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FINANCE FORUM IT革新とウェルスマネジメントの未来<アフターレポート>

セミナーインフォ主催セミナー「FINANCE FORUM ~IT革新とウェルスマネジメントの未来~」が2017年3月15日に都内で開催された。AIやブロックチェーン技術の活用をはじめとしたFinTechの進展、および資産運用機能の重要性の高まりを受け、ウェルスマネジメントビジネスを取り巻く環境は大きく変化している。約300人の参加者は、監督官庁や金融機関の取り組み、テクノロジー革新の最新動向などの講演を熱心に聞いた。セミナーの概要を紹介する。

FINANCE FORUM IT革新とウェルスマネジメントの未来<アフターレポート>
  1. 国民の安定的な資産形成と顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)」について
  2. 最新テクノロジーがもたらすウェルスマネジメントの変革
  3. 人とロボアドバイザーの融合がもたらす新たなアドバイスの可能性
  4. 総資産と税務を考慮した次世代型ウェルスマネジメントの実際
  5. 新しい方法で顧客接点の強化を可能にする次世代型ウェルスマネジメントサービス “Salesforce Financial Services Cloud”
  6. みずほ銀行の非対面顧客向け資産運用アドバイスサービス「スマートフォリオ」について

国民の安定的な資産形成と顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)」について

中島 淳一 氏
基調講演
【講演者】
金融庁 総務企画局 審議官
中島 淳一 氏

不十分な説明や利益相反の恐れ

家計の安定的な資産形成と、経済の持続的な成長に資する、より良い資金の流れを実現するにはどうすればよいか。金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループ(WG)では、従来の取り組みを深化させるとともに、販売、助言、商品開発、資産管理、運用といったインベストメント・チェーンに関係する金融事業者が、「顧客のベスト・インタレスト(最善の利益)のために行動する」という原則を定着させることが課題と認識している。

すでに欧米各国では、インベストメント・チェーンの参加者を対象としたフィデューシャリー・デューティー(受託者責任)や金融消費者保護に関するハイレベルな原則が設けられている。日本でも、フィデューシャリー・デューティーへの取り組みが見られるようになった一方で、金融庁のもとには、各種検査や相談機関などを通じてさまざまな疑問や意見が届いている。

リテール分野では、仕組みの難しい商品の販売に対する指摘が多い。例えば、外貨建て一時払い年金保険は、元本部分は海外債券、変動利回り部分は海外の投資信託で運用し、さらに為替変動リスクを取りつつ保証機能も搭載した複雑な構造ながら、投資経験が必ずしも豊富でない顧客に推奨・販売されているようだ。

デリバティブを組み込んだ仕組み債や仕組み預金、資産運用を金融機関に一任するファンドラップのようなものについても、顧客の理解を十分に得ることなく売られているとの指摘が寄せられている。

金融審議会市場WGでは、セールス現場での顧客対応のほか、販売会社と商品提供会社の関係が顧客に不利益を強いる事例についても議論している。

代表的なものは、投資信託や保険などの販売対価である手数料をめぐる利益相反問題だ。販売会社が、顧客の利益に関わらず、商品提供会社から支払われる手数料の高い商品から推奨するケースなどが該当する。投資信託の販売・運用が同一グループの場合は、販売会社が顧客よりグループの利益を優先し、同一グループ内の運用会社の商品を勧める可能性があるだろう。

収益性向上に資する取り組み

このような金融審議会市場WGでの議論と報告を踏まえ、金融庁は2017年1月に「顧客本位の業務運営に関する原則(案)」をまとめ、公表した。原則(案)はプリンシプルベースとし、あえて厳密な定義は設けなかった。原則(案)の対象も、インベストメント・チェーン関係者を念頭には置いているものの、金融庁の所管業種に限定していない。原則(案)を受け入れようと考えている業者は受け入れていただきたいというスタンスだ。

原則(案)は7項目からなるが、第1は受け入れる人は方針を策定して公表することと改めて明記したものなので、具体的な取り組み内容は残りの6項目となる。

原則(案)の目標は第2項目の「顧客の最善の利益の追求」であり、それには「利益相反の適切な管理」(第3)、「手数料等の明確化や重要な情報の分かりやすい提供(情報の非対称性の解消)」(第4、第5)、「顧客にふさわしいサービスの提供(適合性の原則)」(第6)が求められ、原則(案)の実現には「従業員に対する適切な動機づけの枠組み等」(第7)が必要としている。

