アバナードが考える製造業DX
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【講演者】
- アバナード株式会社
- シニアディレクター
播磨 隆弘 氏
<アバナード株式会社の概要>
当社は米国で2000年、アクセンチュアとマイクロソフトの合弁会社として創業し、日本法人は2005年に設立した。グローバルで60,000名以上の従業員を抱え、日本国内では1,500名以上が在籍している。26カ国92拠点からの対応が可能であり、5,000社以上のクライアント企業とのプロジェクト実績を持つ。
<製造業DXにおけるアバナードのケイパビリティ>
事業の2つの軸は、「テクノロジー」と「ビジネス戦略を実現するアドバイザリー」だ。3,500名のインダストリーエキスパートを有し、ワールドワイドで製造業クライアントのDX推進を支援している。ワールドワイドでの製造業・小売業のクライアントは、1,000社以上である。
<アバナードによる製造業DX支援>
当社では、守りのDXとして「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」を、攻めのDXとして「デジタルイノベーション」を推奨している。
デジタイゼーションは、Power Platformの利用やコミュニケーション基盤の刷新・利活用促進を通じて各種情報のデジタル化を支援するものだ。デジタライゼーションは、デジタルツィンやHoloLensを利用し、業務変革から実現する業務の効率化やコスト節約を、主に業務プロセスの可視化・分析の視点から支援するものだ。
デジタルイノベーションは、デジタル技術を活用し、ビジネス変革や革新的な製品サービスの創造を通じ、新たな価値の創出を目指す。シミュレーション高度化・計画精度向上による収益性向上を、高度なAI、BI、CI等を通じて支援している。
<日本の製造企業が体感する変化とは>
日本の製造企業は、「オペレーションエクセレンスの変化」と「提供価値の変化」に直面している。
<オペレーションエクセレンスの変化>
旧来のオペレーションエクセレンスでは「Speed」が求められていた。サプライチェーンやエンジニアリングチェーンにおける商流、物流、情報流のスピードアップのために、各々の主管部門が主導するオペレーションの効率化を行なっていた。
一方、これからのオペレーションエクセレンスに求められる重要な要素は、「Agility」と「Velocity」である。Agilityとは、サプライチェーンやエンジニアリングチェーンを取り巻く内外環境の変化への俊敏な対応力のことだ。Velocityとは、競合に対し、圧倒的な優位性を築けるグローバルサプライチェーンでの付加価値創造力のことであり、結果として個客ごとに最適化されたオペレーションサービスを提供できるようになる。
Velocityの実現には、スマートテクノロジーの活用が必須だ。具体的には、オペレーションサービス提供基盤としてのプラットフォームの確立やパーソナライズされたインテリジェンスを提供するAIモデルの構築といった施策が必要になる。
<提供価値の変化>
製造企業の伝統的な価値観は、性能や品質といった製品そのものの価値が、価格を上回っていることであった。一方、デジタル時代においては、製品、サービス、個客体験が形成するエコシステムで勝負することになる。つまり製品およびアフターセールスの体験が、価格を上回っていることが重視されるのだ。
<テクノロジーのトレンド>
アクセンチュア社が公表した「テクノロジービジョン 2023」によると、リアルとデジタルの融合がキーワードだ。4つのテクノロジートレンドがテクノロジー、仮想と現実、顧客と企業の連続性をサポートするとも述べている。そのトレンドとは、「デジタルアイデンティティ」「私たちのデータ」「一般化するAI」「フロンティアの果てへ」だ。スマートテクノロジーの観点では、AI領域が非常に重要である。
<データドリブンの重要性>
ワールドワイドでもデータドリブンの潮流は高まりを見せており、「個客理解のためのデータ活用」、「ビジネス継続のためのデータ活用」、「データ活用ビジネスへの参画」の3つの潮流がある。特に個客理解のためにデータを活用し、カスタマーインテリジェンスを強化している企業の勝率は86%にものぼる。
データドリブン型製造業の変革ステップは、分析レベルにおいてはデータに基づく予測を、データ活用度においては事業・拠点横断および外部のデータ活用を目指すことが重要だと考える。データドリブン型製造業は、サプライチェーン横断での予測型事業管理に到達することで初めて、全社DX、つまりビジネスモデルの変革を推進できるようになる。
<全社DXによるビジネスモデルの変革>
全社DXを推進することによって、コネクトテッド、インテリジェント、スケーラブル、スピーディといったケイパビリティを獲得可能だ。中でもコネクトテッドとインテリジェントは、特に重要である。
今後、製造企業がDXを推進するためには、デジタル基盤の構築を進めるとともに、データドリブン型製造企業に変革することが必要になる。DX推進によって製造企業が実現したいことは、「経営管理基盤の再構築」、「サプライチェーンのデジタル化」、「販売・個客接点のデジタル化」、「AIによるコパイロット・業務再編支援」である。
<アバナードが考える製造業DX>
製造企業は、上述の変化に適応していくために、スマートテクノロジーを利活用し、エクスペリエンス向上、オペレーション変革、大規模なイノベーションに取り組む必要がある。この3つの領域を支援するサービスを、アバナードは提供している。
製造業DXを強力に推し進めるには、スマートテクノロジー利活用をベースとしたスマートデジタルマニュファクチャリングの構築が必要である。スマートテクノロジーの利活用は、「Integrated」「Scalable」「Open」を可能にする。スマートテクノロジー利活用が進む背景には、既存改善手法の限界、さらなるパフォーマンス向上機会の提供、DX基盤構築の必要性の3つがある。スマートテクノロジー利活用によってオポチュニティがあるのは、リライアブルなオペレーション、デジタル品質、サスティナビリティおよびエネルギーの最適化、サプライチェーン最適化、労働生産性の領域だ。
新たな価値を創出すべく、デジタルツィンやAI等のスマートテクノロジーを柔軟に使いこなすとともに、データドリブン型製造業に変革することこそ製造業DXの足掛かりとなる。IoT、データ、AIが「スマートデジタルファクトリー」の実現を可能にするのだ。未来のデジタルファクトリーは、デジタルマニュファクチャリングプラットフォーム、データ、AIを利活用することで透明性を確保し、生産パフォーマンス、アセット活用、品質、コストを最適化するほか、自律的なオペレーションへと変革していく。
<価値創出と成功を約束するアプローチ>
当社では、製造業DXを加速的に進めていくには、3段階のアプローチを踏むことが重要だと考える。最初のステップは、大きく考えることだ。明確な戦略・ビジョン・ロードマップを策定して、関係者間で共有することが重要になる。次のステップは、小さく始める、MVP・スケールポテンシャルだ。1つの拠点の1つのラインから小さく始め、1つのユースケースに分析を集中していく。そこで確実に成果を刈り取っていくこと、成功体験を得ていくことが重要になる。最後のステップは迅速に拡大、アジャイルでの価値実現だ。製造ライン、ファクトリー、ネットワークの3段階で、パイロット後にスケーリングしてくことが重要である。
◆企業情報
アバナード株式会社:https://www.avanade.com/ja-jp