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【徹底解説】コンセッション事業の近時の動向と今後の展望

コンセッション方式によるPFI事業を活用した公共インフラの民間運営については、政府が積極的に推進し、事例の蓄積が進むとともに、官民間の合理的なリスク分担が模索されている。2018年には重要な法改正があり、今後益々コンセッションの活用が進む見込みである。そこで、直近の法改正や各分野のコンセッションにおける課題・今後の展望等を専門の弁護士が概説する。

【徹底解説】コンセッション事業の近時の動向と今後の展望
  1. コンセッションとは
  2. 政府による後押しとPFI
  3. 運営権ガイドラインの改正 ~リスク分担・ファイナンスの観点から~
  4. 水道法改正 ~水道事業の課題と対応策の1つとしての官民連携~
  5. コンセッションの導入状況
  6. セクション別実務動向① 空港
  7. セクション別実務動向② 上下水道
  8. セクション別実務動向③ 文教施設、MICE施設
  9. その他の注目すべき動向

コンセッションとは

「コンセッション」(公共施設等運営事業)とは、公共施設等の所有権を公共に残したまま、民間事業者がこれを運営する権利すなわち「運営権」の設定を受けるPFI事業である。

民間事業者(運営権者)は、公共施設等の利用者から利用料金を収受でき、創意工夫をもって公共施設等の運営を行うことが期待される。

政府による後押しとPFI

政府が公表している未来投資戦略及びPPP/PFI推進アクションプランでは、PPP/PFI(パブリック・プライベート・パートナーシップ/プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)の推進等を重点施策として掲げており、特にコンセッションの取組強化が強調されている。それらの流れを受けて、2018年には実務上重要な法律・ガイドラインの改正が行われた。

PFI法改正 ~案件推進の支援等~

PFI法は正式名称を「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」といい、PFI事業に関する基本的なルールを定める。1999年の制定時にはハコモノの施設整備等に関するPFI事業が主な対象であったが、2011年改正によりコンセッション方式が導入された。そして、2018年にも、次の3点に関する改正が行われた。

  1. PPP/PFI案件に関する国の支援機能の強化等(ワンストップ窓口の創設、助言機能の強化)
  2. 公共施設等運営権者が指定管理者を兼ねる場合における地方自治法の特例の創設(料金設定についての特例、運営権移転に伴う指定管理者の指定に関する特例)
  3. 水道・下水道事業に対する財政融資資金の繰上償還に係る補助金の免除等

コンセッションによるPFI事業は事例の蓄積が進み、今後は案件種類の多様化や地方公共団体による導入の拡大も予想される。

2018年PFI法改正は、このような流れを支援し、あるいは障壁を取り除くための改正と位置付けられよう。改正の概要については、内閣府PPP/PFI推進室のウェブサイトにもまとめられている。

改正項目のうち③は、ファイナンスにも関係する。これは水道・下水道事業の運営権を設定した地方公共団体に対し、当該事業について国から貸し付けられた財政融資資金の繰上償還を認め、その際の補償金支払を免除するというものである。2018年度から2021年度までの間に実施方針条例を定めること等が要件とされている。

同改正により地方公共団体が運営権対価を(分割払いではなく)一括払いで受領し、地方債等を繰上償還するといった方法への障壁が1つ取り除かれる。これは民間事業者において運営権対価を一括で資金調達することが前提となるため、後述の通り、ファイナンスリスクが民間に移転されることを意味する。

これらの制度改正がコンセッション事業の促進策として効果を持つか否かは、今後の実務運用に対する検証が待たれる。

運営権ガイドラインの改正 ~リスク分担・ファイナンスの観点から~

公共インフラの運営は、通常の民間事業とは異なり、事業期間が長期に亘るうえ、事業の選択・撤退が自由にできない。そのため、官民間の契約において、不測の事態が生じた場合におけるリスク分担を予め定めておくことが重要である。

この点について従前より公共のガイドライン等が公表されていたが、事例の積み重ねと共に一定の課題が指摘され、未来投資戦略2017・PPP/PFI推進アクションプラン(平成29年度改定版)でもコンセッション方式の改善等を図ることが明記されていた。

このような背景の下、2018年に「公共施設等運営権及び公共施設等運営事業に関するガイドライン」(運営権ガイドライン)が改正された。

改正内容は内閣府PPP/PFI推進室のウェブサイトでもまとめられているように多項目に亘る。官民のリスク分担という観点からは、以下のように、①民間によるリスク判断の前提の確保(情報提供の充実、プロセス透明化・適正化等)や、②ファイナンスの観点も含む、官民のリスク分担のあり方に関する点が重要である。

