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FINANCE FORUM ブロックチェーンがもたらす金融パラダイムチェンジ<アフターレポート>

2019年10月30日(水)、セミナーインフォ主催「FINANCE FORUM ブロックチェーンがもたらす金融パラダイムチェンジ」が開催された。金融業界によるブロックチェーンの実用化に向けた実証実験が多く行われた昨年を経て、本格的な実装に向けた取り組みが始まっている。金融システムの中にどのように組み込むことで業務の効率化や新事業創出につながるか、ガバナンスの確立とともに大きなポイントとなっている。本フォーラムでは、ブロックチェーンがもたらす金融パラダイムチェンジをテーマに、基調講演として金融庁による国際的動向への取組みについてご解説いただくとともに、特別講演では三井住友銀行による貿易分野でのブロックチェーンを活用したプラットフォーム開発とその取組みについてご紹介いただいた。また、先進各社が示す導入時の留意点や活用可能性の紹介を通じ、ブロックチェーンの今を見据えつつ、今後の展望を探った。

FINANCE FORUM ブロックチェーンがもたらす金融パラダイムチェンジ<アフターレポート>
  1. ブロックチェーン技術の進展と新たな国際協調の構築に向けて
  2. 金融業界の今後の進展とブロックチェーンによる可能性
  3. 個人データ連携から見えるSociety5.0
    ~法令対応に向けた技術的な活用事例について~
  4. 貿易分野におけるデジタリゼーション
    ~Project Marco Poloの取組について~

ブロックチェーン技術の進展と新たな国際協調の構築に向けて

三輪 純平
基調講演
【講演者】
金融庁
フィンテック室長
三輪 純平 氏

ブロックチェーン技術は、ネットワーク上での記録・管理の技術だ。プルーフ・オブ・ワーク等により経済インセンティブを利用しながら、これまで中央集権的に行ってきた記録・管理を分散的に行い、かつ耐改ざん性を高めている点に特徴がある。元はビットコインを支える技術として生まれたものであるが、金融に留まらず幅広い分野で活用が進展し、決済や貿易物流等の領域においても多数のユースケースが登場している。インターネットは誕生してから50年経過しているが、ブロックチェーンは誕生してからまだ10年であり、発展途上の技術といえる。次の10年の間により発展し、従来のビジネスモデルを変える可能性を秘めているだろう。

金融庁では、2018年よりFinTech Innovation Hubを設立し、ヒアリングや情報収集機能を高め、ブロックチェーンの活用による金融機関等のビジネス展開を後押ししつつ、また、ブロックチェーン「国際共同研究」プロジェクトを進展させ、潜在的なリスクや技術の脆弱性などの研究も行ってきた。特にHub活動では、ブロックチェーンに限らず、各種技術系のコンファレンスへの参画のほか、金融庁が主催する「FIN/SUM」(日本経済新聞社と共催)や「Meetup with FSA」を開催し、多様なステークホルダーとの対話の場を持っている。また、金融庁では、暗号資産取引において、中間業者である暗号資産交換所に登録制を導入し、KYCのルールを課すことで利用者保護をいち早く図ってきたが、それらを裏で支えているブロックチェーン技術や暗号技術等の技術レイヤーにおけるリスクや、暗号の危殆化リスク、ハッキングにより暗号資産が盗取された場合の追跡可能性とプライバシー保護とのバランスを如何に図るかなど、さまざまな課題も存在している。現在の規制による利用者保護も、技術進展により交換所のような仲介業者自体がなくなると、将来的には規制のターゲット自体を失うおそれもある。国際共同研究では、これらの課題に着目しつつ、将来的に進展していく可能性のある分散型金融システムのガバナンスの課題について、新たなアプローチを開拓していく必要があるとの認識に立っている。すなわち、それが「マルチステークホルダーガバナンス」という考え方である。金融庁では、国際会議「Blockchain Roundtable」を主催し、合計16の金融当局、中央銀行、国際機関、国内外の大学関係者、企業や開発者等、マルチステークホルダーが参加する場を提供し、ブロックチェーンの先端的な課題を議論している。規制と分散型金融システムのガバナンスの在り方、暗号資産を用いたマネーロンダリング防止の手法、トークンエコノミーの進展等を主な議題として取り上げている。これらの取り組みを踏まえ、2019年のG20(日本が議長国)においてブロックチェーンに代表される分散型金融システムの問題が議論されるようにアジェンダを作成。新たなアプローチ方法やガバナンスの在り方を模索する必要があると提案した。この提案により、金融安定理事会(FSB)が公表した「分散型金融技術に係る報告書」に、政策へのインプリケーションを纏め、G20大阪首脳宣言でも本件に関するFSBの作業を歓迎する旨の一文が加えられた。

