「顧客対応を自動化するチャットボット・ボイスボット活用最前線~個人情報を取扱う手続きへの対応とサポートDXの実現に向けて~」
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【講演者】
- モビルス株式会社
執行役員
柏原 学 氏<モビルスについて>
当社の主な事業はコンタクトセンター向けのSaaSプロダクト(MOBIシリーズ)などのCXソリューション提供だ。システムの提供だけでなく、顧客ニーズをヒアリングしたうえでROIを設定し、最適なシステムを提案している。MOBIシリーズは金融・メーカー・EX・ITサービスなど、200社以上で導入して頂いた。直近では金融機関や地方自治体での導入が増えている状況だ。
<カスタマーサポート領域における課題>
消費者の不満・悩みとして、電話で待たされる、夜間・休日に対応してもらえない、FAQや説明書が分かりにくいといった点が挙げられる。一方でコンタクトセンターでは、スタッフの早期退職、IT効率化によるコスト削減、全国レベルのBCP実現などが課題だ。顧客サポートに求められるテクノロジーも、音声からテキストへ、有人から自動化へ、対面からリモートへ、センターから在宅へとトレンドが変化している。
<チャットボット導入での課題>
チャットボットの導入では、正答率が低い、有人チャットの応対効率が高まらない、解決率が上がらないといった課題が想定される。チャットが十分に利用されていないことが真の課題だが、その理由はチャットへの導線が良くないこと、チャットサポートの品質が低いことの2点だ。
従来の問い合わせフローは電話に集中し、なかなか呼量を減らせない。MOBIシリーズ導入後の問い合わせフローでは、チャットボット・有人チャット・ボイスボットの導入やWebや資料で誘導により、受電・折り返し対応が減少する。コンタクトリーズンを分析・整理したうえで最適なサポートチャネルを導き出す。オペレーションの順番に沿ってやるべきことを考えていくことが重要だ。
顧客接点のノンボイス対応を進めた成果が出始めており、ある企業様ではノンボイス比率50%を達成された。さらにノンボイス化を高める方法があり、チャットボットによる定型手続き業務の自動化と、ボイスボットによる定型手続き業務の自動化の2つだ。
<ボイスボットによる定型手続き業務の自動化>
あるアンケート調査では、問い合わせの際にまず電話を利用すると回答した人が43.9%いる一方で、解決するなら必ずしも人の応対でなくていいと回答した人が63.1%となっている。このことからボイスボット導入の余地があることが分かる。ある企業のROI試算の例を紹介すると、センター座席200席のうち20%をボイスボットに代替することで、年間1.2億円の費用削減効果となった。
<ボイスボットの導入事例>
SBIいきいき少額短期保険様ではAI電話自動応答システム「MOBI VOICE」(モビボイス)を導入し、営業時間外、あふれ呼対応でご活用頂いている。新規申込みの検討の資料請求では機会損失を削減し、契約者情報の変更では応答コストの削減と顧客の利便性向上につながった。同じグループのSBI生命様では、「MOBI VOICE」を生命保険料控除証明書の再発行受付で活用されている。
ここで「MOBI VOICE」の実際の画面をデモでお見せする。画面には発話される内容がテキストで掲載されている。ここに電話をかけると、質問が始まるので氏名や会社住所などを回答する。終了するとSMSに確認・編集画面へのURLが届き、回答内容をユーザーが編集・保存できる。保存した回答内容は 「MOBI VOICE」 上に登録され、オペレーターが見られる仕組みだ。
<チャットボットによる定型手続き業務の自動化>
顧客のノンボイス化には、チャットボットと有人チャットの併用が不可欠だ。よって当社はオペレーターチャット・シナリオ型チャットボット・AIチャットボットの3点を組み合わせて提案している。お客様から問い合わせが来るとまずはシナリオボットでよくある質問や簡単な質問など、コンタクトリーズンによって振り分ける。解決しなければAIチャットボットにエスカレーションして対話型で回答する。AIでも解決しなければオペレーターに繋ぐ仕組みだ。その際オペレーターに繋ぐ前に要件を追加で聞き取り、スムーズな対応を実現する。ヒアリングが終わったらオペレーターを呼び出して対応し、定型の手続きはチャットボットに戻す。
<アニコム損害保険様の導入事例>