重要項目① 民間によるリスク判断の前提の確保

  • 公共で想定する運営権対価・VFM(Value For Money)算定方法の明示
  • 民間事業者選定手続きにおける運営権対価算定根拠やデューディリジェンス結果等、管理者側の各種情報の積極的な開示
  • 外国企業の応募が想定される場合の公共による各種資料の英語版準備
  • 実質的な情報交換を実現するための競争的対話の回数・期間等に関する柔軟な設定
  • 事業者選定時の審査委員会の議事録について、(民間事業者のノウハウ等の保護に留意しつつ、)原則公開化

重要項目② リスク分担

  • 瑕疵担保責任等に関する官民のリスク分担のあり方や手続きの例の提示
  • 運営権者による更新投資によるバリューアップ相当分の公共等による買い取り・支払いに関する方向性の明示
  • 運営権対価の支払いにつき、一括払いの検討を規定(下記参照)

ファイナンス(資金調達・投資)の観点からは、運営権者の株式取得や運営権対価の支払方法に関する改正項目が注目される。

運営権者による議決権株式の譲渡については、一般に公共の同意を要するとされているが、改正により同意要件の明確化が盛り込まれた。また、LPSによる運営権者の株式取得に関するルールとして、無限責任組合員(GP)の同意なく有限責任組合員(LP)の追加・交代ができないことなどが明記された。

LPというパッシブな投資家の存在を前提に、そのような投資について公共が直接制限を及ぼさないという側面を含むものである。公共インフラに関するマーケットの成熟のためには、セカンダリーマーケットの醸成や、様々なニーズの投資家を受入れのための素地が必要となる。改正は、このような点を意識したものと評価することができよう。

改正運営権ガイドラインは、運営権対価の支払いにつき、分割払いではなく一括払いの検討を規定する。運営権対価の支払方法については、先行事例で分割払いの案件が少なからず見られるが、これは一種のセラーファイナンスの要素を含む。

改正は、アップフロントの一括払い形式によりファイナンスリスクを民間に移転し、民間の資金提供を前提とした案件も推進すべきとの指摘に応えるものである。

水道法改正 ~水道事業の課題と対応策の1つとしての官民連携~

改正の概要

2018年12月に改正水道法が成立した。人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の水道の直面する課題に対応し、水道事業の基盤強化を図ることを目的とする。

水道法改正の3つポイント

改正項目の柱は、以下の3点である。

  1. 広域連携の推進に関する改正(都道府県主導により、複数の市町村の水道事業の統合等によりスケールメリットを活かして水道事業の効率化のための制度整備)
  2. アセットマネジメントの推進に関する改正(台帳整備や計画的に水道の更新や耐震化を進めることを促進)
  3. 官民連携の推進に関する改正(新たなコンセッション方式の導入)

以下では、本稿のテーマに関係の深い③官民連携の推進に関する改正(新たなコンセッション方式の導入)について詳述する。なお、世間の関心も③に集まっているが、官民連携は水道事業が抱える課題への対応方法の1つの選択肢に過ぎない。継続的かつ良質な水道サービスの提供という観点からは、①・②の改正も重要である。改正内容については厚生労働省のウェブサイトにもまとめられている。

改正水道法は、一部を除いて2019年12月上旬頃までに施行される。今後、政省令の改正やパブリックコメントの手続を経て、運用レベルでのルールが策定されることになる。

新たなコンセッション方式の導入

改正水道法は新たなコンセッション方式を導入するものであるが、改正前でも、水道事業についてコンセッション事業を行うことはできた。しかし、そのためには市町村が保有している水道事業の認可を廃止し、民間事業者が新たに認可を取得して給水の責任主体となることが求められていた。

改正前の方式については、コンセッション実施時でも災害発生等の不測の事態において、市町村が引き続き責任主体となるべきとの声があった。そこで改正水道法では、市町村が水道事業認可を維持しつつ、民間事業者が運営権の設定を受けることを可能にする制度改正が行われた。

改正後の制度では、民間事業者は、厚生労働大臣から許可(水道事業「認可」とは別のもの)を受けることにより、コンセッション事業を行うことができる。一方、市町村は水道事業認可を維持することで、最終的な給水責任の主体であり続ける。そのため、災害時の復旧事業に対する国庫補助等を受けられる点等は、運営権設定前後で異ならないことになる。

