金融機関における働き方改革の“現在”~「りそなホールディングス」の取り組み

金融機関における働き方改革の“現在”~「りそなホールディングス」の取り組み

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2019年4月の働き方改革関連法案の施行を受け、日本企業の労働環境の変革が期待されている。残業時間の上限規制や有給休暇の取得義務化など、働き方の見直しを進める企業が増える一方、生産性や売上向上に結び付かないとの声もある。その理由には方法論が先行し、なぜ働き方改革を実施し、何を目指すかに関しての理解不足も挙げられる。本特集では、全3回に分け日本企業が目指すべき働き方改革と、その実行に向けた課題を様々な視点の取り組みに基づき考えていく。本稿では、「経営ショックを契機に人事制度を見直し新しいアイデアが生まれる職場へ」をテーマに取り組んでいるりそなホールディングスの髙矢葉子氏に話を聞いた。

  1. 女性社員の声を経営に反映するりそなWomen’sCouncilを創設
  2. いつ、どこにいても、オフィスと同じ生産性を実現

女性社員の声を経営に反映するりそなWomen’sCouncilを創設

りそなホールディングスが「ダイバーシティ・マネジメント」の推進を始めた背景には、2003年5月の「りそなショック」が関係している。当時、経営危機に直面した同社は、社内の人員整理に伴い、多くの男性社員が退職することとなった。退職した総合職の男性社員の業務は、一時的に一般職の女性社員やパートタイマーの社員などがカバーすることになった。女性の活躍によりこの難しい局面を乗り越えた同社は、人事制度の見直しを進めると同時に、女性活躍を成長戦略の中心に据えるようになったという。

りそなホールディングス人材サービス部ダイバーシティ推進室室長の髙矢葉子氏は「当時の経営トップの細谷英二が、当社の女性活躍を大きく後押しした。細谷は、『顧客の半分は女性、家計運用のカギを握るのも女性ならば、女性の視点を生かした改革をすべき』とのメッセージを打ち出したほか、『女性に支持される銀行No1』を目標に掲げ、女性社員が働きやすい環境の整備を進めた」と語る。

具体的に行われた人事制度の見直しとして、総合職・一般職という区分けを廃止しフラットな職務体系を構築したほか、正社員やパートタイマーなど、異なる契約形態であっても共通の職務等級・人事評価制度を適用し、同じ職務等級であれば時給換算で同額の給与とする「同一労働・同一賃金」制度を導入した。また、近年では多様な働き方を望む人材に配慮した職場環境を実現するため、勤務時間・業務範囲を限定できる新たな職種として「スマート社員(限定正社員)」を導入している。

2005年4月に、女性社員の声を経営に反映させることを目的に、経営直轄の諮問機関「りそなWomen’sCouncil」を創設した。りそなWomen’sCouncilでは、同社グループの女性社員を約20名程度集め、働き方に関する悩みや問題点を議論してもらう。議論の結果、浮かび上がった問題点は経営トップに直接提言することにより、素早く対処を検討するスキームとなっている。

髙矢氏は、「設立当初は『育児・介護と仕事の両立ができる制度』や『女性管理職同士がつながるネットワークを構築してほしい』など、働きやすい職場環境に関する議論が中心であった。こうして議論の場を設けたことで、女性社員が長く働き続けられる環境整備が大きく前進したと感じている。この10年間で女性社員の産休・育休取得率と育児時短勤務利用率は大きく伸びている(図表3)」と話す。

部下の働きやすい環境に向け管理職に広がるイクボス宣言

少子高齢化を背景とした労働人口の減少により、企業間の人材獲得競争は激化している。同時に、労働者の求める働き方が多様化する中、各企業は人材獲得のために柔軟な職場環境の整備を進めている。

こうした“守り”を意識した働き方改革のほかに、りそなホールディングスは、“攻め”を意識した働き方改革として戦略的に『ダイバーシティ・マネジメント』を推進している。髙矢氏は「多様な能力・考え方を持つ人材が相互に刺激し合うことで、これまでにない新しいアイデアが生まれる職場環境を作ることが、今後の企業の成長に大きく貢献すると考える。

そのため、ダイバーシティ・マネジメントを経営戦略の重要課題として認識している」と強調する。具体的な施策として2018年度には、全所属長を対象にした「働き方改革セミナー&イクボスセミナー」を開催した(※)。イクボスとは、部下のワークライフバランスを応援する経営者や管理職を指す言葉だ。

同社は、社長の「イクボス宣言」を受け、セミナー後には各所属長が続々とイクボス宣言を実施するなど、意識改革が進んでいる。

りそな銀行・埼玉りそな銀行で実施

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