2021年9月22日(水)開催 MANAGEMENT WEBINAR「グループ経営インフラとしてのDX体制構築」


2021年9月22日、セミナーインフォ主催 MANAGEMENT WEBINAR 基調講演にてKDDI株式会社 最勝寺 奈苗 氏にご登壇をいただき「グループ経営インフラとしてのDX体制構築」についてご講演いただいた。

グループ経営インフラとしてのDX体制構築

最勝寺 奈苗 氏

基調講演➀
【講演者】
KDDI株式会社
執行役員 コーポレート統括本部 経営管理本部長
最勝寺 奈苗 氏


<KDDIについて>

当社は、携帯電話事業をメインに企業として成長を図り、現在では通信とライフデザインの融合をコンセプトとして、eコマース、金融、電気、教育など、幅広いサービスをセットで提供している。昨年10月1日には、子会社のUQコミュニケーションズからモバイル事業を統合し、KDDIでauとUQ、そして、新ブランドのpovo、子会社ではJCOMやBIGLOBEなど、マルチブランドでモバイル事業を展開している。

事業戦略の方向性としては、5G時代に向けたイノベーションの創出、通信とライフデザインの融合、グローバル事業のさらなる拡大、ビッグデータの活用、金融事業の拡大を積極的に推進し、グループとして成長を図ることで、サステナビリティ、社会課題の解決に取り組み、社会の持続的成長に貢献する会社を目指している。

また、当社の企業価値の取り組みとして、財務・非財務、両面の強化を推進している。財務においては、中期経営計画の推進に加え、バランスシートのスリム化や、非財務においては、ESG、およびSDGsの取り組みとして「KDDI Sustainable Action」を掲げ、災害対策、通信基盤の強靭化、脱炭素を含めた地球環境の保全、多様性の尊重などに努めている。

<KDDI経営管理の体制と採算管理について>
経営管理本部の組織・体制について、9月1日現在で216名、4部1室の体制で構成されており、6月末で連結子会社157社、持分法適用関連会社40社といった会社群をカバーしている。2019年4月に新会計システムに移行したことを契機に本部組織を再編し、業務改革と本部全体のデジタル化を推進するDX推進部を新設した。また、昨年の4月にはKDDIの会計審査機能を経理部から移管し、グループのコーポレートシェアードサービス機能の拡充を進めている。

<KDDI採算管理の概要>
KDDIは、全部門が売り上げ・経費からなる採算管理、部門別採算管理を行なう事が特徴であり、各階層に応じた取りまとめと分析、レポーティングを行っている。採算管理において、最も重要なポイントが計画精度であり、計数計画は、持続的成長に向けた長期ビジョンを実現するために戦略を具現化した実行計画と位置付けられている。対外的に開示する年度業績目標の基となる年度計画と、そのブレークダウンにある月次計画は、実績との乖離要因について、厳しく分析を求められる。これは、社員一人一人の行動が、会計数値、採算実績に結び付いており、計画の乖離要因を把握していることが各組織の企業活動のコントロールができているという考え方のためだ。

また、KDDIでは予算という概念はなく、年度計画はマスタープランと呼び、売り上げは、最大限の努力をして到達することができる目標値を掲げており、費用や設備投資は、効率化・合理化を盛り込んだ業務遂行に最低限必要な資質として月単位で作成される。よって、利益は現在のトレンドから予想される結果よりも高く設定されている。計画は施策・案件ごとの積み上げのため、枠取り的な予算のように使い切るという概念もなく、足元の売り上げが計画よりも下回る場合、たとえマスタープランで織り込んでいた経費でも削減する一方で、計画になくても、将来の成長のために、どうしても必要となった経費や設備投資の執行は可能である。

<KDDIの業績計画>
KDDIの業績計画としては、年次計画としてのマスタープランの他、およそ3カ年の計画である中期計画を策定しているが、内部では、毎年ローリングで作成している。環境変化が著しい業界のため、マスタープランは期初に作成し、半期で詳細の見直しを行い、修正マスタープランとして、下期のターゲットを変更している。月次でも当月の見込みと次月の予定を見直し、通期の業績見通しとして年度計画を修正、12月から翌年1月にかけて、対外開示の業績予想の確度を検証するため、業績シミュレーションとして、より精緻な着地見込みを作成し、年度末の決算締めに向けた準備をしている。