民間事業者による水道サービスの提供については、これまでも業務委託方式や従来型(コンセッション以外)のPFI事業において多くの実例がある。コンセッション方式は、これらに新たな選択肢を加えるものであり、官民連携の唯一の選択肢ではない。事業者にとって事業運営の柔軟性が確保できる半面、リスクも負担するコンセッション方式によることが適切かどうかについては、官民双方より、事業ごとに慎重な検討が必要との指摘もされている。

コンセッションの導入状況

先行事例の概況

2011年のPFI法改正でコンセッション方式が導入されてから約7年、コンセッションは多岐にわたる分野で導入が進んでいる。下表は2019年2月時点でコンセッション方式の実施方針公表以降の段階にある主な案件を整理したものである。

なお、先行事例の状況については、内閣府PPP/PFI推進室のウェブサイト(コンセッション事業等の重点分野の進捗状況(平成30年7月1日時点))でもまとめられている。

政府が掲げる数値目標(PPP/PFI推進アクションプラン)

政府が2016年から毎年公表・改定しているPPP/PFI推進アクションプランでは、事業規模目標が明示されている。

具体的には、PPP/PFI全体の事業規模の目標は21兆円、特にコンセッション方式を活用したPFIの目標は7兆円とされている。

また、民間ビジネス拡大効果が特に高い分野や、今後ストックの維持更新について大きな課題を抱えることが予想される分野を重点分野として指定するとともに、重点分野について具体的目標案件数を定めている。

以下では、セクション別の実務動向として、空港・上下水道・文教施設/MICE施設について解説する。

セクション別実務動向① 空港

空港は、日本で最初にコンセッションが導入され、コンセッションの実務を牽引してきた分野であり、既述の通り複数の先行事例がある。近時も、年間乗降客数が2000万人を超える福岡空港や、7空港の一体運営を前提とする北海道内7空港など、新たな試みが行われており、コンセッション実務の最先端を走っている。

以下では、これまでの実務で蓄積された空港コンセッション特有の主な課題・論点を紹介する。

「航空系事業」と「非航空系事業」の一体運営

空港事業は、滑走路などの空港施設を管理・運営する「航空系事業」と、商業施設を含む空港ターミナルビルなどを管理・運営する「非航空系事業」から構成される。現状、大多数の空港で国又は地方公共団体が航空系事業の事業主体、第三セクター等の民間事業者が非航空系事業の事業主体になっている。

空港の効率的な運営に当たっては、航空系事業と非航空系事業を一体運営することが求められる。そのため、空港コンセッションの先行事例はいずれも、航空系事業と非航空系事業の一体化を前提としたスキームを採用している。

航空系事業と非航空系事業の一体運営を実現するためのスキームは、大きく2つに分けられる。

  1. 運営権の設定とは別に、運営権者にビル施設等事業者の株式を取得させる取得型
  2. ビル施設の所有権を公共が一旦取得し、航空系事業の施設とまとめて運営権設定対象にする運営権設定型

これまでの多くの案件では、「①運営権の設定とは別に、運営権者にビル施設等事業者の株式を取得させる取得型」が採用されている。

不可抗力と事業継続措置

2018年9月上旬に台風21号が関西を直撃し関西国際空港が浸水したことや、同時期に発生した北海道胆振東部地震で、新千歳空港が一時閉鎖を余儀なくされたことは記憶に新しいであろう。

自然災害など官民双方によりコントロールができないリスクは「不可抗力」と呼ばれるが、空港コンセッションにおける不可抗力リスクの取扱いは重要なポイントである。先行事例において、官民における不可抗力リスクの分担については、一定の方向性を見出すことができる。

先行事例では、不可抗力リスクは保険によりカバーすることを前提に、基本的には民間事業者が負担する。一方、保険でカバーできず、民間事業者が事業継続を行うことができないレベルの不可抗力については、例外的に公共がリスクを負担する場合があると整理されている。

官民の契約(実施契約等)の多くの先行事例では、不可抗力により事業遂行が困難となったときに、保険による対応ができず公共が必要性を認めた場合には、公共の費用及び責任において事業継続措置を実施するとされている。

関西国際空港における台風の被害とその復旧対応については、報道レベルでも様々な議論が見られた。自然災害に見舞われることの多い我が国においてこの点は十分に検討を尽くすべき論点といえ、今後の議論の深化が望まれる。

更新投資の終了時の扱い

コンセッション事業において、運営権者は事業期間中に自らの負担において運営権設定対象施設に関して更新投資を行う。ところが、運営権設定対象施設の所有権は管理者に残るため、事業期間終了までに更新投資分の回収ができないケースが生じうる。

