バーゼルⅢ最終化の見直しのポイントと影響


昨年金融庁は、銀行の自己資本比率規制を見直す「バーゼルⅢ最終化」の規則案を公表した。原則として2023年3月期から適用される(※)が、内部格付手法等の内部モデルを利用しない国内基準行(海外に営業拠点を持たない銀行)はそれより2年後ろ倒しして2025年3月期から適用される予定である。バーゼルⅢ最終化では、信用リスク、マーケット・リスク、オペレーショナル・リスクの算出方法が大きく見直されるため、各行は準備を進める必要がある。以下、規則案に基づき見直しのポイントと影響について解説する。(※ただし、EUでは2025年から適用予定であり、金融庁も「諸外国の規制動向等も踏まえつつ、引き続き検討」としていることに注意が必要である。)

目次

持続可能な金融機能の維持に向けて

バーゼルⅢ最終化の見直しの適用時期は、当初、2022年とすることで国際的に合意されていたが、コロナ禍を受けて2023年に延期された。我が国では、内部モデルを用いる国内基準行に対しては、さらに2年後ろ倒しして2025年から適用される予定である。適用時期に向け、各行は準備を進める必要がある。

ただ、各行は現時点で最低所要水準をある程度余裕をもってクリアしている。加えて、足元の業績が好調なこともあり、今回の見直しで自己資本比率が最低所要水準を下回る可能性は低い。好調な業績の要因の一つは、地銀を中心に、コロナ禍を受け2020年に導入された実質無利子・無担保融資が積みあがっており、(債務者に代わって各都道府県等が支払う)利息収入が下支えしていることである。

実質無利子・無担保融資は元金の返済が最長5年間免除されているが、その多くは今年から返済が開始される。債務者の中には依然経営状況が厳しい者も多く、返済が困難で破綻するケースも生じる懸念がある。実質無利子・無担保融資は信用保証協会が債務の全額または80%を保証しているため、銀行が直接損失を被る額は小さいが、その債務者に別途自前の融資(プロパー融資)があれば損失が生じるし、そもそも地元企業の多くが破綻すれば地銀は営業基盤を失ってしまう。

コロナ禍を受けた資金繰り支援で積みあがった企業債務は巨額であり、過剰債務の解消に向けて銀行だけでなく官民を挙げて取り組む必要があるが、銀行としても当事者意識をもって債務者の経営改善や事業再生に取り組むことが期待される。

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バーゼルIII最終化を見据えた金融機関における実務上の対応ポイント

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寄稿
大和総研
金融調査部 主任研究員
金本 悠希 氏
2005年大和総研入社。金融規制、金融商品取引法、税制等を担当。著書は『詳説 バーゼル規制の実務』(共著 2019年 金融財政事情研究会)等。
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