アニコム損害保険様は、保険金請求業務をLINEアカウントによってすべて自動で行っている。お客様は診断書などの必要な画像をアップロードし、日付・病状・傷病名などを入力するだけで、保険金請求が可能だ。従来は1時間ほどかかっていた業務だが、自動化によって数分でできるようになった利用者数も右肩上がりで増加している。
<チャットボットを活用した個人情報の取り扱い方法>
ノンボイス比率50%を達成したその先で重要となるキーワードの1つが、個人情報取り扱いだ。その理由として、本人確認を必要とする問い合わせ業務比率を業種別に見ると、メーカー以外は金融も含めて50%を超えていることが挙げられる。また定型化しやすい業務比率もほぼ半数となっている。
以前とあるネット銀行様と、AIチャットボットで住所変更を行う事例でPOCをさせて頂いた。しかし最後に個人情報のログがチャットに残ってしまうのが課題であった。先日リリースした「Secure Path」を利用することにより、その課題も解決できる。
<チャットサポートセキュリティ「Secure Path」>
当社が独自に開発したセキュア・コミュニケーション機能で、クレジットカード決済で求められるPCI DSS準拠で暗号化・保護され、最高レベルのセキュリティを実現する。従来、本人確認を伴う領域はなかなかチャットではサポートしきれなかった。これに対して 「Secure Path」 で安全に個人情報を取得・管理することで、チャットサポートが電話と同等となり、対応領域が圧倒的に大きく広がる。
< 「Secure Path」 の基本運用フロー>
まずチャットオペレーターが 「Secure Path」 に特別なフォームをリクエストしてお客様を誘導する。お客様が入力する個人情報は 「Secure Path」 サーバーに記録され、チャットオペレーターのほうには届かない。お客様が個人情報を入力したという通知のみが届く。オペレーターは 「Secure Path」 サーバーで表示される個人情報を、外部基幹システムや顧客管理システムと照会し、後続の手続きへと進んでいく。チャットのログには個人情報が残らずに運用が可能になる仕組みだ。
<「Secure Path」 のセキュリティ性が高い理由>
セキュリティ性が高い理由は主に4つあり、ユーザーフォームの有効時間・回答制限があること、お客様を担当しているオペレーターのみ情報を見られること、暗号化され保存期間や最大閲覧時間が制限されていること、お客様専用環境を用意することだ。万一個人情報がチャット上で入力されても、システムが自動的にアラートを出してオペレーターに注意喚起できる。またユーザーからの個人情報送信の防止、誤って入った個人情報の自動削除などの機能もある。
<ベネッセコーポレーション様のPOC事例>
ベネッセ様では全体の導線設計を見直している過程で、LINEを使った契約者の変更手続きで 「Secure Path」 をご利用頂いている。目的はチャット手続きに対するお客様の受容度を測ること、利便性が上がるかどうかを確認すること、ノンボイス対応の拡大ポテンシャルを確認することだ。POCの効果として、2021年9~10月のフェーズ1では、利用満足度と今後の利用意向がともに95%を記録した。金融機関でも 「Secure Path」 をキャッシュカードの再発行や、保険の住所変更などの領域でご利用いただけると考えている。そして、今後の機能拡張により、本人確認の部分を生体認証やマイナンバーにより自動化していくとこまで展開していければと考えている。
<まとめ>
消費者の不満や悩み、コンタクトセンターの課題を解決するためには、顧客サポートに適したテクノロジーの活用が必須であり、チャットボット、ボイスボット、有人チャットを併用することで、定型手続き業務のノンボイス化が可能となり、受付手続きなどの自動化を進めていくことができる。問い合わせ内容に基づいたアプローチによって、最適なソリューションの適用範囲を定め、ノンボイス対応を進めた企業では、すでに成果が現れている。金融機関でも個人情報が必要なお問合せ業務が多くあるが、当社の「Secure Path」を併せてご利用頂く事で、PCI DSS準拠で暗号化・保護された最高レベルのセキュリティを実現し、チャットサポートの対応範囲を大きく広げ、安心してご利用いただけるようになると考えている。ぜひ顧客対応のデジタル化や自動化に課題感を持っている方は当社までご相談を頂ければと思っている。
◆講演企業情報
モビルス株式会社:https://mobilus.co.jp - モビルス株式会社