「Salesforceで実現する保険業務改革ーカギはパーソナライズと自動化」

東山 勇介 氏
【講演者】
株式会社セールスフォース・ドットコム
インダストリーズトランスフォーメーション事業本部
シニアマネージャー 保険業界担当
東山 勇介 氏

Salesforceについて

当社は1999年に創業したクラウドベースのCRMプロバイダーだ。CRM市場において8年連続で世界No.1のシェアを獲得しており、国内でも多数の保険会社様や共済組合様でSalesforceを採用して頂いている。

<Dreamforce 2021>

2021年9月に開催された年次イベントの「Dreamforce 2021」において、当社CEOのMarc Benioffによる基調講演が行われた。基調講演では、パンデミックやサステナビリティなど世界が直面する危機・課題について言及した。それを踏まえて「Trusted Enterprise(信頼される企業」に求められることとして、安全・健康の最優先、持続可能性、多様な働き方、信頼、顧客第一の姿勢が重要と説明があった。

「Trusted Enterprise」のビジョンに基づき、当社の新たな製品・イノベーションもご紹介した。今年の夏に買収してSalesforceファミリーとなった「Slack」はどこでも仕事ができる世界を作り、多様な働き方を支えるソリューションだ。「Health Cloud 2.0」は安全と健康を実現するためのソリューションで、保険契約者様へのさらなる提供価値向上に貢献すると考えている。「Sustainability Cloud 2.0」は特に脱炭素に関わるソリューションで、パートナーの皆様のNet Zero実現をご支援したい。

新ソリューション:デジタルプロセスオートメーション

Dreamforceにおいて金融業界向けに発表したのが「デジタルプロセスオートメーション」で、ビジネスの自動化を実現するソリューションだ。保険業界で自動化を実現できる業務は主に4つあり、見込み顧客管理、見積から証券発行のプロセス、保全業務、保険金・給付金の支払いである。

実際にデジタルプロセスオートメーションをご利用頂いている、カナダの生命保険会社「カナダライフ社」のインタビューをご紹介する。同社は3つの保険会社が統合して誕生したが、3社のシステムがバラバラで存在していた。そこでこのソリューションを活用してシステム・プロセスを統合・刷新された。インタビューでは、非常に速いスピードで導入でき、小規模プロジェクトよりも短期間で実現できたと評価を頂いた。その理由は、デジタルプロセスオートメーションですでに用意されているワークフローのテンプレートを最大限活用されたことだ。

Financial Services Cloud 360

デジタルプロセスオートメーションの基盤は、「Financial Services Cloud(FSC)」で、金融特化型のCRMだ。昨年買収したVlocity(現Salesforce Inductries)の統合により、CRM領域を超えたソリューションに進化している。

FSCの製品戦略とロードマップでは「信頼関係の構築」が中心にある。信頼の源泉となるのは、顧客の金融ニーズの理解、顧客データの一元管理、顧客を把握できるデータモデルだ。信頼を中心として4つの戦略があり、まず「デジタルファーストの金融サービス」ではコーディング不要、クリックだけで構築可能なサービスの提供を目指す。「アクションにつながるインサイトの活用」では、蓄積したデータを分析してインサイトを導き出し、パーソナライズされたアクションにつなげる。「オペレーションエクセレンス」では繰り返し行う業務の自動化や、オンラインとオフライン横断で業務をシームレスに連携する。さらに「カスタマーサービス業務の自動化」により、共通のトランザクションの実行に必要なデータを統合する。

アクションにつながる深い顧客理解

Salesforceにおける顧客理解のための新たな機能を2つ紹介する。カスタマーインサイトを捉える「インタラクションサマリー」はお客様との議事録を簡単に作成でき、手入力の手間を省ける。もう1つは「インタレストタグ」で、カスタマーエンゲージメントをパーソナライズする機能だ。顧客の興味・関心をタグ付けして管理できる。

サービスエクセレンス

従業員エクスペリエンスを高めるための機能で、複数のシステムから顧客データや取引データに素早くアクセスできる。基幹システムへのコネクタが組み込まれ、基幹システムとの連携が必要な業務も途切れることなく遂行可能だ。さらにデータ反映のリアルタイム化までも実現可能となる。

パーソナライズに関するユースケース

営業職員や代理店の募集人をデジタルの力でサポートする。パーソナライズされた提案・サービスをお客様へ提供することで信頼される募集人になるのが目的だ。

このユースケースのデモ動画をご覧いただく。まず生命保険の顧客が現在の保障内容を確認しようとマイページにアクセスする。顧客は保障内容が妥当かをチェックするページを利用し、推奨保障内容を簡単に取得した。契約変更を試みていたが、お子様が泣き出したためマイページから離脱してしまった。

専属代理店の募集人はSalesforceのダッシュボードでKPIやToDoを確認する一方で、アラート機能により、担当顧客が推奨保障内容を取得したことを把握する。顧客のアクションを理解したうえで電話し、話しながら見積を作成していく。追加情報入力は最小限で済み、スムーズに申込み手続まで進められ、契約締結の電子署名機能も利用できる。このケースでは引受審査に回されたが、審査の進捗状況や結果もSalesforce上で透明性をもって確認可能だ。

自動化に関するユースケース

引受査定の自動化によりアンダーライターと代理店の業務を合理化し、ビジネスの成長につなげる。こちらのケースのデモ動画では登場人物が3人おり、営業マネージャー、代理店の募集人、アンダーライターだ。まず営業マネージャーはSalesforce上で、新商品展開における注力代理店を特定する。特定した代理店にマーケティングを展開し、代理店のコンテンツアクセス状況を確認する。

代理店の募集人はSalesforce上で仕掛かり中案件のステータスを確認可能で、アンダーライターとチャットでコミュニケーションができる。法人契約の見積を作成して送付する前に、設定された引受基準に従った査定が自動的に実施される。このケースでは基準に抵触したためアンダーライターにエスカレーションする。アンダーライターのSalesforceの画面上に引受審査のアラートが表示され、ガイドに従って引受判断を実施する。Salesforceのみで完結するのが特徴で、代理店とのやり取りや情報提供、見積・査定業務を1つのシステムで行える。

Pacific Life社のインタビュー

同社はアメリカの生命保険会社で、「Salesforceの強みは、プラットフォーム全体で、これまでにないほど多くのデータが生成されることだ。」とのコメントを頂いた。Salesforceは顧客属性だけでなくWebサイト上の行動履歴も蓄積できるのに加え、すべての接点におけるデータを集約できる。豊富なデータを基に、適切なアクションを適切なタイミングでお客様にお届けすることが可能だ。

Cumberland Mutual社のインタビュー

アメリカの損害保険会社であり、Salesforceを活用して代理店が持っている情報と同じ認識でカスタマーサービスを実現したいというご要望があった。「たとえば事故報告をするお客様にとってその日が最悪の日かもしれず、その状況は保険収納チームも理解しておく必要がある。他の商品の保険料収納で何食わぬ顔でお客様にご連絡するようなことが発生してしまう可能性があるからだ。」とのコメントを頂いた。

◆講演企業情報
株式会社セールスフォース・ドットコム:https://www.salesforce.com/jp/