【連載】SDGs達成に向けた今後の金融機関の在り方


連載企画「金融機関のビジネスモデル変革」の第三弾では、金融機関が持続可能な社会・地域を創る先導者であるため、今後の目指すべき方向性や可能性、実行のポイントについて解説する。

目次

SDGsに資する金融コンバージェンスの可能性

金融機関が新たな社会や地域モデルの共創パートナーとなるうえで、とりわけ注目すべきなのは、顧客の“目的”であるモノ・サービスにまつわる非金融サービスと“手段”である金融サービスを組み合わせた「金融コンバージェンス」を通じた価値創出の可能性だ。米国の著名なベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツでジェネラルパートナーを務めるアンジェラ・ストレンジ氏が「Every Company will be a Financial Services Company(全ての企業は金融サービス業になる)」と語ったことは記憶に新しい。

持続可能な社会づくりの中核エンジンとなり得る金融コンバージェンスを通じて、日常接点や企業活動を通じて得られる金融と非金融データを融合した徹底的な顧客理解・成果の可視化により、人々の根源的な価値享受の在り方を変え得る力、企業の課題解決・事業モデル転換を促進し得る力は、SDGs社会の実現に向けて大きな推進力になる。

例えば、需要サイドにおいては、持続可能なライフスタイルに転換した消費者を報いる社会創りに寄与できる可能性がある。現状は、プラットフォーマーを中心に「個社にとって都合の良い顧客を優遇する」仕組みに留まる傾向だが、金融機関が中心となり、自治体も含めたアライアンスで「社会や地域の未来にとって良い顧客を優遇する」仕組みを築くことができるのではないか。例えば、本人確認情報や口座・決済アカウント等を地域サービスの認証IDとして活用し、捕捉した地域での消費や奉仕活動等の様々なデータを元に、持続可能な地域創りへの貢献度合いをスコア化し、スコアに応じて消費・金融利用を優遇する好循環を生むことで、本質的で持続可能なライフスタイルへの行動変容を促せる可能性がある。

供給サイドにおいても、持続可能な事業モデルへの転換+成果の共創に寄与できる可能性がある。グローバル大手によるサプライヤーへの要求強化とともに、中小企業もSDGs対応を迫られつつあるが、単独で遂行できる企業は一握りと想定される。例えば、中小企業に対し、CO2削減や環境保全、サーキュラーエコノミーシフトに最適なソリューションのマッチング、財務と非財務情報に基づく経済価値と社会価値ベースの成果見える化、モニタリングを通じたPDCA支援による成果の創出、成果に応じた将来事業性評価によるファイナンスを一連の流れで提供できれば、持続可能な社会への転換に向けた共成長サイクルを生み出せる。

三由  優一 氏
寄稿
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
ストラテジーユニット/モニターデロイト シニアマネジャー
三由 優一 氏
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