「アフラックのデジタル変革(DX@Aflac)」
- 特別講演
【講演者】 - アフラック生命保険株式会社
デジタルイノベーション推進部長
高橋 直子 氏
- 【講演者】
- アフラック生命保険株式会社
デリバリーコーディネーション部長
松尾 栄一 氏
<当社の紹介>
当社は、がんに苦しむ方々を経済的な苦難から救いたいという想いから、日本初のがん保険を提供する保険会社として1974年に創業した。ブランドプロミスは、「『生きる』を創る。」。2021年3月時点の保有契約件数は2,413万件、がん保険・医療保険の保有契約件数で最も多くのご契約を頂戴している。契約者数は1,507万人で、およそ4世帯に1世帯が当社のお客様だ。全社員数は5,149名で、そのうちIT・デジタル部門は約530名。
<変革の背景>
「超VUCA時代」といわれる激しい変化を前提とした環境の下で、これまで以上にデジタルを前提とした企業経営が求められている。たとえば昨年の新型コロナウイルス感染症の拡大で当社は在宅勤務を継続しながらも、エッセンシャルワークとして契約者の方への保険金のお支払いを継続する必要があった。ディスラプターによるイノベーティブなビジネスモデルとの競争にもさらされているため、能動的なお客様サービスの提供は欠かせない。AIや5G等のデジタル技術は急激に進展しており、活用するには業界の枠を超えた異業種との協業が必要だ。
<アフラックにおけるDX戦略>
当社のDXの目的は、5大ステークホルダーであるお客様・ビジネスパートナー・社員・株主・社会へ新たな価値を提供することだ。たとえばお客様には高品質なサービスを一人ひとりに合わせた体験として提供する。ビジネスパートナーである販売代理店とはお客様の情報を共有し、シームレスなサービスを目指す。DXにより業務の効率化・自動化を図り、社員には頭を使うブレーンとして能力を発揮できる環境を用意する。株主や社会に対してはエッセンシャルワークの継続や環境経営の推進等により、より良い持続可能な企業や社会の成長を実現したいと考えている。
<DX推進の3つの柱>
3つの柱でDXを加速しており、1つ目はコアビジネスである生命保険事業の領域だ。2つ目は生命保険の周辺も含めた新たな領域で、さまざまな外部企業の方と協業を行う。ヘルスケアのデータを活用し、保険の枠を超えた新たな事業を創出する。3つ目はこれらを支える基盤であり、システムインフラだけでなく組織・人財・進捗管理も含めた概念だ。人財育成は特に重要で、若手だけでなく管理職も含めた意識醸成が必要と考えている。
<DX推進のポイント1. トップダウンで全社一丸となって推進>
当社のDX戦略は、経営戦略・経営計画・目標設定において重要な位置づけとなっており、トップダウンで全社一丸での推進が可能だ。DX戦略を取締役会において決議し、昨年9月から全社員に展開している。社内へのプロモーションを強化しており、具体的には社長による発信、CDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー)による発信、e-Learning学習だ。
<DX推進のポイント2. アジャイル型の働き方にシフト>
クロスファンクショナルなチーム(アジャイルな組織)で活動することで、リアルとデジタルが融合した一貫性のあるサービスを提供する。アジャイル型の働き方を実践するため、「5つの原則」を全役職員が実践している。顧客価値にフォーカス、クロスファンクショナルチーム、エンパワーメント、反復的プロセス、実証的アプローチだ。
<アジャイルを支える仕組み>
アジャイルを支えるさまざまな仕組みも導入しており、専門組織(アジャイル推進室)を設置のうえ、働き方だけでなく会社の仕組みそのものに対してもアプローチした。アジャイルを成功させるには、大胆な権限移譲の仕組みとモニタリング機能の確立が重要だ。人事制度・評価制度もアジャイル体制に対応するように変更した。フロアに関してはメンバーが柔軟に集まれるように設定し、専門のコミュニケーションツールも準備した。
<組織構造の変革>
縦割り構造から脱却するため、社長の下にトライブリードとプロダクトオーナーを付け、決裁など必要な権限も付与した。目的別にスクワッドを作り、マーケティング・商品開発・システム開発などのスキルを持った各メンバーがアサインされる形だ。エンパワーメントがスムーズに進み、機能的かつ横断的なクロスファンクショナルチームの組成により、組織の縦割りを打破した。承認プロセスの階層を最小限にすることで、意思決定の機動性が向上した。
<アジャイルの実践状況>
2019年のアジャイルチーム数は21であったが、2021年には69に増加した。累計アジャイルメンバー数は167名から876名、累計トレーニング受講者数も2,238名から5,277名となった。課長以上の管理職は全員、基礎のトレーニングを受講している。誰一人としてアジャイルから取りこぼさないことを目標に進めてきた結果である。
<アジャイルの成果>
商品開発に関して、新商品のスペック検討機関を削減し、スピーディーな価値提供を実現した。従来の保険商品は8~11ヵ月要していたが、クロスファンクショナルチームのアジャイル体制によって4ヵ月と半減した。保険商品を世に出すまでの期間の短縮につながった。
感染リスクやお客様ニーズの変化に対応し、オンラインでの保険相談・申込サービスを用意した。開発期間は6か月と、企画からリリースまでスピーディーに実現した。アジャイルでは反復・改善が重要であり、次の2ヵ月で新たな機能を追加。告知内容をお客様のスマートフォンにて直接入力できる機能をリリースした。サービスを世に出してからも、お客様の声に耳を傾け、サービス内容を継続してブラッシュアップすることは重要だ。
<DXのこれまでの取組み>
これまでの取組み事例をいくつかご紹介する。まずはオンライン上で面談・保険申込ができるサービスの開発で、お客様と会えない状況でもいかに保険相談を実現するかを解決するための取組みだ。重視したのは「お客様に寄り添うこと」であり、オンライン完結ではなく、人が介在する仕組みだ。手続きもデジタル化され、印鑑レスで契約ができる。
AIによる募集人サポートでは、ベテランの募集人やコールセンターの営業ノウハウをAIに移植した。お客様との会話内容や音声トーンをAIが解析し、アドバイスを送るシステムだ。特に経験の浅い募集人の営業活動を支援するために活用している。
3Dアバターチャットボットは、無機質ではない自然なコミュニケーションが特徴だ。表情の変化やまばたき、話す言葉に合わせて口を動かす。24時間365日利用可能で、コールセンターの営業時間外の問い合わせにも対応可能なため、コールセンターへのコール量の削減にもつながった。
AIロボット(temi)はAIアシスタンス機能を持った自律走行型のパーソナルロボットだ。在宅勤務社員向けとペアレンツハウス利用者向けの2種類のサービスがある。オフィスのメンバーや離れたご家族と会話し、同じ時間を共有することができる。
<DXの今後の取組み>
今後はリアルの代理店店舗、デジタルの代理店店舗の融合が極めて重要と考えている。店頭に設置したミラーに相性診断や肌診断など様々なコンテンツを搭載し、お客様の関心を引くことで来店を誘致する。ホロレンズでは視覚的・直観的にわかりやすい3Dコンテンツを提供し、がん検診受診を促進する。さらなるオープンイノベーションにより、業界の垣根を超えたプラットフォームを構築し、お客様の日々の生活に寄り添った新たな価値の創造を目指す。