データドリブン・イノベーション:Celonisが示す金融業界の業務プロセスの最適化と生産性向上

【講演者】
Celonis株式会社
バリューエンジニアリング本部 リード・バリューエンジニア
藤崎 律希 氏

<プロセスマイニングとは?>

プロセスマイニングのプロセスとは業務プロセスで、マイニングは掘ることだ。つまり業務プロセスを掘って探索し、金脈を見つけることを目的とした技術がプロセスマイニングである。プロセスマイニングは元々アカデミックな分野からスタートしており、定義についても定められている。具体的には「現状のシステムで既に利用可能なイベントログから知識を抽出して、実際のプロセスを発見、監視、改善する」ための技術だ。イベントログと呼ばれる業務データからプロセスモデルを発見し、プロセスモデルを活用して実際の業務プロセスを改善していくことである。プロセスマイニングを行う意義は、データをベースにして、客観的に業務実態を分析・把握することだ。業務プロセスをモデル化することにより、分析・文書化・検証・図式化・シミュレーションが可能になる。

プロセスマイニングでは、イベントログ(業務データ)とプロセスモデルにおいて、3つの基本的な技術を用いる。1点目はプロセスディスカバリーで、イベントログからプロセスモデルを発見する。2点目は適合性評価で、イベントログでプロセスモデルを評価する。3点目はプロセス改善で、プロセスモデルの修正・拡張を行う。

<イベントログとは?>

イベントログは様々なシステムに記録されている業務データで、主にERPシステム(SAP、Oracle等)やCRMシステム(Salesforce等)にあるデータを指す。イベントログには4つの構成要素があり、ケースID・アクティビティ・タイムスタンプ・追加属性だ。

イベントログの構造は、例えば注文管理といった1つのプロセスから発生する。注文番号などによってケースが分かれ、各注文においてどのような行動を取ったのかのイベントが記録され、納期や担当者などの属性が付与される。

プロセスディスカバリー

プロセスマイニングにおける3つの技術の1つで、イベントログからプロセスモデルを発見する技術だ。具体的には、イベントログからアクティビティの順序関係を発見することであり、業務フロー図をイメージしていただくと分かりやすい。左から右に流れるパターン、途中で分岐するパターン、途中で合流するパターンなどがある。日本企業では業務フローで複雑な稟議・承認プロセスが多く見受けられるが、この領域の定義・モデル化が可能だ。

企業の業務実行能力の実態

ほとんどの企業は、業務実行能力を最大限に発揮できていない。例えば請求書はOCR・ペーパーレス化が推進されている業務領域であるが、タッチレスでの請求書処理率は最高クラスで85%、平均では27%で、企業間で大きな差が生じている。プロセスについての理解がないままに、断片的にIT投資をしてしまったことが理由だ。プロセスの理解を深めることは重要だが、現実にはかなり困難な作業となる。プロセスの可視性を妨げているのはサイロな業務であり、30年以上に渡る歴史を抱え、部分最適化を重ねてきたシステムによるものだ。

<新しいアプローチ:プロセスマイニング>

プロセスマイニングは従来のアプローチ(BPR・部門単位での日々の改善等)とどう違うのか。従来のアプローチは主観的・部分的で、冗長・高コストであり、1回限りの理解で終わる。これに対し、プロセスマイニングは客観的・全体的で、即時化・内製化が可能であり、継続的な強化が図れるのが主な違いだ。

プロセスマイニングでは、複数のパターンからモデルを作成する。例えば注文では、パターン1とパターン2から、双方を重ね合わせたプロセスモデルを作成する。重ね合わせたうえで、各プロセスでかかる時間、分岐の発生頻度・原因・傾向を見ることができる。

<Celonisとは?>

Celonisは、業務をより価値のあるものにしていくことを目的として支援をしている。主な支援内容は、360°データ、データ分析、改善アクションの3つだ。まず360°データとして、SAPやSalesforceなど企業のバリューチェーン上の様々なデータを、Celonisのデータプラットフォーム上に構造化・収集する。次にデータを分析するための基盤があり、収集・構造化された業務データを可視化する。3つ目に改善アクションとして、メッセージングアプリへの通知やレコードの変更リクエスト等を行う。

<保険業界での事例紹介>

Celonisは保険業界のバリューチェーン全体をサポートしており、新契約・保険金支払等の様々な領域で実績がある。あるグローバル保険会社様の新契約業務において顧客満足度を聴取していたが、あまり結果は芳しくなく、契約締結までの処理にも時間や工数がかかっていた。契約申し込みと審査について業務を分析したところ、一部自動化が組み込まれているプロセスのほうが16日も期間が長くなっていた。また電子署名の不使用の業務は3日、差し戻しがあった場合の業務は10日長くなっていたことも判明した。分析結果に基づき、申込ルールの見直しや電子署名率の向上、代理店のコンバージョン率の運用パフォーマンス監視といった施策を打った。結果として顧客満足度の向上、業務品質の向上、プロセスの効率と生産性の向上などの成果に繋がった。

別の保険会社様の事例では、車両や旅行の保険金の請求処理について業務分析を行ったうえで、修理プロバイダーの最適化、少額・低リスク案件の処理の自動化などの施策を実行した。その結果、請求処理日数が65%短縮され、請求1件あたりの業務単価は204ユーロ削減、サイクルタイムが44%削減された。

<銀行業界での事例紹介>

銀行業界についてもCelonisは幅広い領域をサポートしており、対顧客の領域から規制対応や監査までご利用いただいている。特に多いのはローン申請や口座開設、KYC(本人確認手続き)、問い合わせ対応などのプロセス分析だ。ウニクレディト社では住宅ローンの申請で最大20%の申し込みが顧客からキャンセルされており、大幅な減収や顧客満足度の低下を招いていた。Celonisで業務を分析し、プロセス内の不要なループや遅延が発生する原因と場所を特定し、契約締結までの時間を25%短縮した。

KYCに関してヨーロッパのある大手銀行では、KYCチェックが大量かつ複雑であった。規制当局が規定するSLAの範囲内で、KYCファイルを計画通りに解決するのに苦労していた。Celonisによってプロセスにおける不要なチェックやボトルネックの発生場所を分析した。チェックが遅れる根本原因を取り除き、インテリジェントに優先順位を付け、SLA遵守率の向上に繋がった。またアイルランドの信用銀行ではKYCのリワーク活動を60%削減、14,900時間の自動化可能なアクティビティの特定などの成果に繋がった。

<本日のまとめ>

プロセスマイニングは業務プロセスをモデル化する理論で、適合性の評価や業務改善を促し、理想的な業務プロセスを実装することができる。Celonisのソリューションは自動で業務実態を可視化し、プラットフォームによってビジネス価値を最大化する。AIを利用した更なる価値の追求も可能だ。Celonisは金融業界でもグローバルで既に100社以上に導入されており、直接業務・間接業務を問わず活用いただいている。金融業界固有のプロセスへの知見を用いて、コスト削減や顧客満足度向上の目的で活用されている。

◆講演企業情報
Celonis株式会社:https://www.celonis.com/jp/