ブロックチェーンが持つ分散化、自律性、匿名性といった特性は、仲介者不在により規制ターゲットが曖昧になる、当局による規制執行を困難化する、暗号資産を盗取された際の追跡可能性が低いなど、様々な課題を生んでいる。金融庁としても、規制の役割 を再考しつつ、健全なガバナンスを構築するために、ステークホルダー間の連携を促進し、マルチステークホルダーガバナンスを実現できる環境を整えていきたい。2020年3月に、日本において、マルチステークホルダーが議論する場として、ブロックチェーン・ガバナンスに関する国際コンファレンスを開催する予定である。今後の金融庁の取組みにも注目していただきたい。

金融業界の今後の進展とブロックチェーンによる可能性

相原 寛史
【講演者】
アクセンチュア株式会社
金融サービス本部 マネジング・ディレクター
相原 寛史 氏
山田 昌嗣
【講演者】
テクノロジーコンサルティング本部
ITソリューション マネジャー
山田 昌嗣 氏

アクセンチュアが実施した調査によると、業界問わず多くの企業が長期に渡りディスラプター(創造的破壊)の脅威にさらされている。金融業界においてもFinTechの盛り上がりは一過性のものではない。長期的にディスラプターの影響を受ける可能性があるなかで、イノベーションをどうビジネスに取り込んでいくかを考えていくことが重要だ。

デジタル時代においては、次の3つの視点でビジネスに取り組むことが可能になる。限界費用を落とすことで、これまでお客様になりえなかった方々を“Include”してサービスを提供すること、お客様ひとりひとりに“Personalize”した新しい体験を提供すること、インターネットやブロックチェーンを活用してグローバルに“Connect”することだ。アクセンチュアは、“Connect”、すなわち「つながる力」こそがビジネスにおけるデジタルの本領であると考える。あらゆるパートナー企業とデジタル・エコシステム を形成し、総合力を発揮することで新しいイノベーションを取り込むことができるようになる。

ブロックチェーンは、デジタル・エコシステムを形成するにあたり大きな役割を果たす技術だ。自社内の金融トランザクションだけ見ていても、その裏側にある顧客の本質的なニーズを捉えることは難しい。ブロックチェーンを活用してリアルビジネスを行う異業種と協業すれば、そこから得られたデータを分析することでまったく新しい価値を生み出していくことができる。

実際のブロックチェーン活用にあたって注意すべきポイントについて共有したい。アクセンチュアは、ふくおかフィナンシャルグループの子会社であるiBankと共同で、ブロックチェーンのシステムを1年前に本番稼働、運用開始している。iBankが提供しているWallet+内のポイントをブロックチェーンで管理するシステムだ。ブロックチェーンの導入により、数百万人の会員のポイントを支える基盤として1ポイントも欠損することなく運用できている。

ブロックチェーンシステムの開発を成功に導くには、その技術特性をあらかじめ理解することが重要だ。第一に、ブロックチェーンはデータの「完全性」にフォーカスした技術であるということ。検証合意したデータだけが格納され、記録されたデータは耐改ざん性を備えていることが、システム開発において正規の改修やテストデータ投入を困難にさせ、開発スケジュールに影響を及ぼす。第二に、ネットワークシステムであり、データが届かないというリスクを持っていること。第三に、コンソーシアム型での開発形式を取ることで多くのステークホルダーがかかわることだ。

