2023年6月8日(木)開催 MANAGEMENT WEBINAR「人事領域におけるエンゲージメント向上と経営戦略」<アフターレポート>

2023年6月8日(木)開催 MANAGEMENT WEBINAR「人事領域におけるエンゲージメント向上と経営戦略」<アフターレポート>

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2023年6月8日(木)セミナーインフォ主催 MANAGEMENT WEBINAR「人事領域におけるエンゲージメント向上と経営戦略」が開催された。従業員のエンゲージメント向上は、企業の生産性、効率性、従業員の定着率、および企業イメージの向上につながり、経営戦略に大きな影響を与える。企業の持続的な成長に必要不可欠なエンゲージメントの向上には、コミュニケーションの改善や社員参加型のイベントの開催、働き方改革の推進、社員の成長支援などの取り組みが有効である。本ウェビナーでは、人事領域における戦略について、三菱重工業株式会社、カゴメ株式会社より自社の取り組みを解説いただき、人事や組織改革に資する情報をお届けした。

  1. 三菱重工グループのHRDXプロジェクトの軌跡
    三菱重工業株式会社 引地 淳 氏
  2. 「人的資本経営」を目指し毎年進化するカゴメの人事制度
     ~Withコロナ時代の経営戦略と人材戦略の連動を目指して~
    カゴメ株式会社 有沢 正人 氏
  3. 【ご紹介動画】株式会社カオナビ

三菱重工グループのHRDXプロジェクトの軌跡

基調講演
【講演者】
三菱重工業株式会社
HRマネジメント部長
引地 淳 氏

三菱重工グループについて

当グループは造船やロケット・プラントなどのイメージが強いが、その他にもレジャー施設や文化・スポーツ施設、交通システム、物流のフォークリフトなど多様な事業を展開している。2021年度の売上収益は3兆8,602億円で、その内エナジー/原子力が43%、プラント・インフラが17%、物流・冷熱・ドライブシステムが25%、民間機/防衛・宇宙が16%となっている。

海外グループ会社数は連結で188社、国内グループ会社数は68社、連結の社員数は78,486人の規模だ(2022年3月31日時点)。全グループ員とともに事業の成長・拡大を実現している。

当グループはカーボンニュートラルに関して「MISSION NET ZERO」の取り組みを行っており、2040年のNet Zero達成を目標としている。気候変動対策でリーダーとしての役割を果たすため、一般的な企業が掲げる2050年での達成より10年前倒しでの達成を目指している。

三菱重工のHR組織再編

当グループでは中期経営計画の達成に向け、2021事業計画を推進中だ。HR部門としては、戦略機能の強化、事業支援機能の強化、環境変化への適応の3点について取り組んでいる。2022年4月にHR組織を再編し、HRの機能を4つに分類した。「HRリーダーシップ」は全体の戦略・企画立案を行う。「CoE」は専門各領域のエキスパートで、グループHR施策の制度設計やソリューション提供を担う。「HRBP」は事業部門での戦略パートナーで、こちらでグループHRDX推進を行っている。「プロセスソリューション」はグループ全体に係る効率的なシステムの開発・運営が主な役割だ。

また、HRリーダーシップを担う組織としてHR改革推進室を新設した。推進室には2つのグループがあり、企画グループはHR全般のコントローラーで、HR施策の立案、HR要員のリソース計画・運営・育成を行う。もう1つのタレントマネジメント計画グループは、入社から退職までの人事制度の再設計と、経営幹部候補人材育成の企画・運営を担う。HR改革推進室で立案する各施策について、HR戦略部およびHRマネジメント部が展開・推進し、MHIパーソネルが実務面を推進し、適宜フィードバックをする流れだ。

HRシステムにおける課題とソリューション

HRDXについて、HRの目指す姿を定義すると同時にシステム領域の課題を整理した。目指す姿は、グローバルグループ経営対応、ダイバーシティ対応、プロセスソリューション(業務高度化へのシフト)だ。一方でシステム領域の課題は、グローバル/ローカルの最適経営への対応、現行システムのサポート切れ、MHIグループの固定費圧縮、ユーザー・インターフェイスの改善などであった。

