「RPA活用でテストを高効率化・脱属人化!DX最前線のテスト専門会社が伝授する、マイグレーション開発効率化テクニック」

石原 一宏 氏
【講演者】
バルテス株式会社
テスト・アライアンス事業部 事業部長
石原 一宏 氏

新システム移行におけるテストの重要性

2021年はシステムやWebでトラブルの多い年であり、大手金融機関や保険業界でも大きなシステム障害が発生した。我々テスト会社から見ると、その原因は十分なテストができていなかったことに尽きる。しかし限られた時間で新システムへ移行せざるを得ないこともあり、不具合につながってしまうケースも多い。本日はそれを防ぐために必要なこと、我々が推進している対策についてお話したい。

バルテスについて

バルテスの社名はValueとTestの造語であり、テストを通じて価値を創造することを目的に設立されたテストの専門会社である。ソフトウエアテストの国際認定資格「JSTQB」の資格取得者は全社員の92%を誇り、国内で初のISTQB Global Partner認定を受けている。

年間2,100件を超えるプロジェクトに携わっており、業務システムやWeb・モバイルサイトのテスト、セキュリティ診断、品質改善のコンサルティングなどさまざま分野でソフトウェアの品質向上を支援している。

システム移行でよくある困りごと

DXでは現行システムから新システムへの移行(マイグレーション)が発生することがある。しかし既存システム仕様の理解者が少ない、ドキュメントが不十分というケースは少なくない。企業においてはシステムマイグレーションの経験者が不足している状態で、新システムの稼働を現行の製品・サービスへの影響を防ぎつつ実現しなくてはならない。この領域は効率化が難しく、属人化しやすい。

我々は自動化技術を活用した脱属人化・効率化を提唱している。

マイグレーションのポイント

システム移行においては、引き継がれる既存の業務は現行システムであっても新システムであっても、inputとoutputは同じであることが必要だ。しかし現行システムの「仕様がないが動作はしている」「運用でカバーしていた」といった領域で、新システムで処理できないといった不具合が多く発生する。

マイグレーションに必要な仕様は、ユースケース・業務フロー・実処理データ・画面仕様・システムフロー等だが、これらが全部揃っているケースはまずみられない。そこで、まずは「何ができれば良いのか」という発想で、品質目標を考えることが大切だ。成功するプロジェクトは最初にゴールをきちんと考えられている傾向がある。次に旧システムが満たしている「要求(ユーザーが望むこと)」および「要件(システムができること)」をテストケースに起こす。現在の仕様・運用からあるべき仕様を遡って作り上げる、リバースエンジニアリングと呼ばれる手法だ。しかし、抜け漏れなくすべての仕様を洗い出そうとすると膨大な時間が必要になるため、効率的に行わなくてはならない。

マイグレーション成功の2つのアプローチ

システム移行を成功させるには、2つのアプローチが重要である。1つ目は現行の仕様をリバースエンジニアリングして解析すること。そして2つ目はテスト自動化の導入だ。

当社が提案するアプローチとしてはマイニングを用いたログの解析と、そのデータを用いたテスト設計、そして網羅された項目を効率よくテストしていくためのテスト自動化だ。テストは実は属人化しやすいが、これらのアプローチにより脱属人化かつ継続的品質活動を実現する。

1.効率的な仕様解析を可能とする「マイニング」

従来人の手により、あるいは有識者へのヒアリングから作り上げていた見えない仕様を、システムログを解析するアルゴリズムを用いて炙り出す。このマイニングからテストテストケースを作成することで人による仕様把握工数の削減につながる。

既存ログの収集・分析が進むことで、既存システムの理解が進み、属人化を軽減できることも大きなポイントだ。

2.効率的なテスト自動化サービス「T-DASH」

T-DASHは上記作業で作られたテストケースを自動化できる独自フレームワークである。従来、テストの自動化には自動化ツールが認識できるスクリプトで書き直す必要があるため、似たような作業で重複した工数を要していたが、T-DASHでは後者のスクリプト作成作業が必要ない。結果として自動化スキルをもつエンジニアへの属人化がなくなり、第三者も調査や品質の分析ができるようになる。テストケースのメンテナンスや引き継ぎが容易に行えるのもメリットだ。

バルテスではこれらのフレームワークを用いて、システム移行で発生しやすい問題を解消し、顧客のマイグレーション品質をサポートする。第三者検証としてユーザー会社と開発会社間に第三者的に参画することで支援することが可能だ。

よくあるご質問1. どのくらいログを取ればいいのか?

量が必要ということではなく、質が重要になる。業務が成立する期間(受注から出荷、請求から消込までなど)を意識して、ある程度一通りのフローが必要だ。偏った業務ばかりのログではなく、代表的な業務がログに含まれている必要がある。テスト開始前にログ採取を始めるのでは間に合わないため、できるだけ上流工程の期間からログを採取することが必要だ。

よくあるご質問2. ログだけでテスト設計ができるとは思わないが?

もちろんその通りで、テストの網羅性を高めるために、処理のパスを採取しテストシナリオの精度を上げることを目的としている。テスト設計そのものは、当社のテスト設計ノウハウを用いて進めていく。

よくあるご質問3.現状特に不都合はないが、それでもマイグレーションにRPAを導入するメリットはあるのか?

開発は古くから付き合いのあるベンダーにすべてお任せしていて、特に問題を感じないというケースは多い。しかし開発ベンダーの社内でも、時間が経過するにつれて既存システムの過去仕様を把握している有識者が少数になり、マイグレーションの際に仕様の抜け漏れの発生リスクを抱えている場合がある。そのため「脱属人化かつ継続的品質活動の実現」が、今後のリスクを低減させることにつながる。

よくあるご質問4.自動化の効果が想定できないので、なかなか導入に踏み切れないのだが?

当社では費用対効果など自動化の導入効果が高い領域を選定する「フィージビリティスタディ」というサービスも行っているので、ご相談いただきたい。

テスト・検証支援の事例

三菱UFJ銀行様、TIS様に対して支援をさせていただいた事例を、当社のWEBサイトに掲載している。「バルテス」で検索してぜひご覧いただきたい。

◆講演企業情報
バルテス株式会社:https://www.valtes.co.jp/