金融機関における業務改革トレンドの変化と課題
〜最後の聖域のデジタルトランスフォーメーションに向けて〜
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【講演者】
- Anaplan Japan株式会社
社長執行役員
中田 淳 氏<Anaplanとは>
Anaplanという会社は、アメリカ、サンフランシスコに本社があり、計画業務に関するクラウドソリューションを提供している。2006年に創業、2012年から営業活動を開始。ニューヨークに上場しており、時価総額大体8,000億円から9,000億円の間ぐらいの会社である。
計画業務については、幾つかの側面があり、まず1点目が、計画を作る部分である。年次の予算計画、毎月作成される経費の予算計画、採用要員計画などの作業に対するサポートが含まれる。2つ目は、顧客が作成した計画が実行フェーズに移ると、基幹系の業務システムなどから実績データが収集できる。その実績データと作成計画を比較し、予実分析などの分析作業を行う。計画通りに進んでいるか、進んでいなければ、どのように修正し打ち手を講じるかなど意思決定に関する部分も計画業務として含まれる。最後に着地の見通し業務、予測業務などのサポートも行っている。計画を作り、予実分析を行い、将来を予測する、これらが計画業務に含まれており、この全てをサポートするのがAnaplanのソリューションである。<Anaplanの導入事例>
Anaplanを導入頂き、計画業務のデジタル化に踏み出されたお客さまはグローバル、日本を含めて多数おり、グローバルでは約1,700社、金融機関に絞るとG-SIBsの11社にAnaplanを利用頂いている。国内でもMUFG、みずほのようなメガバンク、大手損害保険会社や大手保険会社にも利用頂いている。<金融機関における業務改革のトレンドと課題>
トレンドとして、「7年間」「-0.2%」「88.4%」の3点がキーワードとして挙げられる。「7年間」については、マイナス金利、ECB導入してから既に7年が立っていることを示している。「-0.2%」については、2020年の消費者物価指数の全費上昇率を示しており、ターゲットの2%から大きく乖離している状況であるため、トップラインが大幅に成長するような状況は望みづらく、コストコントロールが非常に重要であることを示している。「88.4%」については、コロナ禍において、一般事業会社の方々で、新規事業を立ち上げやビジネスモデルの変革が必要であるという認識を持っているの方が9割近くいることを示しており、金融機関においても、顧客の動向、ニーズ変化の兆しを捉えて、変化への対応力を強化しなければならない状況だと認識している。<IT投資に分野について>
従来までのIT・デジタル化の投資は、基幹業務系システムが中心であり、さらに勘定系のシステムなどに多く投資がされてきた。しかしながらシステムを導入し、毎秒、毎分、毎時間、毎日生まれてくるデータを最大限活用することに対して、投資があまりされていないのではないかと認識している。当社ではプランニングのデジタル化、いわゆる将来を見通す力を強化するための投資であり、過去何が起こったかを分析し、その分析に基づいて新しい計画、何をすべきかという意思決定を行う。その際に、機械学習や人工知能などの最新技術やシミュレーション、What-If分析などを取り入れ、より精度の高い計画を作成する事が求められる。この状況をプランニングに携わっている方だけではなく、関係各位、経営幹部に壁なく共有していく事が必要であり、正しい意思決定を素早く行うための投資が非常に重要であると考える。<「FP&A機能の強化に向けた実務面の課題について」のアンケート調査結果>
昨年、当社と日本CFO協会にて合同で行った調査の結果にて、FP&A業務における生産性向上・精度向上について妨げている要因を調査したところ、FP&A業務における計画業務の一番の課題は「手作業である」という結果が出ている。また、「DXが遅れている」「計画策定システム・ツールの機能が不十分」という点も挙げられ、これらについても手作業が要因の一つであると考えている。そのほかにも、「計画業務がサイロ化し、縦割りになっている」との指摘もある。このサイロ化し、縦割りなっている点については、計画業務において、部門間連携が必要であるが、残念ながら実現できている企業の割合は1割に満たない現実がある。計画業務は本来繋がっているべきでだと考える。例えば、3年間の中期経営計画を作成した場合、年次の構成要素が出来上がり、年次ごとにトップラインとボトムラインの計画を作る。仮に2年目のトップラインに何か事故が起き、見通しが立たなくなった場合、次の行動、その事故によって、3年目の最終年度に与える影響をシミュレーションする必要があり、2年目コストコントロールや3年目のトップラインをストレッチさせるなど仮説を立て、対応すべきである。このように本来、計画は繋がっているべきであるが、2年目のトップラインを変更させた場合のボトムがどう変化するなど、現状、把握できている企業はほとんどいないと考える。
