2023年12月7日(木)開催 FINANCE WEBINAR「金融業界におけるバックオフィス・営業業務の最適化」<アフターレポート>


2023年12月7日(木)セミナーインフォ主催 FINANCE WEBINAR「金融業界におけるバックオフィス・営業業務の最適化」が開催された。金融機関における業務のデジタル化は加速の一途を辿っている。目まぐるしく変化する社会情勢や顧客からの要望に対応していくために様々なテクノロジー技術を駆使した業務の自動化、効率化を推進していくことが求められている。本ウェビナーでは、基調講演に株式会社静岡銀行、特別講演に株式会社三十三銀行をお迎えし、最新の取り組み事例をご紹介いただくほか、先進企業の講演を通じ、有益なテクノロジーをご紹介いただいた。

  1. 営業担当者業務BPRにおけるCRM更改およびAI活用
    株式会社静岡銀行 前島 将宏 氏 / 佐野 伸伍 氏
  2. ServiceNowによるシステム部門のDXと金融業務の効率化
    富士通株式会社 田治見 央外 氏 / ServiceNow Japan合同会社 水野 拓郎 氏
  3. 三十三銀行のAIチャットボット活用による行内問い合わせ業務の省力化
    株式会社三十三銀行 山本 茂樹 氏
  4. 【ご紹介動画】株式会社マネーフォワード
目次

営業担当者業務BPRにおけるCRM更改およびAI活用

基調講演
 
【講演者】
株式会社静岡銀行
営業戦略部 支店サポートグループ グループ長
前島 将宏 氏

【講演者】
営業戦略部 支店サポートグループ 課長
佐野 伸伍 氏

<ホールディングスの第一次中経クロスオーバーを開始>

静岡銀行では、2023年4月からしずおかフィナンシャルグループの第1次中期経営計画としてXover(クロスオーバー)を開始。中計ビジョンでは「未来へつなぐ新たな価値を創造する課題解決型企業グループ」、10年ビジョンとして「地域の未来にコミットし、地域の成長をプロデュースする企業グループ」を掲げて、実現に向けての取り組みをスタートしている。

さまざまな地域課題に対し、銀行グループとしての大切なミッションは、社会価値を創造すること。中計でも、自らを含めた地域企業、企業価値を向上することを中核としている。この目的を果たすために、「地域共創戦略」「グループビジネス戦略」「トランスフォーメーション戦略」の3つを中心に据えた基本戦略を展開し、ガバナンス戦略を下支えすることを目指している。

様々な地域課題やお取引先からの課題解決に資するためには、経営リソースの最適化が重要。具体的には拠点の最適化、生産性の向上による人員の再配置で課題解決のための時間を捻出。トップラインを維持拡大させていくことを戦略の基本ラインとして考えている。

<営業担当者業務BRPの必要性>

営業活動を標準化するためのシステムの中心は営業支援システムと融資支援システムになる。融資支援システムには詳細な顧客情報が入っているので、営業支援システムの刷新と融資支援システムの高度化に取り組むにあたって、情報系のシステムのクラウド化、AIを活用化していくことのためのAIシステム化、さらにOffice365・法人ポータルなどのシステムとも連携活用していく方向が定められた。

営業担当者の業務効率化と業務改善の必要性から、現状の業務フローを詳細に洗い出し、問題点を特定して改善策を立案。具体的には、76の施策を考案した。まずは法人・審査、個人(預かり資産)、個人(ローン)、共通の4分野に関して、営業店業務についてサービス毎にプロセスを整理し、必要な機能を特定。スケジュール管理の改善、報告書の簡素化、スケジュール調整のルール化などを推進し、営業担当者BPR(Business Process Reengineering、業務プロセスの再設計)では、Salesforceを活用した営業支援システムの更改に取り組んだ。

全体では81万時間の時間捻出という実現効果を目標に掲げ、内部管理責任者の集約やグループ会社とのシームレスな情報共有、ペーパーレス化、高度化などを図った。そのために実施したのがシステム導入と、規定類の改定だ。システムの導入に関しては、Salesforceに加えて、AppExchangeを有効的に活用。新たな開発は極力避け、標準系を利用して、scratchで作るものに関しても極力周辺システムとし、預かり資産の音声・テキスト化・録音などは、できるだけ外側に作ることとした。規定類改定は、運用ルールを見直して、不要なものは断捨利し、法務相談を通じた業務フロー検討して、最適な業務フローの作成を目指した。

