2022年12月8日(木)開催 MANAGEMENT WEBINAR「テクノロジーを駆使した戦略的人事と組織改革」<アフターレポート>


2022年12月8日(木)セミナーインフォ主催MANAGEMENT WEBINAR 「テクノロジーを駆使した戦略的人事と組織改革」が開催された。近年、働き方が多様化するなかで、社員のワークライフバランスやモチベーション維持を考え、人事戦略や組織体制を変えようとする動きが広がってる。一方で、コロナ禍の長期化の影響で非対面性が重要視されるなど、コミュニケーションが十分に確保できないといった課題点も浮き彫りになっている。こうした中、各企業がITツールとうまく向き合い、バランスの取れた仕事環境の実現に向け、邁進されていることと思う。本ウェビナーでは、三井化学と三越伊勢丹ホールディングスに最新事例をご紹介いただいたほか、協賛企業より人事や組織改革に資する情報をお届けした。

  1. 経営戦略と連動したグローバル人材戦略の策定事例
    ~テクノロジー導入による人材戦略の高度化~
    三井化学株式会社 小野 真吾 氏
  2. 「<戦略的人事を実現する>従業員情報を活用した人材マネジメント」
    株式会社SmartHR 小杉 和明 氏
目次

「経営戦略と連動したグローバル人材戦略の策定事例
~テクノロジー導入による人材戦略の高度化~」

基調講演
【講演者】
三井化学株式会社
グローバル人材部 部長 
小野 真吾 氏

<当社のご紹介>

当社は1912年に三井鉱山が化学事業を開始したのが起源で、110年の歴史のある企業だ。三井化学の化学系の会社が合併して1997年に三井化学が発足した。2020年の連結従業員数は19,000人以上と2009年から大きく増え、海外従業員比率も41%に達した。海外企業買収によって戦略策定機能がグローバルに広がったのが主な要因だ。

当社の目指すべきグループ像は、化学の力で社会課題を解決し、多様な価値の創造を通して持続的に成長し続ける企業グループだ。長期経営計画の「VISION2030」では「社会課題解決」に基づいて目指すべき企業グループ像を再定義し、実現するための基本5戦略に集約した。素材提供型ビジネスから社会課題視点のビジネスへの転換を推進し、ソリューション型ビジネスモデル、CE型ビジネスモデルへと進化させる。

<経営戦略と連動した人材戦略の優先課題>

今後のビジネス環境において、経営戦略は大きく変化すると予想される。そこで経営戦略をアジャイルに捉え、実効性のある人材戦略・施策の具現化が必要だ。「個の力」を重視し、「自主・自律・協働」を体現する「挑戦し続ける組織」に変革する。

<施策1.キータレントマネジメント>

これを実現するための優先課題は3つあり、1つ目は多様性に富む経営者候補の戦略的獲得・育成・リテンションだ。2つ目は人材のエンゲージメントを高め、組織の力に昇華させる企業文化にするための「自主・自律・協働」の体現だ。3つ目はM&A等に対応する人事ガバナンスの高度化、グループ統合型人材プラットフォームの構築だ。

ここから、優先課題に対する具体的な施策を5つお話しする。まず1つ目は2016年に導入したキータレントマネジメントで、将来の経営者候補のパイプラインを作っていく施策だ。全社人材育成委員会と部門別人材育成委員会があり、各委員会においてキータレントや経営者候補の選抜、育成計画の承認やその成果の確認を行う。

<施策2.即戦力採用>

人材確保については、ポートフォリオ変革に向けた人材戦略として、外部の即戦力人材の積極採用を行っている。2015年以降はおおむね50%以上が即戦力採用であり、成長事業や重点領域へ配置している。

<施策3.人材の多様化>

「VISION2030」の非財務KPIでは執行役員の多様化も定めており、2030年には約3割の執行役員が女性、外国人、中途採用となる状態を目指している。多様な経験・価値観を有する人材を役員層に加え、価値創造能力を強化するのが狙いだ。

<施策4.エンゲージメント調査>

「VISION2030」の非財務KPIで、グローバル従業員のエンゲージメントスコアを、2030年に50%にするとしている。2018年は31%、2021年は34%と3ポイント改善されているが、2030年までに50%に引き上げる。また改善活動の実行継続のため、ポストサーベイアクションを行っている。エンゲージメントスコアのみならず、調査や改善活動への参加率の高さも重要だ。

前回のエンゲージメント調査で重要と判明したのが働き方で、働き方改革をさらに進化させるための人事施策も行っている。具体的には服装の自由化、副業従事要領の策定、テレワーク拡大、新業績評価などだ。

