目次
本日のポイント
- 直接金融における資金の流動性の供給者として、証券会社の根本的な存在価値は普遍である。
- 一方で、国内証券市場におけるプレイヤーの変化、取引手数料の無料化の加速、スマートフォンの普及に伴う顧客チャネルの変化、テクノロジーの活用に伴う商品・取引形態、決済手段の変化、非証券業との連携の加速等、この20年間で事業環境はで大きく変貌した。
- 今後は、資金の流動性の更なるクロスボーダー化、少子高齢化の加速やデジタル世代の割合の増加、ファイアーウォール規制の緩和による銀証連携の更なる加速、金融サービス仲介法の施行による金融サービス仲介業者の増加、STO、NFT等のデジタル証券の普及を含めた投資の多様化等、証券会社はこの先10年の社会の姿を描きつつ、今後の経営戦略を定める必要がある。
証券会社の役割
証券会社の本質的な役割は、「ブローカー」、「ディーラー」、「アンダーライター」、「セリング」業務を営みながら、直接金融の資金の流動性の供給者として、企業や個人の余剰資金に流動性を施し、資金需要者に資金を行き渡らせることで、経済や産業の発展に貢献することである。
リテール部門、市場部門といったセカンダリービジネスにおいては、機関投資家、法人・個人投資家の余剰資金や運用資金を、今後価値を生み出すべく地域や企業・事業への投資へ導くことであるし、インベストメント・バンキング部門といたプライマリービジネスにおいては、企業の資金調達を支援し、またマーチャント・バンキング部門は証券会社自らが企業の成長に投資をするものである。この本質的なビジネスモデルの根幹はこの20年間変わっていないし、今後10年で大きく変わることはないと考える。
- 寄稿
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デロイト トーマツ コンサルティング合同会社上原 隆太郎 氏
銀行・証券ユニット ディレクター 証券事業担当