【連載】SDGs達成に向けた今後の金融機関の在り方


連載企画「金融機関のビジネスモデル変革」の第三弾では、金融機関が持続可能な社会・地域を創る先導者であるため、今後の目指すべき方向性や可能性、実行のポイントについて解説する。

  1. 今後、金融機関が目指すべき方向性
  2. SDGsに資する金融コンバージェンスの可能性
  3. 戦略立案や実行におけるポイント
目次

本日のポイント

  • 今後、金融機関は、新たな社会・地域モデルづくりの中核的な役割を担う姿を目指すべき
  • そのためには、資金支援のみならず、顧客の根源的ニーズ充足や本業支援まで踏み込んだ金融コンバージェンス(金融と非金融が融合した価値・体験)の体現が重要
  • 変革に向けては、大局的・長期視点でのありたい姿の明確化やバックキャストでの取り組みテーマの見極め、及び共通価値の実現を目指す“同志”と共に産官学民連携によるエコシステム型での推進が肝となる

今後、金融機関が目指すべき方向性

この1、2年の間に、日本においてもSDGs(持続可能な開発目標)を様々な場面で耳にするようになった。SDGsの掲げる目標に多くの企業や個人が共鳴していることは間違いない。一方で、昨年のCOP26においても脱炭素に向けた資金不足が議題に挙がったように、SDGsの達成に向けて必要とされる資金の不足が大きな課題となっている。ESG投資の規模拡大などを背景にして、地球規模での課題解決につながる使途や機会に資金を呼び込む金融の力が試されていることは間違いない。また、アリババ創業者のジャックマー氏も2020年10月24日の上海金融フォーラムにおいて、「現在の金融システムは、2:8理論に代表される工業化時代の産物だ。今後は、80%を占める中小企業や若者に投資し、残り20%を動かす金融に創り変える必要がある」とSDGsに資する金融イノベーションの必要性を訴えている。

金融機関は、これまで、資金ニーズが発現した個人や企業に対し、待ち受け型で、回収が見込める顧客を中心に資金支援する経済合理性重視のファイナンス支援者であったと言える。現在は、資金ニーズに加え、根源的ニーズ充足や本業支援にまで踏み込み、予見型で、将来性が期待できる顧客を支援する成果創出プロモーターを目指す動きが広がりつつある。今後は、資本主義社会のひずみを打破するための新たな経済モデルへの転換がグローバルで叫ばれる状況を踏まえ、現在の経済モデル構築の一翼を担った金融機関は、金融仲介機能や信用創造機能の“進化”を通じた新たな社会や地域モデルの共創パートナーの立ち位置を目指すべきと考える。

三由  優一 氏
寄稿
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
ストラテジーユニット/モニターデロイト シニアマネジャー
三由 優一 氏
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