これらの3つの特性を踏まえ、ブロックチェーンシステムの開発においては「抽象化」「再試行」「余白」の3つの視点を持つことが有効だと考える。複数のステークホルダーの意見を「抽象化」して全てのステークホルダーが使えるものにすること、データが届かない場合に相手先を変えながら「再試行」する仕組みを作ること、あらかじめ改修を見越した「余白」をデータに設計することだ。これら3つをあらかじめ認識したうえで開発に取り組むことにより、ブロックチェーンシステムの開発を成功に導き、システムそのものを安定的に継続運用できるようになるだろう。さらには、ブロックチェーンによりステークホルダーの皆様をつなげたデジタル・エコシステムの形成を出発点に、顧客のデータを集め、真のニーズを理解してより良いサービスを作っていくことができるのだ。アクセンチュアでは、自社における開発・運用経験を踏まえた情報を金融サービスブログやウェビナーを通じて提供している。ご関心がある方はぜひご活用いただきたい。

講演企業情報
アクセンチュア株式会社:https://www.accenture.com/jp-ja
●金融サービスブログはこちら

個人データ連携から見えるSociety5.0
~法令対応に向けた技術的な活用事例について~

藤井 秀樹
【講演者】
パクテラ・アジアパシフィック・ホールディングス株式会社
パクテラ デジタル イノベーション 最高経営責任者
藤井 秀樹 氏
江川 将偉
【講演者】
株式会社OZ1
代表取締役社長
江川 将偉 氏
深津 航
【講演者】
株式会社Scalar
代表取締役 CEO/COO
深津 航 氏

デジタル時代の今、自分たちだけですべての課題を解決することは難しい。短期間でトライ&エラーを繰り返しスピード勝負で課題解決を図っていくために、スタートアップとのデジタルイノベーションにおける連携が極めて重要だ。パクテラグループではそこに着目し、パクテラ デジタル イノベーションとしてスタートアップとの連携を支援している。ブロックチェーンの領域においても、技術の登場から約10年が経過し、その課題や可能性が見えてきた中で、次の10年で本当の意味でのディスラプターが出てくるのではないかと考えている。本日は今後の主役になる可能性のある2社を紹介したい。

OZ1は、内閣府が掲げるコンセプト「Society5.0」に向けてデータ連携による社会変革を推し進めている。特に、個人に対してデータ活用を通じたメリットを提供することをテーマとしており、直近の取り組みとしては、ヘルスケアの領域においてライフログの記録と管理を行い、データに基づいたサービスの提供を行う仕組みの構築に取り組んでいる。個人は自身の登録情報がどのサービスにどのようにつながってどう管理されているのかがまったく見えていないのが現状だ。個人が自由に自身のデータを管理できるようなデジタル社会を実現したいと考えている。

国家としてデジタル化に注力しているデジタル先進国のエストニアでは、住民情報等をはじめとする公共情報をX-ROADと呼ばれる情報システムで管理している。X-ROADはシステムの一部にブロックチェーンを利用しており、個人がデータの利用を許可することにより企業が該当者のデータを使える仕組みを実現している。日本でも、内閣府のIT新戦略や経産省がシステムアーキテクチャの社会実装を推進しているが、OZ1としては民間の立場から先行して行っていきたいと考えている。データの活用においては、さまざまなマーケットに跨ってデータを回し、ビジネスに繋げていくことが重要だ。金融・保険分野の方々にもまずはOZ1の取り組みを知っていただきたい。

Scalarはデータベースを作っている企業だ。信頼できるデータの格納方法と、それを使ったデジタルトランスフォーメーションの推進を主眼に事業を展開している。特に、データの所有者が自身のデータに対し所有権を発揮できるよう、第三者提供したデータであってもそのコントロールを可能にし、トレーサビリティを高めることに取り組んでいる。具体的には、ブロックチェーンの技術を用いてデータベースの上にトランザクションマネージャーを作り、マスターレスで動く分散型台帳「Scalar DLT」を作っている。耐改ざん性にも優れ、マルチクラウドで実装することによりどんなクラウドでもオンプレミスで動く。分散と中央集権のちょうど中間に位置するシステムであり、その特長として、高いスケーラビリティ、高い改ざん検知性、強い一貫性を実現している。特に、データベースのトランザクションとブロックチェーンのスマートコントラクトのトランザクションを1トランザクションとして実行できる点が魅力であり、データの不備が起こりにくい。実際にこのデータベースを、勤怠管理情報と保険商品を繋げた商品付帯保険や、同意管理や情報銀行の取り組み等に活用している。Scalarは銀行業界においてミッションクリティカルなテーマに取り組んでいる。ブロックチェーンを活用した今後の取り組みにも期待いただきたい。