このような問題に対して、運営権ガイドラインは、運営権設定対象施設のバリューアップ相当分について、公共等による買い取りの仕組みの導入に言及している。とりわけ、2018年の改正では、事業期間終了時点で更新投資の価値が残存しうることを前提に、買取りに関する手続の考え方が整理された。

この改正後に公表された北海道内7空港案件の募集要項も、運営権者が行う運営権設定対象施設に係る更新投資のうち、一定の要件を満たすものについては、事業期間終了時に事業者が費用を負担するとし、改正運営権ガイドラインの考え方が反映されている。

事業期間終了時点の残存価値について、公共による買取りは裁量に委ねられており更新投資時の予測可能性が必ずしも担保されていない点など、検討課題は残る。また、上記のほか、終了時の事業承継に関しては、運営権者において雇用していた従業員の取扱い等も実務的に重要な論点である。これらに関しては、今後も更なる検討が進むことが期待される。

セクション別実務動向② 上下水道

水道事業におけるコンセッション導入について先例はなく、過去に大阪市や奈良市が実施方針に関する条例案の提出まで至ったが、議会に否決されている。そのほか、宮城県等が具体的な検討を行っており、今後は水道法改正を背景に本腰を入れて導入を検討する地方公共団体が増加する可能性もある。

下水道事業については、浜松市が西遠処理区の浄化センター、中継ポンプ場等についてコンセッション方式を導入し、2018年4月から事業が開始された。また、高知県須崎市においても、2019年2月に下水道コンセッションの事業者が選定された。同市の事業は純粋な独立採算性ではなく、一部須崎市から民間に対してサービスの対価を支払う混合型である。

国土交通省は、下水道コンセッションに関するガイドラインを公表しているが、これらの先行事例を踏まえ、2019年1月より同ガイドライン改正のためのパブリックコメントを開始した

上下水道は安定した料金収入が見込まれる半面、収入の増加が難しいという事業特性がある。他方で、IT化によるアセットマネジメントの効率化等、民間事業者による創意工夫の余地はあると指摘されており、収益改善や事業運営の安定化に向けた一層の議論が期待される。

業務・責任の範囲

コンセッションの導入にあたっては、民間の業務範囲すなわち責任範囲が重要である。

一口に水道施設・下水道施設といっても複数の施設から構成される。水道施設は、取水施設・貯水施設・導水施設・浄水施設・送水施設・配水施設からなり、これらには導水管・送水管・配水管等の管路も含まれる。

下水道施設は、管路施設(管渠、マンホール、雨水吐室、ます、取付管等)・処理施設(水処理施設及び汚泥処理施設)・ポンプ施設によって構成される。

どこまでの施設を運営権設定対象とするか、計画立案・改修・維持管理といった業務のどの範囲を民間事業者に委ねるかがポイントとなろう。たとえば管路施設は上下水道の根幹をなすものであるが、管理の範囲が広域にわたり、求められる技術力や作業内容等が他の施設と異なるとの指摘もある。

先行事例である浜松市の下水道事業では管路施設は対象外とされたが、須崎市の下水道事業では、維持管理の限度で一部の管渠も対象とされた。

上下水道は地域住民にとって欠かせない生活インフラであるため、災害時における対応は重要な検討事項だ。国庫補助による財政支援を含め、サービス提供の最終的な責任は公共側にある。しかし、民間事業者においても、初動の対応をどのようにするか、また、復旧時の関わり方など、実施契約等において民間事業者の役割を明確にすることが必要となる。

公共性の高い上下水道については、公共側が、民間事業者によって担うこととなった事業をどのようにモニタリングをするかという点も重要である。公共側において深刻な人材不足が課題とされる中で中長期的なモニタリング体制をどう構築していくか、民間による事業運営に過度に介入しないようどうバランスをとるか、といった点が検討課題である。

利用料金

水道法改正に際しては、コンセッション方式の導入による水道料金の値上がり等を懸念する声も多く聞かれる。>しかし、運営権の設定を受けた民間事業者は、利用料金を収受する権限を認められるが、必ずしも金額等の自由な設定権限を有するわけではない。

水道・下水道のいずれも、利用料金は、管理責任を有する地方公共団体が定める条例の枠組み、上限、設定方法に従う必要がある。また、水道法・下水道法において、利用料金は総括原価主義の下で適正な原価計算に基づき設定しなければならないとされている。

もっとも、物価変動や当初想定できなかった法令変更による費用の増減など、利用料金の改定を検討する必要が生じる事態もありうる。

浜松市の下水道コンセッションでは、運営権者は原則として利用料金に関する決定権限を有しないものの、5年に1度の間隔で改定の提案ができるとされた。また、収入の大幅な変動等一定の事由が生じた場合にも、改定協議を求める権限が官民双方に付与されている。

