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ミャンマー進出と外資規制の最新動向~現地駐在弁護士が詳しく解説

民主化を経て急速に成長しているミャンマー。外資企業がビジネスチャンスを見出し、相次いで進出を始めている。一方、ミャンマーの外資規制は他の国々と大きく異なるため、これを押さえずしてミャンマービジネスを成功させることはできない。本稿では、ミャンマーの外資規制の基礎を学び、ミャンマー進出の参考とする。

ミャンマー進出と外資規制の最新動向~現地駐在弁護士が詳しく解説
  1. ミャンマーの経済
  2. ミャンマーへの進出方法とその形態
  3. ミャンマーでの現地法人(子会社)の設立
  4. ミャンマー進出における外資規制
  5. ミャンマー会社法改正と新投資法制定の動き
本稿の記載は2016年7月末時点の情報に基づく

ミャンマーの経済

ミャンマー連邦共和国 基礎データ

2010年11月に実施された総選挙で、連邦連帯開発党(USDP)が約8割の議席を確保、その直後に、アウン・サン・スー・チー氏の自宅軟禁を解除。翌2011年3月に、現テイン・セイン文民政権が発足し、民政移管が実現し、民主化を推進するとともに、経済改革等の取組を断行中である。

例えば、中古車両の廃車許可(2011年12月から40年以上、翌2012年1月には生産から30年以上経過した車両)及びそれに代替する車両輸入許可を行うようになり、国内を走る車両が格段に新しくなった他、同年4月には、為替レート統一化に向け、管理変動相場制を導入した。

また、同年11月には、外国投資受入の円滑化のため、制限的な内容だった外国投資法を改正した。

欧米諸国は、ミャンマーが進めている政治・経済改革を評価し、米国は2012年11月に宝石一部品目を除くミャンマー製品の禁輸措置を解除し、EUも2013年4月に武器禁輸措置を除く対ミャンマー経済制裁を解除した。

– 外務省
ミャンマー連邦共和国

ミャンマーへの進出方法とその形態

ミャンマーへの進出方法とその形態

ミャンマーへの進出方法

日本企業が海外への進出を考える際、一般的には、株式譲渡により既存の支配権を取得する方法(M&A)か、新規に現地拠点を設立する方法の、いずれかを選択することが多い。

だがミャンマーでは、外資による現地企業への資本増加が原則として認められていない等、種々の制約からM&Aの方法が利用できる場面は限定的であるため、現地企業への資本参加の方法による進出は一般的ではない。

その結果、現地拠点を新たに設立したうえで、新規に事業を開始するか、現地企業の既存事業を当該新拠点に移転する方法が広く採られている。

ミャンマーへの進出形態

上記のとおり、ミャンマー進出に際しては、資本参加の形での進出形態が限定的であることから、どのような形態で現地拠点を設立するかがまず問題となる。

この点について、現地法人(子会社)または支店のいずれかの設立が考えられる。それぞれの形態の主な差異は下表のとおりである。

ミャンマー会社法

これまでのところ、現地企業の既存事業を承継する形での進出が行われることが多いが、その場合、新たな現地拠点の設立と、既存事業の(新たに設立した現地拠点への)移転という方法が採られることになる。この場合の現地拠点は、当該現地企業と進出する外資企業が株主となって現地法人(子会社)を設立することが一般的である。

なお、一般に「駐在員事務所」と呼ばれる拠点は、銀行や保険会社において特に認められるものであり、それ以外の駐在員事務所は、情報収集やリエゾン業務等の非営利活動のみを行う「支店」を、慣例上「駐在員事務所」と呼んでいるにすぎない。

ミャンマーでの現地法人(子会社)の設立

ミャンマーでの現地法人(子会社)の設立

現地法人の設立形態

現地法人(子会社)は、ミャンマー会社法上の有限責任株式会社(companies limited by shares)の形態で設立されることが一般的である。

現地法人設立の手続き

投資企業管理局(Directorate of Investment and Company Administration、通称:DICA、ダイカ)の定める様式・手続に従って、必要書類をDICAへ提出することが求められる。DICAにおける会社設立手続が完了すれば、設立証明書(Certificate of Incorporation)と営業許可証(Permit to Trade)が発行される。

具体的な手続や提出書類は、DICAの運用によるものにすぎず、法令上の明文規定に基づいたものではないことに加え、最新の運用が常に公表されるとは限らないのが現状である。そのため、実際に設立手続を行うに際しては、具体的にどのような対応が必要か、あらかじめDICAへ確認を行うことが望ましい。

