【連載インシュアテック】保険ビジネスのブロックチェーン活用


仮想通貨で利用されてから多くの業界が関心を集めているブロックチェーン。保険業界においてもブロックチェーンは注目されており多くの保険会社が実証実験を行ている。連載2回目では、ブロックチェーンに焦点を当て、ブロックチェーンを活用しているインシュアテックスタートアップの紹介を中心に解説する。

  1. ブロックチェーンの台頭
  2. ブロックチェーン技術と保険ビジネスの相性
  3. ブロックチェーンを活用したインシュアテックスタートアップ
  4. 今後の課題
目次

ブロックチェーンの台頭

ブロックチェーンとは取引(契約)の記録がネットワーク上に分散して記録されている台帳で極めて改ざんされにくいしくみを持った技術である。

これまでは仮想通貨とブロックチェーンが同一視されており、リスクの高い(あるいは怪しい)テクノロジーという間違った印象を持たれていたが、多くのメディアの正しい報道により、仮想通貨はブロックチェーンを利用した1つのアプリケーションであると認識されるようになった。今年に入ってから到るところでブロックチェーンのイベントが開催されており、IT業界ではブロックチェーンというキーワードは市民権を得つつある。

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ブロックチェーン技術と保険ビジネスの相性

このブロックチェーン技術と保険ビジネスは非常に相性がよい。それは、保険の根幹は保険加入者(被保険者)と保険会社との改ざんが許されない「契約」であり、何らかの条件が満たされれば、給付金/保険金が支給されるしくみであるからだ。

ブロックチェーンはインシュアテックの技術の中で重要な位置を占めており、グローバルでみると多くのスタートアップがブロックチェーンをベースにしたサービスを展開している。以下ではブロックチェーンを活用しているインシュアテックスタートアップを一部紹介する。

ブロックチェーンを活用したインシュアテックスタートアップ

Safeshare Global



http://www.safeshareinsurance.com/

Safeshare Globalは2015年に設立され、2016 British Insurance Awardsにてインシュランススタートアップ賞を受賞しているロンドンのスタートアップだ。

Safeshare Globalは、住宅所有者がスタートアップなどの小規模な企業に対して余分な部屋をオフィススペースとして貸し出すシェアリング・エコノミーに対応した保険ソリューションをブロックチェーンベースで提供している。イギリスのオフィス貸しサービスのVrumiと提携することで、企業と住宅所有者の間でオフィススペース利用日数に応じた家財保険が契約できる。



https://www.vrumi.com/

Etherisc



https://etherisc.com/

Etheriscはドイツのスタートアップであり、Blockshow Europe 2017のOscar for Most Innovative Blockchain Startupを受賞している。Etheriscはフライトの遅延やキャンセルが発生した際に保険金を支払うフライトディレイ保険を2016年9月から実証実験が開始され2017年10月から商用サービスとして提供している。

フライトディレイ保険の申込み画面

保険料および保険金を算出するには遅延の確率を予測することが必須となることから、flightstats.comのAPIを活用し、過去のデータに基づいて遅延やキャンセルと遅延の確率を予測している。

技術的にはEthereumブロックチェーンのスマートコントラクトを利用し合理的かつ即時性を担保した保険商品を提供している。フライトが遅延またはキャンセルされた場合、保険加入者へデジタル通知が行われ、人間による審査や検証処理を行わずに自動的にペイアウトが実現される。このようなフライトディレイ保険はスマートコントラクトの機能を利用できることから、フランスではFizzyというサービス名で保険事業者のAXAがフランスと米国間のフライトを対象にサービスを提供している。

iChain



https://www.ichain.co.jp/

iChainはブロックチェーンをベース保険業界にイノベーションを起こす日本のインシュアテックのスタートアップだ。iChainの世界観は、”もしも”のときに迷わずに保険金請求ができるような「世の中を少し便利にする」世界を実現することだ。

iChainはスマホアプリ「iChain保険ウォレット」を2018年5月から提供しており、保険加入者に対して、これまで紙ベースで行われてきた加入保険の保険証書をスマートフォンで管理できるソリューションを提供する。保険事業者に対しては、ブロックチェーンベースの保険証券管理およひび保険金支払いプロセス管理のプラットフォーム「iChain Base」により、保険事業者のメインフレームからWebを中心とした分散技術へのトランスフォーメーションを進めている。

iChainのブロックチェーンビジネス

iChain Baseは現在ブロックチェーンプラットフォームEthereumの商用化オペレーションの技術検証を実施しており、早期商用サービスを狙っている。

今後の課題

このように今後ブロクチェーンを利用した保険事業者やインシュアテックスタートアップは今後増加していくであろう。その一方、仮想通貨以外のブロックチェーン技術の商用サービスへの適用はまだまだ少なく未成熟な技術である。また、ブロックチェーンをベースにした経験豊富なアプリケーションエンジニアも決して多くなく、技術の成熟とエンジニアの育成が課題となっている。

後藤 康成 氏
寄稿
iChain株式会社
取締役 COO
後藤 康成 氏
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