2023年10月26日(木)開催 FINANCE FORUM「ビッグデータ活用がもたらす金融ビジネスの躍進」


2023年10月26日(木)セミナーインフォ主催 FINANCE FORUM「ビッグデータ活用がもたらす金融ビジネスの躍進」が開催された。金融機関は急速なデジタル化とテクノロジーの進化により、これまで以上に多くのデータが蓄積され、リアルタイムのデータ分析が重要となっている。ビッグデータは顧客満足度や従業員満足度の向上をはじめ、リスク管理、ポートフォリオ最適化等さまざまな分野で活用されている。本フォーラムでは、基調講演にて株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ、特別講演にて株式会社りそなホールディングスに最新の事例やデータ戦略をご紹介いただくと共に、先進企業よりデータ利活用に役立つテクノロジーについてご紹介いただいた。

目次

りそなグループのデータ利活用の取り組みについて
~ 金融+で、未来をプラスに。 ~

特別講演
【講演者】
株式会社りそなホールディングス
データサイエンス部長
大西 雅巳 氏

<りそなグループの概要

りそなグループは、首都圏・関西圏中心に820店舗を展開する信託併営のリテールバンキンググループだ。個人1,600万、法人50万社と取引がある。今年度スタートした新・中期経営計画では「リテールNo. 1」を目指し、コーポレートトランスフォーメーションに取り組む最初の1000日と位置付けた。りそなグループは2003年に公的資金注入を受けて20年たち、りそなショックを経験した社員の割合も3割を切っている。これまでの変革のDNAを絶やさず、また、今後進むべき道を見失わないためにも、「金融+で、未来をプラスに。」をパーパスとして定めた。グループすべての従業員が一体となって変革と創造に挑み続け、多くの皆様の未来をプラスにしていくという想いからだ。

<デジタルバンキング戦略の全体像

820店舗というのは、国内最大規模だ。しかし実際に対面でコンタクトができているお客さまは100万人強と、全体の10%を切っている状況であった。そこでリアルに会えないお客さまに対して、より良い金融サービスを提供するために2018年、バンキングアプリ(りそなグループアプリ)をリリースした。導入により3つの大きな変化があった。1つ目は、今までアプローチできなかった現役層へのアプローチが可能になったことだ。2つ目は、多様な取引においてデジタルシフトが加速したことだ。インターネットバンキングが登場したときとは比較にならないスピードでチャネルがシフトし、今やアプリが取引の主要チャネルになった。3つ目は、アプリを通じて多くのデータが集まるようになったことだ。アプリの操作ログなどのデータが飛躍的に増えたことで、商品開発に活かせている。アプリを日常的にご利用いただいているお客さまから得られる収益は、そうでないお客さまと比べて2.2倍となっている。

<デジタルデータの位置づけ

分析結果のビジネス実装にフォーカスし、2019年4月に3名でスタートしたデータサイエンス室は2021年4月、部に昇格し今では50名を超える体制となった。データ分析の専門組織を立ち上げたことでデータ利活用がさらに進み、次のステージに移れたと考えている。弊社の特徴は、データ分析の内製化・自走化に取り組んでいる点とデジタルマーケティングチームを組織内に抱えている点だ。デジタルマーケティングチームを部内に吸収したことで、データサイエンティストの分析とデジタルマーケティングチームのアドバイスの企画がうまく機能するようになった。同時期に1996年に設置された金融基礎研究所をルーツとする調査・基礎研究チームも吸収し、組織体制を強化した。分析からモデルを構築し、構築したモデルからマーケティング施策を企画・実施し効果を検証する流れが加速している。分析専門部署の中にアプリを通じてお客さまとダイレクトにつながる機能を持ちお客さまに近い距離でPDCAを回せたこと、構築されたモデルをアプリの中で数多く実装できたことで取り組み内容がレベルアップしていった。

<データマケーティングの取り組み

アプリから動的な情報を得られるようになったことで、マーケティングに関するインサイトを得られる機会も増えている。お客さまの表情をよりシャープに捉えられるようになり、マーケティングの高度化にもつながった。