金融事業者の中には、「原則(案)の取り組みはコストばかりかかる」との意見もあると聞く。しかし我々は、原則(案)の理念を汲んだ取り組みを実施することで、顧客基盤が確実になると考える。今まで預金だけだった顧客に、もう少し手数料の取れる投資性の商品を長期にわたって提供できるようになるなど、金融事業者の収益性の向上に資するとみている。

原則(案)は、言ってみれば金融事業そのものであり、金融庁の検査・監督の中では以前から重視していたポイントである。今後も金融事業者との対話をしっかりと進め、顧客一人ひとりにとってベストプラクティス(最善の方法)を提供できる環境を整えたいと思う。

国民の安定的な資産形成と顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)」について

最新テクノロジーがもたらすウェルスマネジメントの変革 ~デジタルが生み出す可能性と実用化の要諦~

坂本 幸一 氏
【講演者】
アクセンチュア株式会社
金融サービス本部 証券グループ統括 マネジング・ディレクター
坂本 幸一 氏
武藤 惣一郎 氏
【講演者】
アクセンチュア株式会社
金融サービス本部 シニア・マネージャー
武藤 惣一郎 氏

「特化型AI」の台頭

ウェルスマネジメント業界の変革を担う技術として、AI(人工知能)を用いた業務革新、ロボ・アドバイザーの進化、そしてロボティクスを用いたオペレーションの自動化について考察したい。

最初に、AIを用いた業務革新について。AIは大きく2つに分けることができる。マーケットを先行してつくってきたのが、さまざまな用途に使える汎用型のAI。これに対し、最近のトレンドとして導入が進んでいるのが特化型のAIだ。学習のスピードが速く、導入コストが安価であることを特徴としている。この中で、当社が注目しているものをいくつか紹介したい。

チャットボットは、国内でも取り組みが進められているが、学習期間が長く、なかなか成果が上がらないことが課題だった。当社がNTTコミュニケーションズと協業して導入を支援しているチャットボット(COTOHA)は、日本語の理解や文脈からの判断が非常に優れていることと、学習が早いことを特徴としている。また、回答が困難な場合にはオペレーターに接続し、会話が途絶えるのを防ぐ。

例えば、顧客が取引開始に興味を持った際にセミナー誘致・申込受付に対応するなどの活用方法が挙げられる。若年層や資産形成層をいかに対面チャネルに呼び寄せていくかという金融機関の課題に対して、「擬人チャネル」として無視できないテクノロジーになると考えている。

続いて、文章解析に特化したAIを紹介したい。FRONTEO社のKIBITは、パターン認識で、文章のリスク値を判定する機能がある。メールや電話の履歴などの全量を人間が確認することは難しく、コンプライアンスチェックが不十分になりがちだが、これをAIで峻別することで、チェックの精度を高めることができる。

AI OCRは、人工知能を搭載したOCRが紙資料内容を自動的に認識して、情報をデジタル化する。潰れた文字なども前後の文脈から推測して読み取ることができ、生産性向上に寄与すると考える。

人とつながるロボ・アドバイザー

ロボ・アドバイザーを導入しても、利用顧客数の頭打ち、差別化ができない、預かり資産が増えないといった悩みを抱える金融機関は多い。顧客からは、デジタルで大金が動くのは怖い、対面の方が安心だという声が聞かれる。

現在はポートフォリオ提案や発注・リバランスまで行うサービスが主流だが、今後は、ロボ・アドバイザーとヒューマンアドバイザーが連携してサービス提供する「ハイブリッド・アドバイザー」の取り組みが進むと考える。相談ニーズがある人をアドバイザーとつなぐ、時には店舗に足を運んでもらうなどの対面チャネルとの接続が考えられる。

また、トップ営業員が高い生産性を発揮して、全体をけん引している状況に対しては、デジタル・ウェルスマネジメントの導入により、営業スタイルを抜本的に変革することで、トップ営業員以外の営業員を含めて営業力を底上げすることが効果的と考えている。

