2021年9月22日(水)開催 MANAGEMENT WEBINAR「ネスレにおける財務管理部門の役割と新たな課題へのチャレンジ」

2021年9月22日(水)開催 MANAGEMENT WEBINAR「ネスレにおける財務管理部門の役割と新たな課題へのチャレンジ」

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2021年9月22日、セミナーインフォ主催 MANAGEMENT WEBINAR 基調講演にてネスレ日本株式会社 中岡 誠 氏にご登壇をいただき「ネスレにおける財務管理部門の役割と新たな課題へのチャレンジ」についてご講演いただいた。

ネスレにおける財務管理部門の役割と新たな課題へのチャレンジ

中岡 誠 氏

基調講演②
【講演者】
ネスレ日本株式会社
執行役員 財務管理本部 戦略事業開発コパイロット部長
中岡 誠 氏

 

<ネスレについて>
ネスレは、創業してから155年間、世界186国でビジネスを展開している。2,000を超えるブランドを持ち、376の工場、従業員数は27万3,000人規模で、食品飲料会社としては世界1位の会社になる。

その中で、ネスレ日本の位置付けは、ネスレにおけるマーケットシェアとして、14~16位ほどであり、グループの中では、イノベーションをドライブするマーケットだと捉えられている。

当社がビジネスを行うにあたり、一番大きな目的であるパーパスは、現在、そしてこれからの世代のすべての人々に対し、食の持つ力で、全ての人々の生活の質を高めることに貢献する事である。このパーパスと合わせ、ネスレが大事にしている価値観は、敬意に根差しており、全てのものに対する敬意することである。これらを根底に、ビジネスを進めている。

また、ネスレが影響を与える社会分野については、健康で幸せな生活の実現、困難に負けない活力のあるコミュニティの育成、未来の地球のための資源と環境の保全など、それぞれに良い影響を与えてビジネスを行う事を考えている。

<財務管理部門について>
財務管理部門は、各部門に対して適切なアドバイス、あるいはオペレーションへの助言をすることによって、それぞれのビジネス部門が最大限の力を発揮し、トータルの会社のパフォーマンスを加速させる、そういうことに貢献する役割を担っている。

財務管理部門の機能は4つに分けることができる。1つ目が、「コパイロットビジネスパートナー」であり、各ビジネスあるいはファンクショナル部門のサポートをし、それらのパフォーマンスを最大限に発揮させるための役割を担う。2つ目が、「スペシャリストサービス」だ。専門性の高い税務や年金、それからトレジャリー、オーディットの機能を担う。3つ目が「スケーラブルビジネスサービス」であり、一般的な会計、経理、などの部門としての役割である。4つ目は、「ディシジョンサポートサービス」であり、1つ目のコパイロットと特に密接にリンクし、意思決定するために必要なデータ・情報を各コパイロットに提供する、あるいはCEO、CFOに対するマネジメントに対して提供する機能を担う。

その中でも、スペシャリストサービスやスケーラブルビジネスサービスなどの、トランザクション業務においては、シェアードサービス化が進められており、会計・経理部門の業務はフィリピンのマニラにシェアードサービスセンターに委託している。また、資金管理や、M&A部門なども、セントライズされており、このような集約ができるような業務、プロセス部門はデジタルによる効率化を突き進められる、ポテンシャルの高いエリアであると考えている。

<コパイロットの役割について>
コパイロットとは、各部門の戦略的な考え方、長期的な方向性に対し、戦略立案支援とコミュニケーションを図る人である。例えると飛行機における、副操縦士であり、飛行機を操縦する機長の横に座り、フライトのサポートを支援する人だ。コパイロットの役割としてはいくつかあり、ビジネスをドライブ、コミュニケーションを促進して影響力を発揮するなど、機能的役割が8項目ほどある。

これらを推進させるためには5つの考え方で、業務を遂行する必要がある。1つ目が、信頼関係を築く。2つ目が、暗黙の前提条件や制約条件を探し、認識する。3つ目に、当たり前にとらわれないよう素人を貫き通すという事であり、4つ目がチャレンジすることである。最後に、製造、物流、人事、などの他部署や他会社などと協働できるようつなげることが大事だと考える。

ネスレのFinance Leaderに求められるものとして、より価値創造を生み出す事である。それから組織としての最大限に力を発揮するため、コミュニケーションを高めて、エンゲージメントを高めることである。また、デジタル化とデータの戦略的活用がますます重要になってきており、時代も技術の変化に合わせ、対応していく事が求められている。

<株主価値の創造とCSV(共通価値の創造)>
サステナビリティの投資への動きをファイナンスとしてもサポートしていく必要があり、具体的に、ネスレグループでは気候変動に対して、2020年から2025年までに32億スイスフランの投資を計画し、サステナブルなパッケージに関しては、15億スイスフランほどの投資を予定している。

また、サステナビリティへの投資と収益性の高い成長の両立を目指しており、コスト削減、新規ビジネスへの成長、プロダクトミックスの変更などにより、利益率にして70bpsの原資を確保し、より多くを成長とサステナビリティへ投資していく方針である。

これらを実現するため、コパイロットに与えられた課題としては、収益を持続的に改善する事であり、売上の増加、PLの構造の効率化することである。投資と収益の持続的改善の両輪をバランスさせるためには、デジタルに対する効率化を求めていき、バリューチェーンのコスト削減を実現する必要がある。

<ネスレ日本におけるデジタル変革>
ネスレ日本の主なデジタル変革については、1990年代は「BECA」というプロジェクトを通じ、日本の属するゾーン「AOA」が、新しいERPを導入した。2000年代にはグループ共通のプロセスとして、10年ほどかけ、ERPシステム「GLOBE」を導入。2010年前後からECのビジネスオポチュニティが大きくなり、新しいチャネルとしてのeコマースができ、新たなビジネスモデルとして、ネスカフェアンバサダーの開発をした。

また、プロセスの効率化・標準化に関しては、2010年代の後半にRPAやBIを導入し、従来のプロセスから、レポーティングのプロセスなども効率化を図っている。今後は、今ある利用可能なデジタルの機能、あるいは技術を使い、ビジネスを変革させるためにチャレンジしていく次第だ。

従来までは、グローバル、標準化、クローズドな仕組み、大量に処理する、あるいはロジカルに考えた見方を推し進めてきたが、デジタル時代においては、カスタマイズされたローカルやオープンに外部リソースの利用や、独自性の高いものなど生まれてきており、どのように注力し、ビジネスを進めていくかが重要である。
当社は、DXを活用し、従来までの方針とデジタル時代に即した方針の両方を追求する形でビジネスを進めていく。