セクション別実務動向③ 文教施設、MICE施設

文教施設は多種多様なものがあるが、PFI・コンセッションの文脈では以下の施設を指す。

文教施設のコンセッションの先行事例としては、国立女性教育会館(埼玉)、旧奈良監獄資料館の各事業が運営権の設定まで至っている。また、有明アリーナのコンセッション事業は、2018年7月に募集要項が公表された。

MICE施設は、企業・産業活動や研究・学会活動等と関連し、多くの集客が見込まれるビジネスイベントのための施設である。(「MICE」は「Meeting」「Incentive Travel」「Convention」「Exhibition/Event」の頭文字をつなげたものである)。

横浜みなとみらい国際コンベンションセンターや愛知県国際展示場のように、事業者選定にまで至った先行事例が存在する。

文教施設・MICE施設はいずれもアクションプランで重点分野とされていることもあり、新規案件の具体的な検討も進んでいる。

文教施設に関しては、文部科学省が2018年3月に公表した「文教施設におけるコンセッション事業に関する導入の手引き」で、文教施設の特徴を踏まえたコンセッション導入のためのポイントがまとめられている。

特徴とポイント

これらの施設は、上下水道など住民に必要不可欠な公共インフラと異なり、収入の増減の振れ幅が大きい。運営主体による運営能力のほかにも、景気や近隣における類似施設の建設といった外的要因にも大きく左右される。

そのため、需要リスクを完全に民間事業者に移転し、独立採算制とすることが適切か、事業の特徴を踏まえた検討が必要となろう。

とりわけ文教施設の中には施設の利用料金という収入だけでは経費が補えないものも少なくないようである。文科省の上記「手引き」では、独立採算制のコンセッション方式だけでなく、公共がサービス対価を民間に支払う方式を組み合わせた混合型などの利用検討も示唆されている。

文教施設、MICE施設の運営に関する特徴として、施設の改修・保全・修繕といった専らハード面に関わる能力と、イベントの企画・誘致・運営といったソフト面に関わる能力といった、異なる能力が要求される点が挙げられる。

コンセッション方式導入にあたってどのような側面を重視するかによって、入札プロセスの選定基準におけるウエイト(配点)や、官民のリスク分担の在り方に影響を与えうる。

民間事業者においても、専門性が異なる事業者によるコンソーシアムの組成が前提となろうが、内部での役割分担やインターフェースが事業成功のポイントとなろう。

その他の注目すべき動向

ここまでセクションごとのトレンドと特色を見てきたが、政府の積極的な後押しもあり、コンセッションのマーケットは拡大傾向にある。最後に、これまで触れなかったコンセッション全般の近時の動向と今後の展望について、いくつか特色を挙げたい。

特色① 案件の種類の多様化

1つ目は、案件の種類の多様化である。

上記で個別に触れたセクション以外にも、特別法を背景とした愛知県の道路コンセッション(運営権設定済み)や福岡市のクルーズ施設、公営住宅などがアクションプランで重点分野として言及されている。

同じく重点分野とされた公営水力発電については、鳥取県が2019年1月に水力発電事業のコンセッションについて実施方針を公表した。

中小規模案件を含む件数の増加や多様化により、地元の事業者や地域金融機関の関与を含め、プレーヤーの多様化ひいてはマーケットの拡大に結び付くことが期待される。

特色② バンドリング

2つ目は、バンドリングによるスケールメリット、相乗効果等を生かした事業運営である。

既に空港コンセッションでは、関空/伊丹・神戸空港の一体経営(但し、公募手続は別々であった)や、北海道内7空港プロジェクトのように、複数の空港を1事業者が運営することを目指した取組みがなされている。

改正水道法も、広域連携が改正項目の1つの柱となっており、今後は「広域連携×官民連携」による事業運営も検討されることになろう。

地域的なバンドリングだけでなく、異なる種類の事業を組み合わせることも今後広く検討されることが予想される。上下水道(・工業用水)の一体経営や、公共性の高い施設に商業施設を組み合わせた複合施設などは、既に具体的に議論されている。

バンドリングに関しては、一部の事業が悪化した場合における他事業への影響やその際の契約上の手当てをどうすべきかなど、新たな課題も指摘されている。今後の議論が深まることに期待したい。

本稿の内容は筆者らの私見であり、所属する法律事務所の見解ではない。また、本稿の内容は、現在進行中の案件も含め、本稿執筆時点までに一般的に公表された情報のみに基づく。

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