講演企業情報
パクテラ・コンサルティング・ジャパン株式会社:https://jp.pactera.com
株式会社OZ1:http://oz1.life/
株式会社Scalar:https://scalar-labs.com

貿易分野におけるデジタリゼーション
~Project Marco Poloの取組について~

片岡 蔵人
特別講演
【講演者】
株式会社三井住友銀行
トレードファイナンス営業部
グローバル戦略グループ グループ長
片岡 蔵人 氏

三井住友銀行が参画するプロジェクト「Marco Polo」は、R3社のブロックチェーン技術であるCordaを用いた貿易金融プラットフォームだ。Cordaは参加者の限定されたプライベート型のブロックチェーンであり、守られたネットワークの中で各参加企業や金融機関が貿易取引データを共有している。Cordaには、プライベート型でありながらCorda同士のデータ連携は比較的スムーズにできるという利点があり、Corda上に開発されるアプリケーションは相互接続性がある為、異なるネットワーク同士(決済、物流、保険等)でも、一つの貿易取引として連携することが可能だ。またCordaは個別取引レベルでデータを共有することができる点も特徴だ。ブロックチェーン上で連携される情報には、一部の関係者には開示することが望ましくない情報も存在する。そのような情報の見せ方をコントロールできる点が商取引に適している。

貿易取引には、輸出者、輸入者はもちろん、船会社や銀行等多数の関係当事者が存在しており、関係当事者間では通関証や原産地証明、船荷証券、Invoice、パッキングリスト、仕様説明書等々、あらゆる貿易書類が紙でやりとりされている。輸出入者のお客様は、自社内のシステム上にある台帳に書類の内容を登録する作業を行っており、これが貿易取引の大きな作業負担となっている。ここにブロックチェーン技術を用いると、お客様がPurchase Orderの情報をブロックチェーン上に登録するだけで、これまで一旦書類を作成してから台帳に登録していた情報が、関係当事者それぞれでネットワーク上にアップデートできることになる。これにより入力誤りの削減、再入力時間の短縮となる。

「Marco Polo」で現在取り扱い可能な機能は大きく2つ。Recieveable Finance(債権流動化)=貿易にまつわる売掛債権の流動化と、ペイメントコミットメント(支払保証)=貿易における信用の補完だ。

Recieveable Financeは、従来であればInvoiceのコピーを銀行に持ち込んで売掛債権の割引をしてきたものを、金額・請求先・支払期日等の請求情報をファイルに入れて「Marco Polo」にアップロードするだけで、その情報をもとにInvoiceの情報が割引可能か判断のうえ返答することができるというものだ。取引が成立すれば割引のうえお客様の口座に入金される。今日の時点では、銀行側でバックオフィスへの入金指示を行うオペレーションは残っているが、Invoiceデータの記録がネットワーク上に残るためデータの信頼性が高い点がメリットだ。

ペイメントコミットメントのベースとなる取引は信用状取引が考えられる。例えば、出荷後90日間等の支払期日までの輸入者の信用リスクを銀行が補完するための仕組みだ。従来であれば輸入者の取引銀行が信用状を発行してその支払いを担保していたが、 これには多くの書類提出の手間が発生し、取引のスピードが遅くなる。ペイメントコミットメントは、輸入者がアップロードしたPurchase Orderと輸出者がアップロードしたインボイス及び船積み情報を品番・金額等の条件でマッチングさせ、データがマッチングした取引は輸入者の取引銀行が輸出者に支払いを確約するというものだ。

貿易金融のプロジェクトは、多くの地域の金融機関が参加することがネットワークとしての成長の鍵を握る。また、今後は異なる業態や技術のコンソーシアムとネットワークを繋げていくことも重要になってくるだろう。お客様の取引がどんどんデジタル化されていく中で、金融機関もその動きに合わせてビジネスを変えていかなければならない。我々としてもプロジェクト「Marco Polo」が今後どのように進んでいくのか、今後技術が世界でどのように展開されていくのかをお客様と一緒に考えていきたい。

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