ServiceNowによるシステム部門のDXと金融業務の効率化

【講演者】
富士通株式会社
Financial Services事業本部 オファリングビジネス部
シニアディレクター
田治見 央外 氏

【講演者】
ServiceNow Japan合同会社
金融ソリューションコンサルティング本部
本部長
水野 拓郎 氏

<システム部門が直面する課題に向き合うServiceNow>

システム部門やリスク管理部門は、増大するセキュリティリスク、IT人材の継続的確保の困難さ、コスト削減圧力など、多くの課題を抱えている。金融庁によれば、金融機関から報告されたシステム障害の件数は年々増加し、障害事象別割合は管理面人的要因が最も多い。この事象は、人手によるシステム開発やシステム運用の難しさを表している。

社内IT業務向けソリューションの一つであるServiceNowはシステムの企画段階から開発運用フェーズに渡って、一つのデータベースで相互参照するコンセプトになっている。脆弱性対応やインシデント対応、システム構成管理への対応だけでなく、CIOが管轄するシステム部門業務全体の効率化や可視化にも寄与できる。企業の業務用アプリケーションとしての影響力はIT部門のみならず、人事部門や業務部門、カスタマーサービス部門にまで広がり、全社のDXに貢献できるソリューションになるといえるだろう。

富士通では業務の見える化、標準化、自動化をコンセプトに、ITサービス、人事サービス、決裁システムでServiceNowを活用しており順次拡充する計画を立てている。決裁システムを刷新した結果、起案から決裁までの業務時間を30%削減するという導入効果を実現。これを機に、金融機関など様々な業界のお客様に提供している。国内トップクラスの有資格者・技術者を保有する富士通自身の実践値と掛け合わせて顧客サポートに従事することで、コールセンター業務の効率化、管理分析や関連部門とのシームレス連携を実現した好事例が生まれている。

さらに2023年には、オーストラリアのServiceNowコンサルティング会社Enable社の買収計画を発表。コンサルティングノウハウを取り入れて、顧客サポートに磨きをかけている。

このように富士通が導入を促進するServiceNowは、システム部門のDXと金融業務の効率化にどのような導入効果をもたらすのか、改めて解説する。

<ServiceNowによるシステム部門DXの解決策>

ServiceNowは、デジタルビジネスのためのインテリジェント・プラットフォームだ。システム資産を中心としたデータモデルを構築し、周辺のプロセスを繋げることで、システム部門全体のDXを実現する。

ServiceNowはクラウドベースで専用プラットフォームを提供し、このプラットフォーム上で全てのサービスを提供することで、業務全体でのデータ共有が可能になり、総合的にプロセス連携ができるというメリットをもたらしている。

システム障害、IT人材の継続的な確保、サイバーリスク、IT投資の最適化など多くの課題を抱えるシステム部門が現状を打破するためにDXに取り組もうとしても、変革を疎外する要因が横たわっていることがある。代表的な要因の1つ目は、企業内のシステムは部門ごとに個別最適で構築されていることが多く、孤立していて連携できない、いわゆる「サイロ化」が進んでいること。2つ目は、ベテランIT部員の経験や勘に依存したオペレーションがまかり通ってしまっていることだ。

システム部門では、プロセスごとのソリューションで対応してしまっていて、企業のコアデータは個々に存在するものの、有機的につなぐ手段がないという実態がある。この打開策として寄与するのが、ServiceNowのシステム部門向けのソリューションなのだ。

これまではシステム運用や開発ではベテランエンジニアのノウハウや知見に依存していたが、人材確保が難しい今の時代では、そのスタイルには限界がある。今あるものを残して活用するためには、誰もが再現性を持ってできるように、データドリブン型でシステムを回していくことが必要だ。

<ServiceNowのAIPSOによる業務プロセス改善例>

ServiceNowでは、AI-Powered-Service-Operation(AIPSO)という独特の形式で各種サービスを提供。強固なデータ基盤内にデータを蓄積し、AI機能をフル活用して、IT運用業務の自動化や効率化を実現して、サービス業務の高度化も図れる。

その結果、従業員満足度が向上すれば、システムの安定稼働や顧客サービスに関わるITサービスを効率的に運用できるようになり顧客満足度も上がる。全体としての生産性が向上するという連鎖的な効果を得られることになる。

AIPSOが実現されると、わからないことを人に頼らずに簡単に解決できるようになる。チャットボットからのアンサーも、AIを活用して解決策が提供される。過去のシステム障害データやアラート情報を機械学習しておくことで、障害の予兆検知につながる。自動化できそうなオペレーションや、いつも時間がかかりがちな対応を分析することで、有効な改善ポイントを指摘できるなどの業務支援ができると自負している。

<金融業界で求められる業務の効率化>

ServiceNowのアンケート調査では、迅速な対応が最も重要だと考えている消費者の割合は49%。その数字が示す通り、顧客満足度を向上させるカギは、迅速に何かを解決してくれる、対応してくれる姿勢だと考えられる。

金融業界も顧客満足度向上に向けての施策の数々を進めてきているが、残念ながら、データでは顧客体験が悪くなっていると評価する消費者も多く、対応してはいるものの評価されていないという現実がある。その理由は、顧客体験向上に向けた施策の方向性がニーズからずれていて、消費者が重視する「迅速」という点では、物足りなさを感じさせているのではないか。部門内での処理スピードは上がっているのに、部門間の連携がスムーズではないため、バックオフィスでサポートしなければならないタスクが生じた際に時間を要してしまい、顧客満足度を低下させてしまうケースも考えられる。

顧客満足度を向上させるために、重点的に改善すべきポイントは3つある。1点目は「スピード」。シンプルに、顧客が求めるサービスのレスポンスを早くすることだ。2点目は「オペレーション」。従業員のOperationを改善することで効率化を図り、サービス向上につなげていく。3点目は「透明性とエンゲージメント」。組織の調和や理解、連携を高めて顧客ケア文化を発展させることだ。

<ハイパーオートメーションの実現で顧客満足度向上を図る>

デジタルビジネスを推進する企業/組織にとって、次の段階へ進むための重要なテクノロジ・トレンドのキーワードとなるのが「ハイパーオートメーション」だ。ハイパーオートメーションは、これまでに自動化してきたデータ資産を生かしつつ、それらの運用を自動化するオーケストレーションを進めることで、部門をまたいで業務をつなげていく。それらのベースとしてAI等の最新技術も組み込み、より高度な自動化を図ることで、効率化を高めていく。包括的にAIの技術を活用しながら、人でやらなくても良いところは全て徹底的に自動化させようとする世界観だ。

ServiceNowはこのハイパーオートメーションを実現するためのプラットフォームを提供することが可能だ。システムと人の間をつなぐハイパーオートメーションを実現することで、end-to-endでプロセスが整流化し、スピードと品質を向上させることができる。その過程のデータも日々蓄積されていくことで、ガバナンスの効いた、より高度な分析結果が得られるようにより、質向上に役立てられるという好循環が生まれる。

人的コストをかけて業務を回すのではなく、自動化できるところを自動化することで、人がやらなければいけない仕事に人が集中できる環境の実現に寄与する。富士通とServiceNowは一体となり、そのためのサポートに尽力していく。

◆講演企業情報
富士通株式会社:https://global.fujitsu/ja-jp/