ロボットは24時間365日活動できるので、働き方改革の一環として、ロボティクスを利用したオペレーションの自動化を検討している企業が多くなっている。

しかし、実際は「導入したがなかなか効果が出ない」という声も多い。その要因を分析したところ、「会社としてのミッションが曖昧」、「既存のガバナンスを前提とした運用」、「極端な現場任せ」、「仕事がなくなることへの警戒」などのポイントが見えてきた。経営と業務部門とIT部門が連携し、実用化を目指すことが肝要と考えている。

アクセンチュアはグローバルNo.1の導入実績があり、豊富なノウハウやアセットを有している。また、ベンダーフリーのツール選定が可能であり、ロボティクスの導入や再考に際しては、付加価値の高い支援が可能と自負している。

最新テクノロジーがもたらすウェルスマネジメントの変革 ~デジタルが生み出す可能性と実用化の要諦~

人とロボアドバイザーの融合がもたらす新たなアドバイスの可能性

Mr Alessandro Tonchia
【講演者】
Finantix Ltd.
Founder and Director
Mr Alessandro Tonchia
Mr Damien Piper
【講演者】
Finantix Ltd.
Regional Director, Asia
Mr Damien Piper

2017年5月に東京支店を開設

当社は、金融業界や保険業界向けのソリューションをアプリケーションシステムで提供する、欧州を代表するフィンテック企業のひとつだ。世界の6都市に拠点を置き、シンガポールや香港などのアジアへも展開している。アジアの大手銀行や保険会社とは、すでに14年にわたる取引実績を持つ。

2017年5月には、新たに日本で東京支店を開設する。東京支店の最初のクライアントは保険業界の大手であるマニュライフ生命だ。18年間積み上げてきたさまざまな当社のソリューションを日本語版へ落とし込み、日本人のライフサイクルやウェルスマネジメントにおけるニーズなどをすべてカバーしたサービスを提供する方針で進めている。

当社のサービスは、金融アドバイザーや銀行窓口担当者、顧客など、すべての人が使いやすいシンプルなツールであることを追求している。

例えば、スイスやシンガポールで提供している「ハイブリッド・アドバイス・サービス」。これは、自宅にいながら自己資産などのニーズ査定や実際の取引が行える仕組みだ。アドバイザーなどからあらかじめ提案されていたプランなどを吟味して実行する時も、わざわざ銀行などへ足を運ばずに、自宅や通勤途中の車内で作業を完了させることができる。

また、音声や動画の機能も備えており、移動の時間が取れない多忙な顧客でも、リモートアクセス機能を使えば好きな時にアドバイザーとやり取りができるようになっている。

銀行直結の厳しいセキュリティ

「ハイブリッド・アドバイス・サービス」では、顧客が必要とする国や市場動向などの情報をシステムが自動的にピックアップし、テキストや図表、または動画などさまざまな媒体でタイムリーに提供している。このような情報媒体を有効活用することで、アドバイザーは顧客と共に最適なプランニングを進めることができる。

また、アドバイザーと顧客が実際にやり取りを行うミーティングの準備機能を活用すると、スケジュールの調整などをデバイス上で確認し合える。今年の財政政策について述べたコンテンツに対し、アドバイザーの見解をコメントで添えたうえで送信することなども可能だ。

顧客はコンテンツ内に気になる点があれば、アドバイザーに対してチャット画面を使い質問などのやり取りもできる。ミーティング時にはある程度事前に情報を共有しているため、より生産性の高い取引が実現するのだ。

顧客の金融資産であるポートフォリオについては、アルゴリズムを使ったマッチターゲット機能を使い顧客にとって最適な銘柄を自動的に選別、提案まで行う。

実際に顧客のニーズを確認し、最適なプランを提供するゴールドベストプランニングは、例えば子供がいる場合、教育向けの貯蓄ソリューション商品などを紹介する。顧客自身が気に入ればタブレット上でそのまま申し込み画面に進み、必要な情報を入力し、そして署名まで済ませることができるシステムだ。

ポートフォリオの構成商品にその顧客にとってリスクが高すぎるものがある場合は、アドバイザーに対してもアラートが表示されるモニタリング機能を搭載している。1998年のアジア危機のようなイベントが発生した場合はどのようなインパクトがあるかなど、システムの分析情報をアドバイザーは活用し、将来に必要な備えなどを顧客と共に対策していくことが可能だ。

