2022年の金融政策と金融機関への影響

2022年の金融政策と金融機関への影響

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2021年は世界的な新型コロナウイルス感染症の流行が続く一方で、経済活動は徐々に回復し、世界各国でインフレ率が上昇するなど、2020年とは全く異なる様相を呈していた。また、日本では、新たに岸田内閣が発足するなど、政治的変化も大きかった。本稿では2022年に向けた国内外の金融政策の動向を整理し、日本の金融機関への影響を述べる。

  1. 国外における金融政策の動向
  2. 日本における金融政策の動向
  3. 日本の金融機関が注意すべきポイント
  4. コロナ収束を見据えて金融機関が取り組むべきテーマ

国外における金融政策の動向

まずは、世界的な金融政策の動向を振り返る。エネルギー価格の高騰などを背景に、各国でインフレ懸念が台頭している。そうした中、中央銀行は新型コロナウイルス感染症への対応として行っていた金融緩和策を縮小し、利上げに向けて動き始めている。

すでにニュージーランド、韓国、メキシコ等が利上げし、米国連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ時期も2022年後半であると考えられていたが、2022年中頃に前倒しされるとの観測も出ている。欧州中央銀行(ECB)は2022年中の利上げの可能性を否定しているが、物価上昇が続く中、市場では早期に利上げの条件が満たされるとみる向きもある。各国中央銀行は、金融政策正常化と経済回復の狭間で難しい局面に立たされている。

次に危機が起こった際の政策対応余地を広げるためには、早期に利上げをすることが望ましい。さらに、債務の増加を伴った不動産をはじめとする資産価格の上昇は次のバブルにつながるリスクがあるため、抑制策が必要である。

一方で、現在の物価上昇は、供給制約によって起こっているため、利上げが経済回復を阻害する恐れもあり、各国中央銀行は次の一手に苦慮しているが、インフレが高進すれば利上げに踏み切らざるを得ないだろう。

日本における金融政策の動向

他の中央銀行が正常化に向かう中、日本銀行(日銀)は後れを取る可能性が高い。

2021年10月に岸田内閣が発足し、大型の経済対策を発表した。2021年度の国債発行計画を見ると2020年度に続き200兆円を超え、新規国債発行は約66兆円である。税収増を背景に当初の発行予定額よりは減っているものの、多額の発行であることには変わりない。

現在のところ、日銀による金融緩和によって低金利が維持されているため、国債の借換えはスムーズに行われている。国の債務残高が増えれば、低金利を維持する要請も強まる。物価の上昇圧力も2%に達していない以上、日銀は、2022年も緩和を続けることになるであろう。

他国が利上げに向かう一方、日本が緩和を続けると、以下のような事態となる可能性がある。第一に、円安の進行である。他国が利上げをすれば、相対的に円建資産の魅力が低下する。第二に、対外証券投資の増加である。米国や欧州の利回りが高まれば、投資機会をもとめた日本国内の投資家が投資額を増やす可能性がある。足元ではすでに、米国債利回りの上昇を背景に、米国向け中長期債投資が伸びている。

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