「ソニー生命におけるリモート活用の取り組み」

大石 真市 氏
特別講演
【講演者】
ソニー生命保険株式会社
共創戦略部
統括部長
大石 真市 氏

<はじめに>

45パーセント。これはある週末に1都3県で行われた商談のうち、リモートで行われたものの割合である。弊社はソニーフィナンシャルグループに属する生命保険会社であり、死亡保障、変額保険をはじめとする保険商品を扱っている。売上のうち、その大半は直販の営業職員であるライフプランナーによるものだ。

ライフプランナーという呼称には、保険の販売者は「コンサルティングを通じてお客様1人1人のライフプランに合ったオーダーメイドの保障を提供し、契約後も専任の担当者としてきめ細やかなフォローを行う」専門職であるべきだ、という意味がこめられている。

ライフプランナーによるコンサルティングは、弊社のサービスの強みであり、もっとも弊社が大切にしているものだ。コンサルティングを通じて、お客様の人生の計画と実行を支援する。このような価値観を大切に、人材の登用・育成に取り組んでいる。

保険のコンサルティングというと、「対面で」というイメージを持たれる方も多いかもしれない。現在はコロナによって状況が変わっているかもしれないが、弊社では、パンデミックの起きる前からリモートでのコンサルティングサービスの提供に取り組んできた。そこで、今回は弊社のリモートコンサルティングの歩み、今後の展望についてお話しできればと考えている。

<デジタル活用の経緯~リモート開発の経緯>

弊社では現在、自社開発したリモートコンサルティングシステムを利用し、顧客に対してサービスを提供している。弊社のシステムが本格的にリリースされたのはコロナ禍のまっただなかである2020年のことである。そのため、社外の方には、コロナ対応のためにリモートを始めたのではないかと誤解されることも多い。

しかし、弊社がリモートコンサルティングシステムの構想を始めたのは2008年にまでさかのぼる。そのころから弊社では営業活動のフルデジタル化を目指し、申し込みから面談、契約締結までを完全にオンラインで行いたいという願望を持っていた。その長年の希望が結実したのが現在運用されているリモートコンサルティングシステムということになる。弊社がデジタル化を進めるにあたり、大切にしているコンセプトがある。それはお客様と担当者のライフスタイルに寄り添うことだ。お客様・担当者がそれぞれの状況に応じた手段を選択でき、また時代によって変化するライフスタイルに寄り添えるようなサービスを提供したい。このような一貫したコンセプトの元で、システムの開発を進めてきた。

<リモートコンサルティングシステムの概要>

現在、弊社のリモートコンサルティングシステムは、専用アプリ不要で簡単に接続できる、画面操作を担当者にお任せできる、お申し込みまでもオンラインで完結できる、といった特徴を備えたものになっている。これらの特徴を兼ね備えたリモートのシステムを、弊社では既存のサービスに頼らず、すべて自社開発した。なぜ面談のリモート化にあたり、システムから自社開発することになったのか。それは構想当時に今のようなWeb会議システムが存在していなかったという理由もあるが、それ以上に弊社が持っていたこだわりも大きい。弊社は実際にリモートのシステムを開発にするにあたり、まず一番に「お客様ときめ細やかな面談・コンサルティングを実現できるものであること」にこだわりたいと考えた。

そのためには、ブラウザ対応で簡単に使えるシステムであること、お客様が自分の手で確認しながら手続きを進められることが求められる。既存のWeb会議システムでは、これらの特徴を兼ね備えた理想のリモートコンサルティングシステムを実現するのは困難であった。もっとも、自社開発とはいえ、これらのこだわりを実際に現実のシステムに落とし込むのは容易ではない。当時のWebブラウザの問題もあって、開発には長い時間を要した。開発が始まったのが2013年、お客様向けの実証実験が実現したのはその5年後の2018年、本格リリースはさらにその2年後である。2008年の構想開始から、リリースまで実に12年が経過していた。

<より使いやすいシステムを目指して>

弊社のリモートシステムは、各手続きにおけるお客様の使いやすさにこだわった設計になっている。生命保険には大きく分けて、告知と申し込みという2つの手続きがある。

お客様のセンシティブな情報を扱う告知手続きは操作をお客様自身で行えるように、申し込み手続きは担当者におまかせできるように、といったようにそれぞれの手続きの特性に合わせてシステムを設計し、お客様がストレスなく、各手続きをスムーズに行えるように工夫している。こうしたシステムの改良は本格的にリリースされた2020年以降も段階的に続けられている。お客様の声を聞きながら、よりよいリモートの体験を提供できるように現在進行形で改善を続けているところだ。

<リモートコンサルティングシステムの活用状況>

現在、リモートコンサルティングシステムの利用状況はコロナの感染状況に左右されているところもあるが、感染が落ち着いた時期でも15~30パーセント程度を維持している。コロナに関係なく、リモートでの面談が担当者にも、お客様にも根付いてきたということだろうと実感している。

こうしたリモートが根付いた要因の1つは、リモートコンサルティングの存在を、公式ホームページやパンフレットなどを通じてお客様に積極的に告知してきたことだろう。お客様が自分に合った手段を自由に選べるようにした結果、リモートを選ぶお客様が増えたということだ。

実際、リモートを選んだお客様のサービスに対する満足度は非常に高く、コロナ禍がおさまってもリモートで面談をしたいという声もアンケートではいただいている。我々が以前から構想していたことが受け入れられたということを実感しているところだ。お客様がリモートに対してプラスの印象を持てば、それは現場の担当者にも伝わり、現場担当者の「リモートを活用しよう」という意欲を高めることになる。現在、こうしたプラスのサイクルが社内にも生まれつつあるのではないかと感じている。

<今後の展望>

ここまで、弊社が進めてきたリモートコンサルティングの歩みについて紹介してきた。最後に今後の展望について簡単にご紹介し、本講演を終えられればと思う。すでに弊社では、リモートコンサルティングが定着しつつある。しかし、最終的なゴールにはまだほど遠い。正直なところ、まだ道半ばであるというのが現状だ。我々が理想としているのは、家族が集まったリビングでコンサルティングが行われている光景だ。究極的には、家庭のテレビでコンサルティングができる状態を目指している。

我々がテレビにこだわるのは、ライフプランのコンサルティングというものがお客様の家族にも関わるサービスだからだ。リビングのテレビを活用できれば、一度に多くの方と空間の共有ができ、より質の高いサービスができるようになるのではと考えている。

テレビのコンピューターとしての性能が進歩していることを考慮すると、我々の理想とするコンサルティングが実現できる日はそう遠くはないのではないかと考えている。テレビを通して、誰もがリモートでのコミュニケーションをできるようになる。その日が来ることを信じ、新たな準備を進めている。