当社のシステムは、銀行のデータセンターと直結しているため、厳しいセキュリティ基準を設けて顧客情報を守る環境を整えている。また、同じビジネスモデルを持つ企業であっても、顧客の動向をデータとして集積することで、それぞれの会社や金融機関に適応した柔軟性のあるサービスを展開していくことが可能だ。さまざまなアプリケーションサービスをひとつのデジタルインターフェイスにまとめ、今後もさらなる生産性と利便性の向上に努めていく。

人とロボアドバイザーの融合がもたらす新たなアドバイスの可能性

総資産と税務を考慮した次世代型ウェルスマネジメントの実際

北山 雅一 氏
【講演者】
株式会社キャピタル・アセット・プランニング
代表取締役社長
北山 雅一 氏

1500兆円が動く「大相続時代」

当社は、25年前からフィンテック分野に従事してきた金融フロントエンドシステムのパイオニア企業だ。

財務会計と金融経済の2つの領域を背景に、FI(ファイナンシャルテクノロジー)とIT(インフォメーションテクノロジー)を統合し、個人財産の最適な配分と次世代への不安なき相続をデザインすることを目指している。公認会計士や税理士、証券会社、銀行などの勤務経験があるメンバーが担うコンサルティング部門と、ファイナンシャルプランニングの有資格者プログラマーなど金融リテラシーの高いシステム開発部門の2チーム体制が競争力の源泉だ。

現在の当社の主製品は、ソニー生命保険の申し込みペーパーレスタブレットだ。フロントシステムの開発を担当し、通常7.5日かかると言われる保険の契約の即時成立を実現した。また、三菱UFJフィナンシャル・グループとりそな銀行の確定拠出年金のコンサルティングサイトの制作を担当。約150万人の加入者が利用している。

日本は今後、「大相続時代」に突入し、毎年50兆円の資産が団塊世代から次の世代へ25~30年の間に受け継がれていくという。合計1500兆円という金額は、今の日本の個人金融資産と同額だ。

財務省の「主要国の相続税の負担率」によると、配偶者と子ども2人で財産額が10億円を超えた場合、相続税が最も厳しいのは日本だ。配偶者がいない場合は、財産額が1億円から日本が世界最高水準の相続税率でもある。

ウェルスマネジメントの領域における相続問題は、例えば非金融資産である自社株を経営者の父から後継者の長男へ引き継がせる際、それに見合う金融資産がないと相続税が払いきれないケースなどが挙げられる。資産家などの富裕層に対し、日本は世界に類を見ない相続税負担があるということを前提にした資産運用などの提案が必要ということだ。

「エステートプラン」の主流化

従来の保険会社では、顧客に対しライフプランを提案していた。しかし、今後は相続を含めた「エステートプラン」が主流となる。つまり、①リスク許容度に合わせた資産運用、②円滑な財産分割、③相続税納税準備、④相続税対策の各ニーズに対応することが課題だ。

当社の総合相続システムWMW(Wealth Management Workstation)は、このような複雑化するニーズに対応している。このシステムは全資産を可視化し、相続税未払金などの見えざる負債を明確にする。預かり資産残高は1兆円を突破した(2017年2月27日時点)。財産分割においては、AI(人工知能)による遺伝的アルゴリズムを活用する。財産額と分割希望割合を入力すると、相続税なども加味した希望とほぼ差異のない数値を1秒で割り出すことができる。

国税庁の相続統計(平成26年)によると、相続税の財産課税価格が3億円以上の人の割合は全体の13.5%のみ。3億円未満の86.5%に対しては暦年贈与と生命保険で相続税対策がカバーできるが、3億円以上の人には資産管理会社や投資信託、不動産購入や暦年贈与などを組合せた戦略が欠かせない。

また、2016年3月より始まった財産債務調書制度は、所得が2000万円超え、総資産が3億円以上、または有価証券1億円以上の人を対象に、12月の時価に基づいた全資産の提出を義務付けた。不履行の際は1年以下の懲役または50万円以下の罰金が発生する。

この対象となる40万人は、ウェルスマネジメントの顧客層であると言えるだろう。会計事務所は確定申告の作業だけで精一杯であり、財産債務調書まで手が回らない。顧客の資産と連動する総合相続システム「WMW」は、こうした財産債務調書もボタン一つで算出し、作成できるとともに、相続税の納税準備、財産の円滑な分割、さらには税額軽減のためのファンドラップ、終身保険、個人年金保険、投資信託の最適組合せを設計する。

