【連載】証券会社のビジネスモデルの将来像


連載企画「金融機関のビジネスモデル変革」の第七弾では、証券会社のビジネスモデルを展望する。証券会社の本質的な役割と存在価値を改めて認識し、近年STO/NFT等によるデジタル証券への注目が高まってきているなかで、今後の証券業の変化と高度化に向けて解説する。

目次

これまでの20年の変化

今後10年でどのような変化が起きるか考える前に、まずはこの20年間で何が変わったのか振り返ってみる。大きくは3つポイントで捉えられる。

投資情報の民主化 / 投資のセルフサービス化

まずは証券会社と投資家における投資情報の非対称化は、インターネットや多くの投資情報の登場により劇的に変化した。投資に関わる情報は証券会社の営業マンに聞くのが当たり前だった時代は終わり、今やインターネットには投資判断に必要な情報が溢れている。個人投資家はインターネット、もしくはネット証券の投資情報を吟味し、オンラインで投資を行うようにになった。

データの電子化やテクノロジーによる業務の自動化・高度化

取引所の立会場の廃止や取引の電子化、株券電子化をはじめとして、紙ベースの情報やその伝達がデジタル化されシステム化が加速した。事務センターに多くの人材を抱え、人海戦術による膨大な事務処理に対応出来る大手が有利だった時代は終わり、テクノロジーを駆使し、口座開設、受発注、取引処理等の事務作業から如何に人の介在を排除し、システム化・自動化出来るかが重要な時代になった。また顧客チャネルについても、元来人的アドバイスを前提にした分散投資を、アルゴリズムが正しい分散投資を勧めるロボアドバイザーも登場している。

金融規制緩和による3つ壁の崩壊 (海外・国内、銀行・証券、金融・非金融)

金融規制の緩和により、3つの壁が崩れた。一つ目は国内金融市場における外国人投資家に対する壁。80年代20%にも満たなかった日本の証券取引所の外国人投資家の取引の比率は、今や60%以上を占めている。二つ目は、銀行と証券の壁。いわゆるファイアーウォール規制も緩和の方向で、銀証一体の経営に業界は向いている。三つ目は、金融と非金融との壁。非金融による証券事業参入や証券会社と小売、テレコム、プラットフォーマー等との連携も進んだ。

上原 隆太郎 氏
寄稿
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
銀行・証券ユニット ディレクター 証券事業担当
上原 隆太郎 氏
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