目次
本日のポイント
- 昨今、さまざまな非金融業界のプレイヤーが金融業界に参入している。資金力・体力のある大手は自前主義で全て賄えるが、そうでない企業は既存金融機関と協業することで金融参入する素地ができつつある
- 協業を検討する上で、非金融業と金融機関がお互いに何を強みとして補完し合うのかを見極めることが必要となる
異業種参入の形態
異業種による金融参入自体は昔からあるテーマであるが、当初は大企業が自ら金融事業をやりきる「自前型」、もしくは実際のオペレーションは全て既存金融機関に委託する「丸投げ型」での参入が主流であった。2010年代半ばにFintechという言葉が出てきた際に、業界のディスラプターとして作用し、既存の金融機関の存在意義がなくなるのではないかと危惧されたが、実際はそのようなことにはならず、非金融業と金融機関が補完し合うような「協業型」での参入や、自社の技術が活かせる特定領域にターゲットを絞った参入が多い。また、BaaS(Banking as a Service)など金融機能をサービスとして提供することも一般的になりつつあることから、本稿では「協業型」で参入するケースについて述べたい。
参入目的
金融業に参入する目的としては、その企業それぞれの想いがあるが、大きく以下に分類できる。
- 金利や手数料など、金融業での利益追求
- 既存ビジネスとのシナジー追求(資産の有効活用)
- 顧客の囲い込み(利便性提供によるエコシステム構築)
ただし、①のケースは利益を分配しなくてはいけない「協業型」において主目的となることは少なく、投資やリスクを最小化しながら②、③を目指すことが一般的となる。また、本業に関係ない飛び地として金融事業を始めるケースよりは、本業に関係ある領域での参入を検討するケースが多いため、結果的に②、③を目的とすることが多い。
- 寄稿
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デロイト トーマツ コンサルティング合同会社戸室 信行 氏
銀行・証券ユニット ディレクター