総資産と税務を考慮した次世代型ウェルスマネジメントの実際

新しい方法で顧客接点の強化を可能にする次世代型ウェルスマネジメントサービス “Salesforce Financial Services Cloud”

森田 青志 氏
【講演者】
株式会社セールスフォース・ドットコム
デジタル・イノベーション事業統括
セールスフォース・インダストリー本部 常務執行役員
森田 青志 氏
鈴木 裕子 氏
【講演者】
株式会社セールスフォース・ドットコム
デジタル・イノベーション事業統括
セールスフォース・インダストリー本部 ディレクター
鈴木 裕子 氏

年3回更新で規制の変化に対応

当社は米サンフランシスコで創業して18周年、日本でビジネスをスタートして17年を迎えた。クラウド基盤のアプリケーションサービスを、営業活動支援やカスタマーサービス、プラットホーム上の開発などの分野で提供している。

取り扱い製品は、投資対効果が早く受けられる上に、ソフトの刷新ではなく機能を追加していくシステムだ。バージョンアップは年3回、業務や規制の変化に柔軟な対応が可能である。また、経営層や現場の従業員はそれぞれの権限の中でリアルタイムな状況を可視化し、共有できるようになっている。

ITの側面からは、変更箇所のみの部分開発の適応など手間の少ない利点がある。バックアップなどの機能を備えているため、運用やメンテナンスが簡単だ。

当社ではさまざまな顧客情報を扱う事業形態であるがゆえに、年間数十億規模の莫大な資金を投資し、世界最高峰の堅牢なセキュリティ環境の維持に努めている。

日本においては、金融業界におけるガイドラインを策定している金融情報システムセンター(FISC)が2015年6月に改訂した「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準」のベースとなる有識者検討会に参加している。当社には安全対策基準のガイドラインに沿ったシステム・製品が揃っていることも、日本の金融機関に採用されやすい理由の一つと考えている。

全情報を一つのシステムに集約

当社が2016年に行ったアンケート調査では、日本の投資家の77%は、アドバイザーとより関係性を深めるコラボレーション型のアドバイスを求めていることが判明した。

当社は2016年10月、「Salesforce Financial Services Cloud」日本語版のサービスを開始した。ウェルスマネジメント業務を担うファイナンシャルアドバイザー向けの営業支援の機能が充実しており、先行リリースした米国ではリリース後1年ですでに140社以上の金融機関に採用されている。

この営業支援ツールは、顧客情報や営業活動の管理をシンプル化し、アドバイザーと顧客の1対1のカスタマーリレーションを実現した。顧客の個人情報のみならず、世帯情報や顧客の保有する金融資産情報、資産運用・投資のゴールなどの情報もすべて一つのシステムに集約し、紐づけて把握が可能だ。パソコン上だけでなくモバイル端末などでもアクセス可能なため、外出先でも的確な情報を常に確認できる。

顧客の活動履歴は、アドバイザーが行ってきた営業活動以外にも、コールセンターへの問い合わせ内容など、他部署・担当者がおこなった顧客とのやり取りも履歴として表示される。

顧客の資産情報やゴールに対する達成状況は顧客向けポータル画面を通じて顧客自身が確認することもでき、このポータル上でアドバイザーとのコミュニケーションも可能である。

また、アドバイザー向け営業支援ツールと並行して2016年に「Salesforce Einstein」(セールスフォース アインシュタイン)をリリースした。Einsteinは、予測分析や機械学習、自然言語処理といったAI(人工知能)関連テクノロジーを活用したサービスの総称である。

例えば、商談相手の行動を基にAIが購買意欲をスコアリングし、商談の優先順位を決める手助けをする機能などを搭載している。モバイル決済企業のスクエアがパイロット版を10カ月間使用したところ、見込み客の商談成立率は20%向上し、受注率も20%上がった。

2017年3月には、当社のAI EinsteinとIBMのAI Watsonが連携する協定を結んだ。両社のAIが持つデータを掛け合わせることによって、Einsteinから得られる顧客に関する深いインサイトと、多くの情報源および天候、ヘルスケア、金融サービス、小売などの業界にまたがるWatsonの構造化データおよび非構造化データを組み合わせ、ビジネスに活用できるようになると考える。

