カード決済情報販売ビジネスモデルの構築とデータ活用のポイント

【講演者】
デル・テクノロジーズ株式会社
サービスビジネス営業統括本部
シニア・ソリューション・プリンシパル
池田 司 氏

<データ分析支援サービス “Custella”>

三井住友カード様のCustella(カステラ)は、カードの決済データ等の情報を分析するサービスで、クレジットカードの加盟店様向けに提供している。「カスタマーを照らす」という意味があり、キャッシュレスデータを通じて加盟店様と一緒に顧客提供価値を見つけたいという想いが込められている。

キャッシュレスデータからは、いつ・どんな人が・どこで・どんな業種で・いくら決済したかが分かる。購買行動の把握により、マーケティング等の意思決定に活用可能だ。Custellaは現在7つのサービスがあり、その1つのCustella Trendでは、月間5億件の決済データを分析し、市場全体の消費トレンドレポートを提供している。7つのサービスにより、全体の消費行動を俯瞰するマクロ視点からターゲティングのミクロ視点まで含有する。

<三井住友カード様におけるSmart Data Lake構築>

三井住友カード様では以前、カードの決済データをSASによって集計・分析していた。ハードウェアの老朽化に伴い新たなデータ基盤が必要となり、Smart Data Lake(SDL)を構築した。SDLによってデータの集計・分析が格段に速くなり、多角的なデータ分析をスピーディーに行えるようになった。その結果、新ビジネス基盤にデータを匿名化したうえでアップロードし、新ビジネスであるCustellaを介することが可能となった。

Custellaを支えるSDLのアーキテクチャは、ストレージ層・ネットワーク層・サーバ/ミドルウェア層・セルフサービス アナリティクスツール層・ユーザーアクセス層であり、すべてデル・テクノロジーズのサービス部隊で構築されている。

<SDLによるビジネス効果>

Custellaによるコロナ影響下の消費行動レポートが、2020年5月7日にニュースリリースで発表された。スーパー等では決済額・決済総額ともに増加し、逆に旅行業界などでは決済額・決済総額ともに減少したという内容だ。データ集計・分析からチェックまでかかった期間は、GWを挟んで2週間程度であり、かなりのスピードで提供できたことになる。

ハードウェアの性能向上と拡張性のあるアーキテクチャにより、迅速なレポート提供が可能となった。従来のSAS BI環境での性能は単体のサーバやストレージの処理能力に依存していたが、SDLではサーバもストレージも増やした分だけ性能が向上する仕組みだ。数日かかっていた分析を数分でできるようになったため、今まで不可能だった複数の角度での分析を何回も実施できるなど現場から高評価を受けた。

<DXの根幹となるデータ利活用>

経産省の定義するDXとは、データとデジタル技術をビジネスに活かすことだ。製品・サービス・ビジネスモデルを変革し、ビジネス環境の激しい変化に対応する。2023年9月に発表されたガートナー社のハイプサイクルによると、幻滅期を超えて今後普及が見込まれる技術として、AI・ブロックチェーン・IoTなどがある。特にAIは実用段階にあり、労働人口の減少の面も考慮し、働き方の改革に繋げることが必要だ。

<デジタルディスラプターによる既存ビジネスの破壊>

DX推進が求められる理由として、デジタルディスラプターの存在がある。データを活用しデジタル化を進めた企業が既存ビジネスモデルを破壊しているのだ。例えば、以前はキャッシュレスとはクレジットカードとほぼイコールだったが、現在はQRコード決済や電子マネーも普及している。デジタルディスラプターに対抗するためにも、データ活用によるビジネスモデルの変革が必要だ。

<DX推進におけるデータ活用の位置づけ>

DXは業務部門が主導し、業務改革施策を検討する。業務改革を実現するアプリケーションを開発するのがIT部門だ。分析チームはアプリから取得したデータから新しい洞察を業務部門へインプットする役割を担う。この一連のサイクルをいかに速く回していくかがDXのポイントだ。三者の共通基盤として、データ活用基盤を用意する必要がある。

また、内閣府や文科省ではデータリテラシーの向上施策が行われ、2025年までにすべての大学卒業生が基礎的なデータリテラシーを習得する予定だ。今後の大学生に選ばれる企業となるためにも、データ基盤が必要となる。

<データ利活用に必要なもの>

データの発生元として、基幹システム以外にも、クラウド・社外データ・5G・IoT等がある。発生する多種多様な大量データを収集し、活用する仕組みとしてデータ活用基盤が必要だ。データ活用基盤で整備されたデータは、AI・アプリケーションなど、様々な活用方法に対応して提供される。

データ活用基盤をどこに置くべきかについて、お客様からお問い合わせをいただくことも多い。データ基盤構築時には、パブリッククラウドのデータ転送料金であるエグレス料金の試算が忘れられがちだ。エグレス料金が予想以上に膨らみ、高額な費用を請求されるケースも多い。エグレス料金を発生させないため、データ基盤はオンプレまたはプライベートクラウドに置くことが推奨される。

<データ活用推進のポイント>

データ活用推進は、データ活用・データ運用・データ分析と活用基盤の3つについて、人材・プロセス・IT基盤の3つを掛け合わせ、合計9つの観点で検討する。例えば人材に関して、データ活用ではデータサイエンティストやAI人材、データ運用ではデータスチュワード、データ分析・活用基盤ではIT基盤構築・運用者がテーマとなる。最終的に9つ全てを揃えることになるが、優先度を決めて取り組むことが重要だ。

<データ活用 コンサルティング>

9つの観点について検討段階から実装・定着まで、デル・テクノロジーズのコンサルティングサービスが対応する。特定のサービスありきではなく、お客様の課題をヒアリングし、それに相応しいソリューションを提案可能だ。

<4つのトランスフォーメーション・サービス>

コンサルティング以外でも、お客様の変革を実現する4つのサービスがある。1つ目のマルチクラウドプラットフォームは、クラウドインフラをコスト効率よく最適化し、ビジネスの成長を促進する。コストを下げた分を、DXの投資に回すことが可能になる。2つ目のデータとアプリケーションは本日お話しした内容だ。3つ目はデジタルエクスペリエンスのモダナイゼーションで、従業員の働き方改革だ。最新のテクノロジーでワークフォースを強化し、働き方を変えていく。4つ目のビジネスレジリエンスはセキュリティのサービスで、データ保護やサイバーリカバリ、アプリケーションの継続性をサポートする。ランサムウェアによる被害でビジネスが1カ月間停止してしまうといった事例もあり、ビジネス中断を防ぐためにもバックアップファイルをしっかり保護し、万が一攻撃された場合も迅速に復旧できる体制を整える。

<本日のまとめ>

第1に、自社のデータを活用し、業務変革(DX)を推進する必要がある。自社のノウハウや叡智はデータに集約されており、データ活用でデジタルディスラプターに対抗する。第2に、データ基盤は将来を見据えたアーキテクチャが求められる。データ活用は成長分野であり、拡張性のあるアーキテクチャ、予測可能な費用試算が肝要だ。第3に、データ活用はIT基盤のみならず、人材育成・プロセス定義も必要だ。IT基盤構築はもちろん、人材育成、プロセス定義の検討から定着化まで、デル・テクノロジーズが伴走する。

◆講演企業情報
デル・テクノロジーズ株式会社:https://www.dell.com/ja-jp