日本版SPAC(Special Purpose Acquisition Company:特別買収目的会社)の行方


SPACとはSpecial Purpose Acquisition Company(特別買収目的会社)の略称であり、買収を目的として設立される会社を意味する。米国発祥のスキームであり、新規株式公開(IPO)の際に用いられる仕組みである。従前より日本での制度化が議論されており、足元では、内閣官房の「新しい資本主義実現会議」の提言案にも含まれている状況だ。本稿では、SPAC制度や米国の状況を概観すると共に、日本での検討状況を確認したい。

  1. SPAC(Special Purpose Acquisition Company:特別買収目的会社)とは
  2. 日本での検討状況
目次

SPAC(Special Purpose Acquisition Company:特別買収目的会社)とは

SPACは、スポンサー(運営者)が買収および上場のために設立する特別目的会社であり、非上場会社の買収により、その非上場会社を上場させることを目的とする。SPACの上場時点においてはどの企業を買収するかは決まっておらず、「空箱」や「Blank Check Company(白紙小切手会社)」などとも呼ばれている。

SPACは通常スポンサーが出資した特別目的会社(SPC)として設立され、上場することで一般の投資家から資金調達を行う。そして、出資と調達資金で非上場会社の買収を行うこととなる。空箱であるが故に、上場時点での信用力の判断が難しい側面はあるが、スポンサーの保有株式に買収完了後1年間の譲渡制限(ロックアップ)がついていることや、買収完了後投資家から請求があった場合や期限までに買収が成立しなかった場合は、発行価額相当額で株式を償還するといった条件付けを行うことで、実質的な投資家保護を図っていることがポイントだ。

また、SPACは幅広い市場関係者にメリットのある仕組みだ。発行体(非上場会社)にとっては通常より短期間かつ低コストで上場が可能となる。また、一般の投資家にとっては経験豊かなスポンサーの目利きを経た非上場株式への投資機会として貴重であろう。なお、上場により幅広い投資家からの資金調達が可能であることは、スポンサーにとっても大きなメリットだ。

米国におけるSPACの上場は2020年に248件と急激に成長、2021年は604件と更に市場は拡大した。この背景には、金融緩和による金余りがあるものと推察されるが急激な市場の伸張ぶりには驚かされる。一方、2021年後半からは、米証券取引委員会(SEC)の監視強化により、やや勢いを減じた状況にある。なおSPACの活用はグローバルに広がりを見せており、主要先進国取引所において制度化され、アジアでも韓国やシンガポールで上場可能となっている。

村松 健 氏
寄稿
SBI金融経済研究所
事務局次長
村松 健 氏
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