SMBC信託銀行が推進する顧客視点のDX戦略

SMBC信託銀行が推進する顧客視点のDX戦略

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個人の生活にデジタル技術やメディアが浸透する中、潜在顧客に適切な働きかけをするうえではサービスやマーケティングのDX(デジタルトランスフォーメーション)が欠かせなくなっている。本稿では、SMBC信託銀行が推進するDX戦略について話を聞いた。

  1. 顧客データベースで ターゲットを絞って広告
  2. 外貨積立にも相乗効果 他商品のオンライン完結も

顧客データベースで ターゲットを絞って広告

「PRESTIA」のブランドで外貨預金をはじめとした金融商品・サービスを提供するSMBC信託銀行(以下、SMBC信託)。2019年10月からは新たに、多通貨Visaデビット一体型キャッシュカードの「GLOBALPASS」を取り扱い始めた。同商品のリリースにあたりSMBC信託は、オンライン中心のマーケティング戦略を本格展開した。

マーケティング部部長の中野浩一氏は、「すでに『PRESTIA』を利用いただいている方や未利用だが関心を持っている潜在顧客に対して、『GLOBAL PASS』の利点を効果的に訴求するため、デジタルとデータを活用した広告活動を行っている」と話す。

新規顧客には大手ポータルサイトやSNS(交流サイト)でのオンライン広告、YouTubeでの動画配信のほか、世界の様々な国での利用シーンをイメージした記事を配信する特設サイト「GLOBAL PASS100」での情報発信を行っている。加えて、既存顧客にはEメールや会員ページでのバナー表示などで告知した。「当社のファンになっていただけるお客様を見つけるため、広告代理店のウェブ顧客行動データベースと当行の顧客データベースを用いてターゲットを絞り込み、特設サイトやランディングページに誘導した」と中野氏は語る(図表1)。

外貨積立にも相乗効果 他商品のオンライン完結も

「GLOBAL PASS」は、日本円を含めた18通貨の預金から、海外現地でのATMでの引き出しやショッピング(Eコマース含む)・レストランでの決済を外貨のまま直接行えるのも特徴だ。そのため、生活の様々なシーンで外貨を利用する人がメインの顧客層となるが、今回のデジタルマーケティングは他の商品にも相乗効果が見られるという。

商品開発部長の阿部豊憲氏は、「外貨積立は店頭申し込みのみとしていたが、『GLOBAL PASS』のリリースを見越して2019年8月からネット申し込みを可能として以降、申込件数は従来の1.5倍~2倍で推移している」と明かす。今後は外貨預金や送金、投資信託など、オンライン取引が可能な商品は、情報共有やリスク説明を含めて店頭取引からオンラインへのシフトがますます加速するかもしれない。

「信託、相続など対面の安心感やある程度の説明時間が求められる業務を店舗に集中させるなど、店舗とオンラインの使い分けによるリソースの最適化も含めて、既存の営業スタイルを見直す時期に来ているのだろう」(阿部氏)

2020年4月現在、SMBC信託は、「デジタル化の推進」に力を注いでいる。マーケティング部長の小林和成氏は、「マス広告では予算と量、時間をかけないと広告活動の目に見えた成果が測れなかったが、デジタルでは限られた予算内でも個別の広告効果が測りやすくなった。今回得られた知見を、今後の広告デザインの選定やSNS発信コンテンツ企画にも活かし、きめ細かなマーケティング活動を行いたい」と語った。

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