なお、会社設立そのものはDICAに対する手続のみで理論上は可能であるが、外資規制との関係で、外国投資法に基づく投資許可を得る場合のミャンマー投資委員会(Myanmar Investment Commission、通称:MIC、エムアイシー)への投資許可申請や、経済特区への進出を行う場合のSEZ管理委員会(SEZ Management Committee)への投資許可申請が別途必要になる場合がある点に注意が必要である。

ミャンマー進出における外資規制

ミャンマー進出における外資規制

ミャンマーにおいて統一的な外資規制は存在せず、原則として外資参入は自由である。

ただ、このことは如何なる事業であっても自由に外資が参入することができるということを意味するものではなく、明文のルールに基づかない運用によって外資の参入が禁止されたり、外資会社の権利に関する法律上の一定の制限が参入の障壁となっていたり、という形でのいわゆる「事実上の」外資参入規制が存在する。

これらの規制の適用除外を受けるために一定の手続は存在するものの、その利用が容易ではないことから、結果的に実態としては外資規制が存在するに等しいとも言い得る状態が生じているのが実態である。

運用による外資参入禁止と、法律上の外資会社の権利に関する一定の制限に基づく参入障壁としては、主に以下のものが挙げられる。

①運用による外資参入禁止

ミャンマー会社法に基づく会社設立を行うためには、DICAに対して必要書類の提出を行う必要があり、外資会社(ミャンマー人またはミャンマー内資会社以外の者が1株でも保有する会社)の設立に際しては、営業許可証(Permit to Trade)の発行を受けなければならないとされている。

法令上に明文の根拠規定は存在しないものの、一定の事業に関しては営業許可証を発行しないという形で外資参入に対する制限が行われている。

具体的には、Trading(輸入販売)事業を目的とする外資会社の設立は認めない運用がDICAにおいて行われており、これらを事業目的とする会社を設立しようとしたとしても営業許可証が発行されないという形で外資の参入規制が行われている実態がある。

なお、外資のTrading事業への参入は、2015年以降、特定の品目に限定して徐々に解禁されつつある。

②外資会社の権利制限に基づく参入障壁

ミャンマーにおいては、不動産譲渡制限法において、外資会社が不動産を所有すること、または1年を超える長期間のリースを受けることが原則として禁止されている。

その例外として、外国投資法に基づくMICの投資許可を受けた場合、または経済特区法に基づくSEZ管理委員会の投資許可を受けてSEZへの投資を行う場合は、特別に最長50年(かつ期間10年間の更新が2回まで可能)のリースを受けることが認められる、という規制の建付けになっている。

そのため、製造業における工場用地の確保等、長期間の土地利用権を確保することが事業実施の前提となるような産業においては、上記のいずれかの法律に定めるルートによる投資許可を受けることが事実上不可欠となる(また、製造業に関しては、そもそもMICの投資許可を受けない限り、DICAから営業許可証も発行されないという運用になっている)。そのため、不動産の長期リースを受けることが前提となる事業においては、MICによる投資許可の取得が大きな参入障壁として登場することになる。

ミャンマー会社法改正と新投資法制定の動き

ミャンマー会社法と外国投資法改正の動き

ミャンマーでは、2016年7月末現在、ミャンマー会社法の改正と、現在の外国投資法と内国投資法を一本化した新投資法の制定に向けた検討が進められている。DICAのウェブサイトにおいては両法案のドラフトが公表されている。現地の政府系新聞においては、2016年中の改正法成立を目指して、間もなく国会に改正法案が提出される見込みであるとの報道もなされている。

2016年7月末時点で公表されている最新版の法案によれば、公表されている直近のドラフトがそのまま成立した場合、現状統一的な規制が存在せず、運用や権利制限による事実上の外資規制として様々な形態で存在していた外資規制は、新投資法(及び関係当局が定めることになっている関連規則)に一本化されることが見込まれている。

これにより、従前「事実上の」外資規制が存在していた不明瞭な外資規制の枠組みは基本的に解消され、新投資法に定める規制のみによりその参入の可否の判断を行うことが可能な建付けとなることが期待されるところである。

新法では、外資企業に関する様々な規制に大幅な変更が行われる見通しであるため、ミャンマー進出を狙う企業は、今後の法改正の情報をしっかり把握していく必要がある。

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井上 淳 氏 【 寄稿 】
森・濱田松本法律事務所
ヤンゴンオフィス
弁護士
(日本及びニューヨーク州)

井上 淳 氏

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