りそなグループアプリでのアドバイスの配信

マーケティングにおいて最も活用しているのがりそなグループアプリのアドバイス機能だ。デジタルマーケティングチームは、アプリのアドバイスという機能を使ってお客さまとのコミュニケーションを行っている。アプリ画面上のベルのマークをタップすると、分析結果に基づき一人ひとりに寄り添ったアドバイスが表示される仕組みだ。スムーズに取引に移行できるようボタンを少なくしているほか、できるだけアプリ内で取引が完結できるといった世界観を創出している。今後は、アドバイスを見ていただく数を上げていくことが課題だ。

PDCAの枠組み

アドバイスの配信モデルを自動化し、日々数百ものパターンを走らせている。アドバイスの配信でこだわっているのが、PDCAの徹底だ。配信対象をセグメント化した上でABテストを実施するなどして、原則、全ての配信モデルに対して丁寧な効果検証を行う。効果が見られず配信を取りやめたモデルもある中、継続中の自動配信モデル数が数百を超えている。「スムーズな取引導線」「最適化されたコミュニケーション」「アクティブユーザー数」の3拍子そろってはじめて、効果を最大化して収益につながる。失敗事例から「スムーズな取引導線」「最適化されたコミュニケーション」は重要なファクターだとわかったため、日々繰り返し検証を行っているところだ。

<データサイエンスの取り組み

従来は既存の銀行商品を軸に、それに合ったお客さまを探すというアプローチが多かった。弊社ではお客さまを軸としたアプローチに変化させることで、お客さま一人ひとりに寄り添った予測モデルを構築してきた。

<セグメンテーションの高度化

セグメンテーションについては、銀行サービスの使い方からお客さまをグループ分けした。AIを使ってクラスタリングを行い、お客さまごとにアプリのアドバイスを出し分けている。各クラスターの特徴に合わせてクリエイティブを作成し、おそらく最適であろうというものを配信してテストを行う。データ分析を内製化しているので、経験値が着実に蓄積されている状況だ。

<法人営業のAIアポ予測

法人向けの対面営業の場面でもAIを活用している。これまで新規先の獲得の際には、担当者の経験値に基づいてアプローチ先を選定していた。現在では、過去のテレマーケティング成功実績などのデータを元にアポイントの入りやすい企業をAIに予測させ、アプローチ先の選定に活かすという事例に取り組んでいる。実際に面談アポの獲得率を向上させ、効率的な営業活動につながっており、経験の浅い営業担当者であっても一定の成果を上げやすく、全体の生産性向上に寄与している。

AI 契約書読み込み

事務処理が煩雑で融資案件積み上げのボトルネックになるケースに対してもAIを活用している。AIが契約書を読み取り、必要な情報を抽出することで、審査資料や管理表などを自動生成する取り組みだ。誤認したまま処理が進むことがないように、数々の工夫をしている。法人営業のAIアポ予測もAIによる契約書読み込みも、自社内で内製化していった点に価値があると考える。

<ダッシュボードの活用

ダッシュボードの導入は、管理者だけでなく現場で働くスタッフにも好影響を与えた。作業の中身が透明化されたことでやる気につながり、生産性が1.2倍に向上した事例もある。「見られている」状況自体が効果を発揮した形だ。また、ダッシュボードの利用実態自体を可視化するダッシュボードを作るなど、情報の鮮度が落ちないように使い方にもこだわっている。

<今後のビジネス展開>

今後は自社の仕組みを他社に展開することで、お互いのコストメリットやノウハウの共有を図るとともに、データサイエンスの分野についても外部への展開を進めていく。外にオープンにしていく考え方が金融デジタルプラットフォームであり、すべてのプラットフォーム参加者にとって有意義となるようなエコシステムを作ることで従来の枠組みにとらわれない共創を広げていきたい。2023年10月には法人の代表者様向けに専用アプリ(りそなグループアプリ for ビジネス)をリリースしたが、これらの開発を行っている場所は「Resona Garage(りそなガレージ)」という執務環境だ。提携企業を含む開発担当と銀行員から構成される商品企画担当、システム部門が入り混じってフリーアドレスで勤務している。さまざまなサービスの分野において、多くの連携パートナー様や多くの金融機関様とより良い金融サービスを提供し、より多くの皆様の未来をプラスにしていく。

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