当社では、社員一人一人が、あたかも経営者のように会計数値に関心を持つことが重要であると考え、管理単位である部門ごとに経費管理担当者が、月次単位で自部門の実績分析や計画更新を行い、年次でのマスタープランの達成を目指している。

<業務改革の取り組みとDX>
経営管理機能の役割には守りと攻めがあり、守りを固めると同時に、自動化・効率化を推進し、攻めの役割へ比重をシフトしていく必要がある。DXの推進によって、常に進化し続けるビジネスモデルの変革を図る必要があると考えている。
当社の業務改革は「プロジェクト:To-Be」とネーミングしており、2014年9月の業務診断フェーズから始まり、2015年12月にプロジェクトの立ち上げ、主には財務会計分野の変革に取り組んでいる。2019年4月に新会計システムをリリースし、子会社のシステム変更、シェアードサービスセンター(SSC)によるグループ業務の集約、管理会計システムの利便性の改善、人財育成の取り組みなど現在も続いている。また、新会計システムのリリースに合わせて、新しい業務の在り方に向けた取り組みを推進するDX推進部を本部内に新設をした次第だ。

業務の進め方のみならず、組織体制や企業風土を変革するDXを成功させるには、デジタル化を着実に進めていく必要があり、その通過点として、第1ステップにデジタイゼーション、第2ステップにデジタライゼーションの2つがあり、当社は第2ステップの直前まで取り組めていると認識しており、真のDXの実現を目指し、努めている。またDXの推進目的は、デジタルの力を借りて業務の可視化と標準化を進め、BPRによって変革し、SSCによってグループ全体での効率性を高め、人財育成も果たし、企業価値を高めることであると考えている。

<グループ経営管理強化に向けた取り組み>
KDDIでは、増加する国内外の子会社の連結ガバナンス体制として、経営機能のCEOライン、モニタリング機能の内部監査ライン、牽制機能の外部監査ラインに加えて、測定機能のCFOラインを明確にしており、国内の主要な子会社、ならびにM&A子会社には、経営管理本部よりCFOを派遣している。また、目が届きにくい海外子会社については、統括拠点、ならびにミャンマー、モンゴルの携帯電話子会社に、人事権を持った本部所属のCFOとCFO補佐を2011年から順次派遣し、日常的な子会社不正の防止、早期発見に努めている。

また、海外子会社については、2015年度からCAAT手続きも導入し、仕訳データを取り込み、会計処理の詳細なチェックも実施している。国内子会社については、業務改革プロジェクトの一環で、会計システムの集約を行うとともに、小規模な会社の会計業務を優先的にDX推進部内のSSCに集約を図っており、子会社業務の標準化・デジタル化を進めて、リソースの集中化・効率化、ガバナンス強化の実現を目指している。

また、グループ経理業務のシェアードサービスをコーポレート業務全般に拡大し、子会社向けのサービス拡充とグループ業務全体の効率化を図る計画である。

<新シェアード・サービス構想について>
新シェアード・サービス構想については、デジタルをフル活用した新しいオペレーションモデルの構築を通じた、KDDI、およびKDDIグループのコーポレート機能の変革を促し、人財輩出、還流ハブとしてのKDDI版ジョブ型のコーポレートCoE集団の実現を目指している。

コーポレートSSCのミッションについては、「本体と子会社の事業成長を支援」「デジタルをフル活用したインテリジェントオペレーション」「多彩な現場実務を経験し、スキルと利他の心高める人財還流のハブ」の3つを大きな柱としている。

現在は、SSCの財務会計領域にとどまらず、子会社に派遣している出向者、CFOの業務領域も来年度に向けて見直し、派遣するCFOのサポートを行う先端部門を新設して、教育、業務支援、評価、モニタリングを行うことを計画している。
子会社、ならびに子会社CFOを事業親元本部と連携しながら、先端部門とシェアードサービスセンター、本体コーポレートが三位一体となってサポートすることで、子会社の経営基盤を強化し、グループの成長を支えていきたいと考えている。

<人財ファーストへの変革>
最後に、人財育成について、会社の最大の資産は人であるという考えの下、KDDIは、人財ファースト企業をスローガンに掲げて、現在、人事改革が進行している。クラウド人材管理システム「カオナビ」を2020年に導入、社員のプロフィールや社員の経験分野、希望分野などの経験を可視化し、このデータを基に、一人一人のメンバーのキャリアプランを議論し、その結果をローテーションに反映している。


 
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