<施策5.グループ統合型人材プラットフォームの構築>

Workdayという統合型人材プラットフォームを2023年2月に稼働させる予定だ。その狙いはグループとしての「ありたい人材ポートフォリオ」の構築と「自律的キャリア形成」の促進である。結果として社外のステークホルダーに対し、人的資本の情報開示を強化する。

<グローバル人事の全体像>

VISION2030、ESG、DXなどのキーワードに連動する形で人材戦略討議を毎年行い、施策に落とし込んでいる。我々が最も重視したのは「適材適所の実現」で、サクセッションプランの強化だ。キータレントマネジメントを軸としながら、人材開発やグローバルポジションマネジメントを連動させる。国・会社を超えた異動が増えるため、グローバルモビリティや評価・報酬に関するポリシーの整備が必要だ。それらを実行する人事組織は地域ごとの人事マトリクス組織体制となっており、縦軸は国・地域、横軸はHRの各機能で構成している。

<キータレントマネジメント(KTM)の導入>

グローバル経営者育成の必要性増加、事業のグローバル化による経営の難易度増加といった背景により、KTMを導入するに至った。キータレントの選抜方法は、業績(パフォーマンス)、潜在能力(ポテンシャル)、熱意の3軸を用いている。

グローバル共通の評価項目として「求められる資質」6項目(グローバルコアコンピテンシー)を設定。また経営者候補になるために必要な経験を5つの軸で定義しており、具体的には経営的視野、事業再構築、新事業開発、全社横断プロジェクト、海外経験だ。選ばれた人材にこの5つをどう経験してもらうか、個別で育成議論をしている。

<事例.グローバルリーダーシップ研修(GLP)>

グローバルにビジネスをリードできる次世代経営者候補の計画的育成のために実施している研修で、内容はMBA的な知識、経営課題に関するアクション・ラーニングだ。最終報告会では東京に集まってプレゼンテーションを行った。

<包摂型のタレントマネジメントへ>

2016年度から選抜型のキータレントマネジメントを行ってきたが、VISION2030の実現にあたり、包摂的タレントマネジメントへ移行する必要がある。非選抜型で、スコープはグローバルであり当社の2万人程度が対象だ。組織ニーズと本人のキャリアマッチングをキャリアパスも含めて設計し、自律的キャリアをグループで展開する。こういった取り組みを2万人という規模で行うには、テクノロジーの活用が必須だ。2023年度にすべてのタレントマネジメントやコア人事が、グローバル人事システム「Workday」に統合される。人事情報を一元管理でき、人材育成設計もよりスムーズに行えるようになる。

<エンゲージメント強化>

過去のエンゲージメント調査の結果から、失敗を恐れずチャレンジをする企業文化が必要であることが分かり、評価制度や全社表彰制度を改定した。エンゲージメントに関するもう1つの軸が自律的キャリア開発と成長実感のための仕掛けで、継続的学習機会の提供も行っている。当社のユニークネスである「自主・自律・協働」を体現し、エンゲージメント向上を組織力に昇華させる企業文化にすべく取り組んでいる。

<リーダーシップ開発>

社員の自律成長支援のための育成プログラムとして、リーダーシップ開発と自律的キャリア施策がある。前者はコーチングやセルフリーダーシップ研修などを行い、後者は階層別というより各人が必要な研修を選べるよう支援する。リーダーシップに関しては、1 on 1コーチングやLDP、システム・コーチング、コーチングスキルの3つのアプローチに集中投資をしている。

<自律的キャリア>

自律的キャリアについては「気づく」「選ぶ」「挑む」のサイクルを回す施策を実施している。「気づく」では自分らしさと自分を取り巻く環境に気づくことが重要で、1 on 1でキャリアを考えたい方へはキャリア相談室やメンター制度、ちょっと気になる方へはキャリアセミナー、とことん自分と向き合いたい場合はセルフリーダーシップ・プログラム、じっくり考えたい方にはワークショップを開催している。

<リーダーシップ文化>

経営陣やリーダー陣の行動変容は重要で、経営幹部からミドルマネジメント層にかけて各層のリーダーシップ開発による組織およびパフォーマンスの向上を目指し、各施策を継続的に実施。役員層から事業部長層には「1 on 1 エグゼクティブコーチング」、グループリーダーやチームリーダーには少人数セッションのリーダーシップ開発研修「LDP」を開催している。

また組織全体に対して働きかけるには、メンバー相互の関係性の向上と共通の目標に対するコミットメントを引き出すことが必要なためシステム・コーチング等を導入、実施している。チームとして目指す方向を明確にし、腹落ちした状態で、本気で取り組むことを学ぶ。

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