【連載】新たなフェーズに入った新型コロナウィルスとの戦い~新型コロナについて知っておくべきこと(その2)

【連載】新たなフェーズに入った新型コロナウィルスとの戦い~新型コロナについて知っておくべきこと(その2)

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  1. 新型コロナの投薬治療 ― 厚労省が基準・目安を示している
  2. 曖昧な入院基準と明確な退院基準
  3. 保健所による行動履歴、濃厚接触者の特定

新型コロナの投薬治療 ― 厚労省が基準・目安を示している

新型コロナは未知のウィルスなので、特効薬はないし、標準的な治療方法はないだろうと勝手に思い込んでいた。

都立広尾病院に入院すると、CT、レントゲン、血液検査など各種検査が約1時間で終わり、医師が病状を把握すると、直ちに投薬治療の方針が決まり、リスクに関する説明も行われた。病状等に応じて、標準的な投薬治療の方針はすでに決まったものがあるのだ。

現場の医師が、個別に、総合判断をして投薬治療の方針を決めるのだが、これまでの治験や現場での経験を踏まえて、病状や年齢、基礎疾患の有無などに応じて、厚労省が投薬治療の基準・目安を示している。対象者や投薬量・投薬日数まで細かく決められている。

たとえば、私の場合、入院初日にアビガン(200㎎×9錠)の投与(服用)を受けた。投与量が決まっているので1回の投与で終了となる。多くの患者が、副作用の説明を聞いて了承したうえで、同様の投与を受けている。

レムデシビルは、薬価の高い点滴として知られている。おそらくは、そのために、投与の対象者が高齢者(60歳以上)、基礎疾患がある者などに限定されている。私は60歳なので、レムデシビルの投与を受けたが、同室の若い患者には投与されていなかった。投与量・投与日数も厚労省の基準で決められいる。私の場合、その基準通り、点滴100㎎を5日間で終了した。最大でも10日間の投与とされているようだ。

ステロイド剤の投与については、厚労省の基準・目安もあるが、ある程度、現場の医師の判断・裁量に任されているようであった。私の場合、デカドロン錠(6㎎)を10日間の投与(服用)を受けて終了となった。

病状等に応じて、標準的な投薬治療が決まっていることには安心を覚えたが、反対に言うと、標準的な投薬治療では、症状が回復せずに、重症化してしまうと、その後の医療は、気管挿管やECMOなどによる生命維持が中心となる。

なお、次々に変異種が生まれる中で、現行の標準的な投薬治療が有効ではなくなる可能性も否定できない。そのときは大変なことになる。投薬治療を一から考え直さなければならない。

曖昧な入院基準と明確な退院基準

入院治療にするか、ホテル療養にするかは、保健所(医師)のヒアリングによって決まる。基本的には、38度を超える高熱が続いているかどうかと、息苦しさ、咳など本人の自覚症状を聴いての判断となる。

しかし、既述の通り、新型コロナの初期段階では、息苦しさ等の自覚症状がなく、肺炎が進むケースが多い。パルスオキシメータを家庭に常備していれば、酸素飽和度の数値が情報として増えるが、その程度の情報では、患者の病状を把握したことにはならず、入院を要するかどうか、不完全な判断にならざるを得ない。

患者の病状を把握し、入院をすべきかどうかを判断するためには、医師による聴診、CT、レントゲン、血液検査などを救急外来等で行う初期医療の態勢整備が急務である。

一方、退院基準は、厚労省によって明確に定められている。退院基準は、「完治」ではなく、「他人に感染させるリスクがない」と判断されたことである。医師が、聴診、レントゲン、血液検査を行い、患者の症状を総合的にみた結果で判断される。

現実には薬の投与をやめて、数日間、症状の悪化がみられなければ、退院が決まる。私の場合は、薬の投与をやめて、聴診、レントゲン、血液検査を行い、3日後に退院が決まった。

レントゲンでは、肺には白い影が残っていた。退院後も1か月以上、白い影が残ることもあると言われた。PCR検査は行わない。新型コロナウィルスの残骸があるので、陽性判定されてしまうからだと言う。退院する者が、ウィルスを出していないかどうかを検査する方法は、まだ確立していないようだ。

新型コロナの患者は、毎日、搬送されてくる。いつまでも症状が落ち着いた患者に、貴重な病床を占有させておくわけにもいかない。研究論文や臨床経験を根拠に厚労省が退院基準を定めている。

ときどき、空咳が出る状態での退院者もいる。私も病状が回復してくると空咳が増えた。本当にウィルスは出ていないのだろうかと疑問を感じることもあった。

個人的には、職場への復帰は、まず、テレワークで行うのが良いと思う。PCR検査で陰性になってからオフィスに出勤する方が、職場の同僚も安心して受け入れられるだろう。

保健所による行動履歴、濃厚接触者の特定

PCR検査で、新型コロナ陽性と判定されると、保健所から電話がかかってくる。保健所は、本人に体温、息苦しさ等の自覚症状を確認し、入院治療かホテル療養かを判断した後、行動履歴や濃厚接触者に関するヒアリングを行う。

行動履歴や濃厚接触者は、プライバシーに関するため、保健所のヒアリングは極めて慎重に行われる。あくまで本人の自発的な発言を待つ姿勢に徹していた。たとえば、会社名・所在地に関しても「所属の会社から、他の陽性者の発生報告が上がってくる可能性もあるので、よろしければ、教えていただけないか」との言い振りであった。濃厚接触者についても、本人の申し出にもとづいて特定し、濃厚接触者への連絡も本人に行ってもらうのが基本のようだ。

まず、発熱した日などから「発症日」を特定する。「発症日」からさかのぼって2週間程度の「行動履歴」を確認する。感染経路を把握するため、出勤日、在宅日、会食の有無、休日外出先を確認する。職場、家族に体調不良者がいないかも確認する。

次に、発症日以降と発症日以前の2日間を「濃厚接触期間」として特定する。「濃厚接触期間」に、会食をした者、マスクを着けずに会話した者を特定する。このとき、職場でのマスク着用が義務付けられているか、食堂がある場合は仕切りがあるか、食事はひとりでとっているか、複数名でとっているか、食後の会話はマスクを着けていたかなども確認のうえ、「濃厚接触者」として認定する。

保健所によるヒアリングは、慣れていることもあるのだろうが、ポイントを突いて手際よく進む。時間にすると、10~20分程度で終わる。新規感染者が増えているので、どんどん捌かないと追いつかなくなるのだろう。

新型コロナ陽性と判定されたとき、関係者に迷惑をかけるのではないかと心配になる。感染させている可能性がある関係者には、保健所にいわれるまでもなく、自ら連絡を入れる必要があるだろう。そのとき、保健所の「濃厚接触期間」、「濃厚接触者」の特定方法は参考になる。

寄稿
正太郎(しょうたろう)
金融、ガバナンス、リスクマネジメント、監査の専門家。
金融専門誌にコラムを執筆。