脈を考慮して情報提供をしないと、売りたいものの中からせいぜい興味に合ったものを提案するだけになってしまうんですね。

河合:これまでは「50代」のような大きな箱で括っていましたが、その人にとってジャストなタイミングは52歳かもしれないし54歳かもしれません。大きな箱ごと処理していたところへ、デジタルシフトによって取得できるデータが増えたことで、箱の中にある個々の粒にフォーカスできるようになりました。

これまで箱どころか大きな段ボールぐらいで考えていた金融業界にとっては、これはなかなかのギャップなんですよね。

トレジャーデータ株式会社
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