データ仮想化プラットフォームで実現する現場で広がるデータ活用
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【講演者】
- 東京エレクトロン株式会社
Corporate Innovation本部
デジタルデザインセンター アプリケーション開発1部
Group Leader
服部 秀郎 氏
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【講演者】
- NSW株式会社
サービスソリューション事業本部営業統括部第二営業部 部長
島田 雄次 氏
<東京エレクトロン株式会社(TEL)の概要>
当社は半導体の製造装置をつくるグローバルリーディングカンパニーである。半導体製造プロセスの複数工程に対して、自社の装置を提供している点が強みだ。TELグループの人々が、効率的かつ安全にデータを自在に扱える未来を夢みてdenodoを導入した。denodoの利用は1年にも満たないが、denodo導入初期に体験したことをメインに本日はお話しする。
<denodo導入 Before&After めざす姿>
2022年4月より課題の認識および手段の検討を始め、同年9月よりdenodoのPoCを、2023年7月より本番サービスの提供を開始した。denodoの導入によりデータを使う人が試行錯誤しながら自らの手でデータを用意できる環境を目指し、IT・DX技術者の負荷を減らしながら、データセキュリティを全般的に向上していきたいと考えた。
<データ仮想化に着手した理由>
データの物理的な統合は、今も今後も主力のデータ利活用の一つであると思われるが、どうしても専門技術者依存の傾向があり、データ利用のニーズ発生から提供までに時間がかかってしまう。コストと時間で頭打ちが出てしまう事がある。より迅速にニーズに対応していくために、『データ利用のセルフサービス化』を図るべく、データの論理統合(仮想統合)に着手した。
<denodo活用に向けた教育>
denodo導入において重視したのが教育カリキュラムである。我々自身がトレーナーとなり、教育コンテンツも内作をしている。教育の目的は、業務を熟知している当事者が、自らの手でデータを効率的に用いられるようにすることだ。対象者は、IT/DXの技術者でなくても良い。スコープは、スキル習得だけでなく、データ利用倫理も学んでもらう。denodoだけでなく、denodoを介してBIツールやノーコードアプリに繋ぐような応用編まで学ぶようにしている。
<導入後の現状>
オンプレ、パブリックSaaS・PaaSを含む111のデータソースが、denodoに接続している。仮想化したデータの件数は、BV5,167だ。教育を通じて養成したデータの開発者は約100名にのぼる。denodoを介し各データベースに返されるクエリは月間50万件を超え、BIやアプリを通じて間接的なdenodoユーザも増えている状況だ。
<denodo導入の壁>
データ利活用は可用性保護との闘いではないだろうか。誰がどう使ってもデータソースの可用性にダメージを与えぬよう、注意が必要であった。denodoの最大の特徴と思われるが、クエリオプティマイザが最小限のデータをデータソースから取るために、クエリをプッシュダウンしてくれる。この点が一般的なデータ物理統合と異なる点と考えている。
部門ごとの機密性を守るために、denodoでデータを公開することへの抵抗感も強いものがあった。しかし厳しくやっているようでも、人を介したファイルベースのデータのやりとりがあると、データセキュリティのリスクを低減できてはいない。denodoを介したデータの利用にしていく事で、モニタリング可能、つまりデータガバナンスが強化され、リスクも低減されることを説明する必要があった。
<NSW株式会社の概要>
当社は「Humanware By Systemware」を企業理念に掲げ、4つの事業領域でソリューション・サービスを提供している。新たな社会、サステナブルな社会を作るために、顧客のDX実現を目指して活動しているところだ。なお米国Denodo Technologies社とは、パートナー契約を締結している。
<ガバナンスを見据えたデータ環境の整備>
SDGs、ゼロエミッション、「Lightning廃止法案」をはじめとするEUにおける規制など、グローバルで見ると規制や遵守すべきルールが増えている。海外生産を行う企業は、二酸化炭素排出量や生産構成情報といった情報管理が、海外工場を含めグローバルで必要になってくる。
<データ活用の現状>
多くの企業においては、部署・ロケーションごとのデータ活用が中心だ。そのためツールや保存先も統一されていない。業務を熟知した人たちが、業務に必要なデータを使いやすい形式で保存し、分析やレポート作成に使っている状況だ。一方、グローバルで管理する、また様々な情報を組み合わせた判断が求められる状況においては、データのサイロ化は問題を生む。
例えば、EXCELのバケツリレーは時間を要し、かつ加工されたデータの運用に至る懸念がある。依頼フローを経由した情報提供のケースでは、回答に1か月を要するなど、必要な時に必要なデータが揃わない。つまり情報の正確性・鮮度に問題が生じるために、ユーザはデータを使うモチベーションを無くしてしまう。現状の運用では、データドリブン経営の逆を行くことになる。
<情報ガバナンスの整備とdenodo>
情報ガバナンスの整備には「セキュリティとアクセスの確保された情報の管理」、「適切な情報開示と透明性の確保」が求められる。実現にあたっては「出どころが明確な鮮度の高い正確なデータを提供する」という、データマネジメントのガバナンスも必要だ。
目指すべきデータマネジメント基盤は、データ管理における統合ゲートウェイであり、それを提供できるのがdenodoだ。denodoは「リアルタイムでのデータ提供」、「データ所在の可視化」、「アクセス制御」を実現する。「認証認可アクセス制御」、「データマスキング」、「アクセスログの取得」による情報へのアクセス制限によって、ガバナンスを効かせることが可能になるのだ。
また、ユーザがデータを使う気になるように、データカタログを介してどのようなデータがあるか開放していく。Googleのような検索ボックス、新しいコンテンツの表示、AIエンジンにより提供されるレコメンデーションがデータカタログの主な特徴である。
<データマネジメント構想に重要なポイント>
最終目標の設定、データの把握、段階展開の検討といった構想が、最適なデータマネジメント環境には必要になる。さらに状況に合わせた調整や軌道修正も重要だ。DXを成功させる鍵はデータマネジメントにある。そこで顧客のデータマネジメント成功に向け、弊社では140名体制で、構想作成から「使えるデータ基盤」を見据えた伴走支援を行う。さらに顧客に沿ったサクセスプランの策定など、NSW独自のカスタマーサポートも提供している。
<結びに>
人手によるデータ運用は限界であることから、データ活用を活性化させる環境が必要になる。情報ガバナンスの実現には、データの出入りを一元管理することが重要だ。DX成功には、システム部門、DX部門、ユーザ部門、ベンダーまでを巻き込み、一体となって推進していく必要がある。
◆企業情報
NSW株式会社:https://dx.nsw.co.jp/
Denodo Technologies株式会社:https://www.denodo.com/ja