りそなグループの働き方改革事例
─りそなグループは働き方改革をどのように進めているか。
渋谷 3段階に整理できる。第1が2013年にスタートした「勤務時間管理の高度化」、第2が2016年からの「ワークライフバランス向上」で、残業削減・休暇向上や業務効率化などを主眼としたものだ。2018年度実績を3年前の2015年度と比べると、1日あたりの平均残業時間はマイナス2割、年間取得休暇日数はプラス4割、長時間労働人数はマイナス7割となった。
─着実に実績をあげてきたところにコロナショックが発生した。
渋谷 2019年からの第3弾「ワークスタイル変革」において、在宅・サテライト・モバイルをキーワードとした勤務体系の本格導入に着手した矢先だった。こうしたテレワークは従来、2020年東京オリンピック・パラリンピックの交通機関混雑緩和も念頭に、まずは本部から徐々に導入を始めていたが、コロナショックで一気に拡大した。
営業店では、現金の供給、資金の決済、資金繰り支援など重要な社会機能を担っており、業務継続が必要だ。一方で、担い手である従業員への安全配慮が前提になることから、「輪番制で出社頻度を4分の3程度に抑制する」「休業は持病を抱えている人やパートタイマーを優先する」といった方針を示したうえで、各営業店の実情に合わせて業務を継続してもらっている。営業店へのテレワーク導入に踏み切ったのも、こうした配慮が背景にある。
─コロナ対応と働き方改革の同時進行がしばらく続きそうだ。
渋谷 当社の「ワークスタイル変革」は、営業店で配布済のタブレット端末を個人貸与の形態にし、自宅持ち帰りによる在宅勤務も含め、顧客と資金繰りや資産運用に関するメールのやり取りをしたり、社内用の稟議書をまとめたりするなど、出社せずとも業務が完結できるようにする構想だ。コロナ対応でこの流れはむしろ加速し、定着していくだろう。
─在宅勤務では、個々の社員の業務プロセスが見えづらい。
渋谷 業務プロセスが見えづらい在宅勤務は、限られた仕事かつ上級者の働き方と考えられてきた。しかしながら昨今のコロナ対応で、在宅勤務には従業員への配慮としての側面も出てきたため、できるだけ多くの従業員が取り組める環境整備を進めたい。情報管理や内部不正対策では、コンプライアンス部門などと連携して社内データへのアクセス権を社員別に区分けしたり、アクセスログを確実に追跡できるシステムを社内周知したりしてけん制する方策を検討している。
─改めて、金融機関の働き方改革のポイントは。
渋谷 コロナショックには、2013年から地道に取り組んできたことが臨機応変の対応を可能にしたともいえるだろう。働き方改革に「飛び道具」はない。職場のトップが働き方改革にコミットする仕掛けを施し、部署間での競争を促すなどの取り組みを粘り強く続けることが重要だ。
- 寄稿
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りそなホールディングス渋谷 恒一 氏
人材サービス部
グループリーダー