これらを解決するためのアプローチの基本方針は、HR部門役割の大転換で、事業に貢献できる真のビジネスパートナーとなることだ。人事システムの刷新については単なるシステムリプレースではなく、グループHR戦略による事業活動への貢献を念頭に置いて取り組む。グループHR施策は、グループ標準規則の整備、共通システムの構築、共通BPOの推進の3点だ。事業への価値提供としては、ダッシュボード機能等での人材の視える化、HRコンサルタントとしてのソリューション提供、最新のIT導入による利便性向上・生産性向上への寄与だ。

国内HRDX PJについて

グループ横断のHR施策に最新DXを組み合わせ、グループ内にワンプラットフォームの新たな価値を提供することを目指して取り組んだ。人事労政戦略の3本柱は、グループ標準規則、共通システム、共通BPOだ。このうち、当グループが特に重視したのがグループ標準規則である。システムの標準効率化によってコスト削減やHR高度化を実現し、経営強化に貢献する。また、グループ社員にとって分かりやすく、利便性や質の高い施策・サービスの提供に繋がる。

2021年10月に国内プラットフォーム「POSITIVE」の本番稼働を開始し、2023年10月時点で17社・40,000人に導入完了した。海外・国内ともにデータはグローバルプラットフォームのSAP SuccessFactorsに取り込まれる。これにより、デイリーで人事データの分析や統計が取れるようになった。

三菱重工グループのHRシステム構成

国内では基幹システム「POSITIVE」で、人事管理や給与管理、従業員向けWebの運用を行っている。主要業務システムとして勤怠管理の「TIME-3X」や旅費精算の「SAP Concur」を用いている。多くのユーザーが利用する仕組みについては、ユーザー・インターフェイス向上のため「SmartHR」によるスマホでの手続き、「Techtouch」によるガイドツール作成などを行っている。クラウドサービスでは、電子契約の「クラウドサイン」、請求の電子化ができる「楽楽明細」を導入している。今後は業務高度化のため、人材データの視える化・活用、タレントマネジメントに注力していく。

国内HRシステム刷新PJの導入効果

投資回収に関して、4年で元を取るという計画を立てて取り組んでいる。初期費用は当然発生するが、省力化やシステム維持費の削減などほぼ計画通りに進捗しており、4年で投資回収が完了する見込みだ。

HRオペレーション人員について、HRシステム導入前を100とした場合、本格稼働後は約55にまで低減できた。年末調整の問い合わせ件数は導入当初は1,000件を超えていたが、SmartHRの画面にコメントを追加する等の工夫で、約50件にまで減少した。給与明細は8割が紙だったが導入後は数%となり、現在はほぼWeb化された状況だ。

HRシステムは2023年4月時点において、人員ベースで67%まで導入が完了した。2024年の4月には、80%の人口カバー率を達成する見込みだ。それ以降も継続的に取り組みを行い、最終的には90%以上を達成したいと考えている。

従業員コミュニケーション

最後に従業員コミュニケーションについて工夫したポイントをお話しする。1年間、月に1回ずつHR施策に関する情報をWebで発信した。人事労政戦略3本柱やHR施策の利点について紹介した。また、年末調整や給与明細などについて、現状で必要な手続き、新システムでの変更ポイントなどをまとめてPRした。SmartHRの主要な機能である入社手続き、WEB明細、文書配布などについても紹介した。問い合わせ対応やマニュアルといった項目も、今後はワンストップに切り替えると案内した。これまでシステムのリニューアルでは説明会を行ってきたが、動画を作成することでいつでも閲覧できるようにした。

新システム立ち上げに合わせて、社内HRポータルサイトも全面リニューアルを行った。各種メニューを画面に集めて、ワンストップでサービス提供が可能な仕組みとした。MHIグループの社内広報誌でPRを行う、PR動画の配信で操作方法を一括共有するなどの取り組みも行った。

最後に

人事労政戦略3本柱のうち、我々が特に注力したのが標準規則の導入で、それにより共通BPOの提供で効率化を図った。当グループのHRDXはスモールスタートではなく、本体も含めた大所帯から導入を進めた点も特徴だ。様々な施策について、ユーザー目線で取り組むよう工夫をしている。