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戦略立案や実行におけるポイント
金融機関が新たな社会・地域モデルづくりの中核的な役割を果たすためには、既存の事業モデルを前提としない抜本的な変革が必要だ。そのためには、行政が描く社会・地域の将来展望(トップダウン)と、個人顧客の嗜好変化・行動変容や取引先企業が抱える経営課題(ボトムアップ)の両輪から、長期視点で金融機関が関係ステークホルダーに対して発揮したい存在価値・ありたい姿を明文化することが欠かせない。そのうえで、金融機関が有する強みの転用や、先進テクノロジーがもたらす金融イノベーションを切り口に具体的な取り組みを導出し、全社的な変革プランに落とし込むことが肝要だ。
また、実行フェーズにおいては、産官学民連携によるエコシステム形成の視点が重要だ。乗り越えるべき壁が多く、大きい社会課題の解決に挑むには、個社では限界があるため、共通価値(Creating Shared Value)の実現を目指すパートナーが力を結集して取り組む必要がある。そのためには、自前主義のスタンスから脱却し、パートナーと対等な立場で、共創共栄の関係を築く気概が重要だ。より良い社会・地域の実現に向けた存在価値を発揮する“大儀”を掲げ、あらゆるものに金融が溶け込む金融コンバージェンスをフックに、共感する“同志”を繋ぎ・大きな変革力を生み出すことができれば、金融機関が持続可能な社会・地域創りを先導する立ち位置を築ける可能性がある。
- 寄稿
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デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
ストラテジーユニット/モニターデロイト
シニアマネジャー
三由 優一 氏大手SIer、外資系コンサルティングファームを経て現職。金融機関に対する中長期戦略策定・新規事業立案・全社デジタル改革プラン策定・M&Aのほか、異業種に対する金融事業参入戦略・Fintechビジネス企画・海外展開プラン策定等の支援経験に富む。モニターデロイトジャパンにおけるFuture of Financeサービスをリードしており、脱炭素等を起点とした社会・地域課題解決に資する金融の在り方やサービス検討にも取り組んでいる。