新しい方法で顧客接点の強化を可能にする次世代型ウェルスマネジメントサービスSalesforce Financial Services Cloud

みずほ銀行の非対面顧客向け資産運用アドバイスサービス「スマートフォリオ」について

野崎 慎二郎
特別講演
【講演者】
株式会社みずほ銀行 個人コンサルティング推進部 参事役
野崎 慎二郎 氏

ロボアドは営業課題の対応策

資産運用業界の一番大きなテーマは、「貯蓄から投資・資産形成」へのシフトを加速させることだ。この実現には、対面・非対面営業でクリアすべき課題がある。

当行では、約3000名のファイナンシャル・コンサルタントが対面でお客様の資産運用ニーズをサポートしているが、投資へのシフトが進んだ場合、新規のお客様に対応できるバッファーは大きくない。これが対面営業の課題だ。

「貯蓄から投資」へのメインのお客様は勤労世代であり、営業時間中の来店は限られるため、非対面でのサービス提供が中心になる。従来型の金融機関は、対面で資産運用をサポートすることを前提とした営業体制が組まれているため、基本的に非対面サービスは、対面のお客様の利便性ツールでしかない。このツールにどこまで十分なサービスが付与できるかという課題もある。

対面・非対面営業が抱える課題に対して対応策になり得るのが、インターネットで自分に適した資産配分を提案する「ロボアドバイザー」だ。

一般的なサービス内容は、①簡単な質問にお客様が回答し、②リスク許容度を判定、③資産配分を提案、④実際に購入、⑤必要に応じた資産のリバランスに整理できる。日本のロボアドバイザーは、無料の「アドバイス型」と有料の「投資一任型」に分けられる。さらに、投資対象が投資信託かETF(上場投資信託)かでも区分される。

提案、購入、リバランスに特徴

当社のロボアドバイザーは、アドバイス型の投資信託タイプだ。スマート(賢い)とポートフォリオの造語で「スマートフォリオ」と名付けた。資産配分の提案、購入、リバランスの部分に特徴がある。

多くのロボアドバイザーは、お客様のリスク許容度の限界で一番リターンが獲得できそうな資産配分を提案するが、スマートフォリオは、時系列という考え方を取り入れている。例えば、100万円を10年後に子供の教育資金として200万円に増やしたい場合、運用期間とリスク許容度の範囲内でより安定的な運用を提案する。1年後に105万円、3年後に120万円など各時点での運用成果のラップも決定することができる。

資産購入後に重要となるリバランスについては、複数の資産を一括で購入できる「ワンクリックオーダー」という機能を付加した。「投信ダッシュボード」は、目標の金額に対して、今現在の達成率を示す機能だ。お客様個々のリスク水準に対して大きくかい離した場合に周知するとともに、リバランスなどのメンテナンス案を記載した「トリガーメール」機能も備えている。

スマートフォリオの体験版は、2015年10月から2017年2月までに約46万人の方にご利用いただいている。そのなかの会員サービスに登録する1.6万人の属性をみると、「投信口座はあるが、投信残高がない方」と「預金口座しかなかった方」で過半を占める。また、スマートフォリオ利用者の約80%が2資産以上に投資しており、資産分散の重要性にかかる意識向上が十分訴求できていると分析している。

今後、対応すべき課題は大きく2つある。店頭でお客様を対面・非対面に振り分けると、これまでのリレーションが切れてしまう不安から、対面スタッフが担当のお客様を手放さないことが考えられる。この対応策として、非対面で得られた情報を店頭に戻し、店頭から必要なアプローチを行うことを検討している。

一方、非対面の課題は、有人サポートを必要とするお客様への対応だ。資産運用に対する不安を和らげるために、「みずほメッセンジャー」というチャットサービスを提供している。お客様に提供するサービスの継続的な改善には、店頭との連携を含めた高度化が必要になる。

「貯蓄から投資」へのシフトは、資産運用業界の社会的責任だ。店頭をメインに営業体制が組まれている資産運用業界では、ロボアドバイザーを含めた積極的なお客様対応を業界挙げて進めるべきだ。

みずほ銀行の非対面顧客向け資産運用アドバイスサービス「スマートフォリオ」について
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