<新営業支援システムの機能配置>

法人担当者が利用する営業支援システム、個人預かり担当者が利用する金融商品販売支援システム、さらに、法人担当者が利用する融資支援システムから機能を再編成した結果、営業支援機能、(保険)販売業務機能、融資相談票機能を搭載した新営業支援システム「S-CRM」(スクラム)が誕生。これまでのシステムの機能配置は大きく変更した。

顧客折衝から案件進捗管理を一気通貫で行えるように、S-CRMに機能を集約。業務生産性向上、ロケーションフリー、管理高度化を意識した。S-CRMに提案書の雛形を搭載し、回覧や承認フローで情報共有のしくみやルールを制定することでペーパーレスの業務運営に至った。これまでは、支店ごとに担当社員と内部管理責任者を置く必要があったが、S-CRMにより業務の生産性が向上。ロケーションフリーになり、どこでも業務ができるようになった。さらに、一部の業者にAIを導入したことで、業務の高度化も図れた。

<S-CRM 導入後による効果>

S-CRMの開発・導入にあたって、システム間を連携するデータ分析・活用プラットフォーム「S-hare」を構築。これにより、データの連携・データの蓄積、分析や利活用する基盤が完成し、新たな業務フローで多くの取り組みを実施できるようになった。

一例を紹介する。
・法人デジタルマーケティング試行:名刺データをS-CRMの顧客情報と突合、名刺情報を活用して新商品などのニーズが見込まれる顧客へ適宜DMを発信できるようになった。
・見込み先リストの還元:システム間の連携がとれるようになったことで、顧客軸、商品軸ごとの管理が可能に。 推進結果も営業店が登録してすぐに取得可能となった。
・本部報告削減:顧客意向確認や各種獲得実績集計のための報告はS-CRMで行うよう本部内徹底することで、本部報告件数は大きく削減。断捨離による約3割の業務削減を果たした。
・内部管理責任者業務高度AI:預かり資産業務に係るデータがS-CRMに集約することで、AIを用いた点検業務の高度化、業務量の削減に繋げる実証実験がスタート。

<融資相談票作成支援AIの試行を開始>

S-CRMでの導入以降、活用されている融資相談表作成支援AIの機能概要を解説する。最初に顧客からの資金需要を確認すると、稟議申請前の情報として、顧客からヒアリングした希望融資条件に関する交渉記録をS-CRMに登録。支店長向けに融資条件の事前相談を行い、その結果に基づいて条件のすり合わせを行った交渉記録の結果も、S-CRMに登録して情報を蓄積していく。

事前相談で承認を得た条件ですり合わせができたら、融資支援システムの方で稟議を申請し、決裁が取れたら融資実行となる。融資相談票作成支援AIは、支店長向けの事前相談時に活用。過去の案件協議書を調べたり、融資が実現可能か検討したりする材料を集める過程での業務の支援につなげている。

主だったAI機能を2つ紹介する。
➀類似案件検索:担当者が案件登録すると、案件の資金使途、金額、期間、利率等から過去の類似案件が自動的に検索・表示される。
➁重要ポイントの判断:担当者が案件登録すると、申込金額、償還力、期間、保全、利率等の情報から、要件が行内審査基準に適合するかを点数化して重要ポイントを提示。融資相談票作成支援AIには、週次でAI学習をアップデートする仕組みが実装されており、フィードバックを繰り返すことで類似案件検索の精度を継続的に向上させていけると見込んでいる。

<今後の展開>

今後は、AIの分析能力を活かした業務の効率化を図り、内部管理責任者の業務により深く関与したAIの活用やBIツールの拡大利用を検討。例えば相談票作成支援AIの全店展開を図ったり、ユーザーの意見を取り入れた改善を行ったりするような活用方法についても検討を始めている。

TableauやMotionBoard などのBIツールの活用も拡大し、業務フローの改善やBPRを推進していく予定だ。システム間の連携が円滑に行われるよう、Salesforceは極力AppExchange化してシステムの統合を図り、使用する業務システムを最小限に抑えたい。

他金融機関との情報交換や情報共有による相互のレベルアップも重視している。アライアンスを超えた仲間づくりを進めることで、静岡銀行が取り組んできた内容を共有し、業界内に横展開していくことで、業界全体のレベルアップの一助となれば幸いだ。

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