「データ活用で金融機関を変える!キーエンス流データ活用術」

水上 拓也 氏
【講演者】
株式会社キーエンス
データアナリティクス事業グループ
コンサルティングセールス
水上 拓也 氏

<はじめに>

今回は「データ活用で金融機関を変える!キーエンス流データ活用術」と題し、金融機関のデータ活用についてお話できればと考えている。弊社キーエンスは、もともとはファクトリーオートメーションを開発・販売する総合メーカーであり、製造業の工場様を主な取引先としていた。その弊社がなぜデータ活用の分野に進出したのかというと、それはこれまでの弊社の歩みと関係がある。弊社はデータを活用した営業効率化を非常に重視している会社であり、実際に高い収益率を上げてきた。最近ではこうした側面を評価され、経済誌などに取り上げられる機会も増えている。
弊社としては、今までの業務の中で培ってきたKKD(勘、経験、度胸)にデータの側面を加えることで、営業のみならず、生産性を極限までできるのではないかと考えている。こうした信念のもと、近年はこれまで培ってきたデータ利活用のノウハウを外販し、他の企業様のデータ活用・DX推進の試みの支援にも注力しているところである。

<キーエンスの考える支援の形>

我々のソリューションは製造業だけでなく、幅広い企業様に活用いただいている。特に、金融業界のクライアントは多く、専門のデータサイエンティストが支援にあたっているところだ。我々の提供しているソリューションは、大きく分けて2つの柱がある。


1つはデータの分析プラットフォームKIの提供である。KIは弊社がこれまで社内で活用してきたデータ活用ノウハウを凝縮したデータ分析プラットフォームであり、高度な知識がない社員でも高度なデータの分析ができる点に特徴がある。

もう1つはデータ活用の分野におけるPDCA人材の育成プログラムである。弊社としては、データ活用に欠かせない人材を3つのタイプに分類している。1つ目のタイプはデータ人材である。これはエクセルを使って帳票の作成や集計ができるレベルの人材を指す。2つ目のタイプはデータサイエンス人材である。いわゆるデータサイエンティストがこのタイプに相当する。自分でコードを書いたり、分析をしたりできる人材だ。そして、3つ目のタイプがPDCA人材である。PDCA人材は、スキル的にはデータ人材とデータサイエンス人材の中間に位置する人々だ。具体的には、AIの技術を使いながら、データ分析の設計や分析、施策の実行、振り返りといったデータ活用のPDCAサイクルを回すことができる人材である。弊社がサポートを通じて育成しようとしているのは、このPDCA人材である。PDCA人材はデータの専門家ではない。あくまでも各営業部門に所属する現場の人間として、データ分析を担う人材である。


なぜ弊社がこのようなPDCA人材を重視しているのかというと、それは過去の苦い経験が影響している。以前、弊社にもデータサイエンティスト専任チームに分析案件を集中させていたことがあった。しかし、いざ実際にデータの分析や活用を始めてみると、データサイエンティストのチームのキャパを超えた量の分析依頼が集中する、分析結果に時間がかかる、業務部門が求める結果と分析チームの考える結果にズレが生じるといったトラブルが生じた。


このような事態はかつての弊社に限った話ではない。専門家によるデータ分析チームを編成している他の金融機関様でも似たような現象が起きているようだ。つまり、データサイエンティストがいるからといって、必ずしもデータの分析や活用がうまくいくとは限らない。むしろ、各業務部門・各ビジネス部門の人間が自らデータを分析・活用できることの方が、データ活用を成功させるためにははるかに重要だ。各業務部門において自らデータの分析・活用ができる人材、つまりPDCA人材こそがデータ活用成功のカギを握っているのである。

<環境変化とデータ活用の必要性>

現在、金融機関を取り巻く環境は大きく変化しつつある。まず、最近顕著になってきているのが、顧客本位の業務運営に関する原則の厳格化である。企業側が売りたい商品を売るのではなく、顧客理解を深め、お客様のニーズに合った商品を提供することが求められるようになっている。


また、企業の内部環境についても、店舗や職員数の減少、残業規制といった変化が現れている。こうした変化に伴い、金融機関では活動量が減少し、また人材不足に陥る中で生産性を向上することが求められるようになった。今ある資源を活用して効率的な企業活動や提案活動を行うことが必要になってきているのだ。
こうした環境変化に対応するため、必要となってきているのがデータの有効活用である。実際に金融機関がデータを活用する場合は、今あるデータを分析し、その結果をもとに施策を打って、さらに施策の結果をもとにデータの収集・分析サイクルを改善していくといった流れで行うとうまくいきやすい。

<データ活用3つの壁>

とはいえ、実際にデータを活用する際には、「3つの壁」が存在する。
1つ目はデータ前処理の壁である。これはデータの量がエクセルで扱うには多すぎる、バラバラの場所にあるデータを1つにまとめて分析できない、といったデータの前処理がうまく進まない状況を指す。
2つ目は仮説立案の壁である。データを分析しようとするとき、これを人の手に任せると、分析の視点が属人化する、網羅的に仮説を立てるのが難しい、人によって仮説の立案内容にばらつきが出るという事態を招きやすい。
3つ目は仮説絞り込みの壁である。大量の仮説から、分析のテーマに合わせた仮説をピックアップすることは意外に難しいものだ。そして、このプロセスを人の手に任せると、ここでも属人化が起きてしまう。

<KIでデータ活用3つの壁を乗り越える>

弊社の提供するKIは、こうしたデータ活用3つの壁を乗り越えるためのものだ。KIには、データをソフトの中で1つにまとめて分析できる、仮説を網羅的に考えられる、さらに導き出された仮説を機械学習によって優先付けしてくれるという特徴がある。KIを使えば、最終的な施策実行に必要なリスト作成やシミュレーションまでを一気に行うことも可能になる。機械学習を使った分析のメリットは人が気づけないような、データの中に隠れている法則性や優先性を見つけてくれることだ。こうした特徴を持つKIは営業領域以外の部分でも応用が可能なツールであり、実際さまざまな部署でご活用いただいている。

<カスタマーサクセス>

さらに、弊社ではKIの提供だけではなく、データ活用を担う人材の育成面でも金融機関を支援している。データは分析して終わりではなく、実際の施策に落とし込んで初めて意味を持つものである。
そこで、弊社では金融機関に強いデータサイエンティストがデータ活用のPDCAサイクルを伴走型でサポートしている。さらに、データサイエンスの講座や現場展開マニュアルといった現場でデータ分析を担うPDCA人材の育成に役立つコンテンツも提供し、社内のデータ人材育成に貢献している。

<まとめ>

データ活用というと、まずはデータを蓄積しなければという発想になりがちだが、データ活用を本当の意味で成功させるためにはまず既存のデータの活用を開始することが重要である。特に金融機関は非常にリッチなデータを既に持っているため、今あるデータを分析するだけで新しい価値を発見したり、今後あるべきデータ蓄積の在り方についても知見が得られる。今あるデータを分析しながら、本当に必要なデータを絞り込みデータの蓄積も進めていく。こういったデータ分析のPDCAサイクルに、弊社も伴走させてもらえば嬉しく思う。また、無料のデータ活用セミナーも開催しており、「キーエンスのデータ活用の試行錯誤の歴史」、「ターゲティング術」、百五銀行様に「データ人材の育て方」についてお話しいただいたセミナーなど、各種開催している。無料でご参加いただけるので、「キーエンス データ活用 セミナー」で検索いただき、ぜひご参加いただきたい。

◆講演企業情報
株式会社キーエンス:https://analytics.keyence.com/ja/