また、手作業という面でも、計画業務は多くはExcelで行われていることが多い。計画業務における将来の見通しを作る部分は、金融機関が今まで投資をしてきたシステムでは、データを持ち合わせていないことが多く、担当者の過去の経験など属人化する傾向がある。計画業務への意思入れとそれに対して調整が延々と続けられる点や、人が関わり過ぎるプロセスであるがゆえに自動化ができない点が、Excelという便利ツールに行き着いてしまう要因である。しかしながら、Excel作業の問題点として、時間がかる、手間が掛かる、不正確であるという点が挙げられ、精度が低い現状である。
これらを解決するために、Anaplanのソリューションを活用すべきである。データ収集、集計等を完全に自動化することによって、大幅に業務を効率化することが可能であり、手作業の時間を大幅に削減することで生まれた余剰時間を分析に充てることができる。また、分析機能を提供や経営会議で使えるような資料を作成できるマネジメントレポートを提供しており、単に手作業を解消するだけではなくて、より高度で意味のある計画業務を実現することが可能だ。<計画業務における導入メリットと導入事例>
ソリューションを導入メリットはいくつかあるが、一番大きな点は業務効率の改善である。数万時間要していた作業が、数千時間、数百時間に短縮できる例や2週間要していた、予算作成作業が2日で行えるなどが挙げられる。これらのオペレーショナルな効果以外にも、経営上のインパクトもあり、収益の向上やコスト削減に貢献できる効果を生み出すことが可能だ。
実際の金融事例として、みずほ銀行の事例があり、グローバル拠点での経費予算と実績管理でAnaplanを利用頂いている。Anaplan導入前の状況については、手作業いわゆるExcelのバケツリレーで業務を行っていたが、みずほ銀行の海外展開の加速とカンパニー制の導入によって、対応が間に合わない状況が生まれていた。導入前は、5~6人で対応し、残業ありきで何とか2週間で終えていた業務をAnaplan導入後は2~3人で定時内に対応できるほど、業務を効率化しており、8週間要した業務を6週間で対応することが行えるようになった。また、そのほかにも、経費率が大幅に改善されており、Anaplanの運用開始から3年でフィナンシャルグループのグローバル事業における経費率が72%から55%に削減され行と削減を実現している。これらの実現のポイントとしては、業務量を削減と分析する時間の創出であると考えており、データに基づいた意思決定は重要である。次に野村総合研究所(NRI)では、経費予算管理にてAnaplanを利用頂いた。NRIはコンサルティングサービスを提供しており、売り物は人でため、パイプラインの管理が必要であった。実際に担当者が幾らの単価で、どれくらいの期間お客さま先で作業するのかで収支の見通しが生まれるが、このようなカスタマーフロントのコアになる業務については、Anaplan導入前は手作業Excelで行われており、管理してるマネジャー数の負荷も高く、リアルタイム性に欠けていた。これらの改善のためAnaplanを導入頂き、バラバラに管理されていた情報を一元管理することで、ヒトのリソースマネジメントの合理化や、精度・鮮度の高い情報の迅速な把握を実現している。
<改革を支援するBusiness Value and strategy(BVS)プログラム>
計画業務の不明瞭なお客様への支援としてBVSプログラムを用意している。これはお客さまの計画上の課題がどこにあるのか、どういうものか、取り組みの優先順位付けを整理した上で、取り組みのロードマップを一緒に作るというコンサルティングアプローチで行うサービスである。このプログラムは当社が戦略的投資として行っており、無償で行っている。どこから手付けていいか分からない場合はぜひご相談いただければ、当社でサポートすることが可能であり、ロードマップを活用し、関係各位や経営幹部と合意形成を行う事もできる。また、多くのパートナー企業と一緒にビジネスをしているため、皆さまの身近にお付き合いのあるパートナーがいれば、ぜひお声掛け頂き、Anaplanについてご相談いただければと思う。
- Anaplan Japan株式会社